パーフェクト・コピー (Pixiv Fanbox)
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梅雨に入ったばかりの、六月半ばの夜。今日は一日晴天だったものの、どこか蒸し暑さを感じさせる。放課後からつい先ほどまで、野球部のグラウンドで汗を流していた高校生の水野大地(みずの だいち)は、自転車のペダルを踏み込みつつ、額に滲む汗をユニフォームの袖で拭った。
(あ~、今日もしんどかったな……。でも、こうしてオレが野球部で頑張れるのも、あの人が部にいてくれるからだよな。……っと、水飲みすぎたせいか、小便したくなってきちまった)
自宅に着くまでは、まだしばらくかかる。通学路には一応コンビニも点在しているので、そういう場所で用を足すことはできるだろう。しかし、コンビニでトイレを借りるのは、できれば避けたい。借りたお礼に何か買おうにも、高校生の懐事情は日々の買い食いのせいで厳しいのだ。無論、何も買わなくても文句は言われないが、そこは大地の気分の問題である。
「あ、そうだ……」
その時、ふと彼は思い出した。この先を行ったところに、そこそこ大きな公園があったはずだ。きっと、公衆便所もあるに違いない。歩行者信号が青なのを確認すると、彼は横断歩道を渡りきったところでブレーキをかけ、自転車から降りた。
(トイレはどこだ……、っとあったあった)
自転車を押しながら、人っ子一人いない公園内を奥に進むと、比較的綺麗な建物がぼんやりと明かりを放っているのが目に入った。
大地は安堵の表情を浮かべると、スタンドを蹴って自転車を固定し、小走りで公衆便所へ向かった。つい最近改修されたばかりなのか、白いタイルがピカピカと輝いている。光に集まった蛾を手で払いのけて中に入ると、彼は一番手前の小便器の前に立ち、ズボンのチャックを下した。
(ん? こんな色の芳香ボールもあるんだな……。それより、くっ……やば、漏れそう……)
小便器の底には、スーパーボールのような物体が転がっていた。黄色や緑色の芳香ボールには見覚えがあるが、紫色は珍しい。とはいえ尿意で頭がいっぱいだった大地は、パンツの前開きからチンポを取り出すと、溜まっていたモノを一気にぶちまけた。激しい水音を耳にしながら、ホッと息をつく。
最後の一滴まで絞り出し、洗面所で手を洗って、一歩外に出ようとしたそのとき──
彼の背後で、何かの気配がした。
ビクリとして振り返ると、そこには信じられない光景があった。大地そっくりの人間が立っていたのだ。身長、顔立ち、髪型、ユニフォームを着た佇まい。そして全身に付いた汚れまで、すべてが鏡写しのように一致している。ただ違うのは、生気が感じられないくらいに彼が無表情なところだった。
「な、なんだよ……お前、誰だ……?」
自分そっくりに擬態した何か。これがSF映画か漫画の中の出来事なら、邪魔なオレは殺されちまう……。
恐る恐る問いかけると、もう一人の大地が無表情のまま答えた。
「私はルー。君たち地球人が言うところの、地球外生命体というやつだ。君の尿を拝借し、DNAからこの形態を得た」
「……え、ちょ、まって、尿って……? はあ?!」
緊張で身を固くしていた大地は、呆気にとられたあまり、その場に崩れ落ちそうになった。
「君の排泄物には、遺伝情報が豊富に含まれていた。それに加え、視覚情報と言語解析により、君の個体特性の模倣は40%ほど完了している」
「模倣って……そもそも、なんでユニフォームまで着てるんだよ……!」
「変身時、着衣も構成情報として取り込んだ。君の存在を構成する一部と判断したためだ。全裸の方が良かったか?」
相変わらず淡々と話す、異星人。ジョークを言っているようには見えない。しかしその声には、どこか親しみのような──冷たくはない、奇妙な温度があった。
「安心してほしい。私は、君に敵意はない。君の生活環境を観察し、理解し、記録したいだけなのだ。ダメだろうか?」
***
薄暗い公園のベンチに座り、動揺と興奮が入り混じった気持ちを抑えきれない大地。その隣には、彼にそっくりの見た目をした男が、相変わらず無表情で静かに立っている。
「さっき……、オレのこと観察したいって言ったよな?」
「ああ、そうだ。私は上司から、この星の生命体を調査することを命じられた。地球人の筋肉の動作、表情の変化、感情。それらを身近で解析したい」
ルーはそう言うと、自らの体を粘性のある膜状に変化させた。まるで人間の皮膚を模した極薄のスーツのようだ。
「この状態で君の身体に密着すれば、君と完全に連動して行動可能。君が動けば、私はそれに合わせて君の全てを感じ、学ぶことができる」
大地の喉がごくりと鳴る。だが、彼の頭にはそれとは別の想いがあった。スマホを取り出し、写真フォルダを開く。画面には、野球部の監督──黒崎隆宏(くろさき たかひろ)の姿。ユニフォームを着て、腕を組み、鋭い目で遠くを睨んでいる。
「……なあ、ルー。この人に、変身できるか?」
スマホの画面を見せられたルーは、目を細めることもせず画像をじっと見つめた後、無感情にうなずいた。
「見た目だけで良ければ、視覚情報のみで模倣が可能だ」
そう答えるやいなや、ルーの姿がぐにゃりと歪む。瞬く間に身長が伸び、肩幅が広がり、角張った顎に髭が生え、髪も伸びていく。そこに現れたのは──まぎれもなく、【黒崎隆宏】監督だった。
「……っ!」
大地の息が詰まった。目の前に立つのは、ずっと恋焦がれてきたあの人の姿。だが……。
「どうだ、大地?」
「……違う」
ルーは、ユニフォーム姿のままだった。大地がルーに見せた監督の写真では、彼はユニフォームを着ていたからだ。脱がせてみれば分かる。その身体は、大地の体格をベースにして無理やり作り上げた張りぼてのようなもの。がっしりとした監督の肉体とは程遠く、本来ならあるはずの大きな胸の谷間や腹筋の形を強調するような割れ目が無い。
そしてなにより……声が、大地とまったく同じだった。
「……これじゃ、ダメだ……っ。こんなの、黒崎監督じゃない!」
「その反応からして、君をガッカリさせたようだな。さすがの私でも、詳しい情報がないと細部までの再現は無理だ。声を似せたいなら音声情報を、より正確に筋肉・骨格構造を近づけたいなら、対象の生体サンプルが必要。君の尿と同様、その黒崎という人間のDNAを取得できれば、完全再現は可能だ」
「黒崎監督のDNA……?」
「皮膚片、体毛、汗、唾液、尿……精液ならなお良し。対象の一部を所望する」
大地は、ごくりと唾を飲んだ。DNAさえ手に入れれば、ルーは本物の監督を完璧に再現してくれる。しかも、それは自分だけの監督になるのだ。
「……分かった。俺、やる。絶対、黒崎監督のDNA手に入れるから。それに、お前に協力する!」
*
自宅へと帰り着いた大地。風呂から上がった彼は、下着を身に着けることもなく、生まれたままの姿で部屋に佇んでいた。初夏の夜。火照った股間に当たる、扇風機の風が心地いい。鏡に映る自分の体をぼんやりと見つめる。
(思ってたより、俺って……細いな)
ごつごつした肩、膨らんだ胸筋、割れた腹筋。同年代に比べれば、筋肉質と言って差し支えない体型だ。しかし黒崎監督の、あの圧倒的な厚みには到底及ばない。それに、大地の身長は172センチ、体重は68キロ。野球部員としては小柄な方だ。両親も背が高い方ではないので、これ以上の成長は望めないだろう。
大地は萎えたチンポを弄りながら、小さく息を吐いた。
「──大地」
背後から聞こえた声に、大地の肩がビクンと震えた。無感情だが、不思議と温かい声。振り返ると、ルーがそこにいた。彼だか彼女だか分からない地球外生命体は、ぬらぬらと光沢のある半透明の布のように形を整えている。
「今夜、【合体】の許可を」
「……いま?」
「入浴後、全身の筋肉がほぐれている今こそ、学習に適している」
大地は一瞬、戸惑った顔を浮かべたが、すぐに頷いた。手に持っていたタオルをぎゅっと握りしめると、ルーに向き直った。
「わかった。……来いよ、ルー」
ルーは返事もせず、床に広がるように姿を崩すと、そのまま粘膜のように大地の足元から這い寄ってくる。つま先に触れた瞬間、ひやりとした感触に大地は少し身をすくめた。
「……っ」
音も立てず、ルーが大地の脚を這い上がっていく。ふくらはぎ、太もも、腰、腹筋、胸板──まるで冷たいゼリーを全身に塗り広げられるような感覚。皮膚の上に、もう一枚、新しい皮膚が重なるようにフィットしていく。
「密着率、57%……82%……完了間近」
喉元に到達すると、ルーは最後に大地の顔へと広がっていった。鼻先、唇、まぶた……全てを覆い、すっぽりと大地を包む。その瞬間、大地の視界が一瞬だけ暗転し、すぐにクリアになった。
(……これが、ルーとひとつになる感覚?)
大地の股間が熱く疼き始める。ルーの冷たい反応とは裏腹に、大地の下半身には血液が集まり、チンポがゆっくりと鎌首をもたげていく。大地は手を伸ばし、指先で自分のイチモツを撫でまわした。
「表情筋の反応、繊細。それに下腹部が熱い。とても興味深い」
無感情なルーの声が、頭に響く。だが、彼の言葉にはどこか好意が感じられる。
「……ルー、今どんな感じなんだ?」
「君の呼吸が少し速い。心拍数も上昇中。頬の筋肉が上に引き寄せられている。興奮しているのか?」
「うっ……うるせぇよ……」
大地は顔を背けるが、ルーはすでにその表情すら学習しているようだ。
「大地。私は、君に興味がある。君のことをもっと学びたい。これが『好き』という感情なのかもしれない」
ルーの言葉に、大地は目を見開いた。まさか、異星人にそんなことを言われるとは思ってもみなかったからだ。しかし、その言葉は決して嫌なものではなかった。
「……バ~カ。宇宙人が何言ってんだよ……」
口ではそう言いながらも、大地はルーの存在を受け入れ始めていた。
*
夕暮れが迫る校舎に、部活帰りの足音がまばらに響く。野球部の部室のドアを閉める音が、静寂に吸い込まれた。
「……で、話ってのはなんだ、大地?」
鉄製のパイプ椅子にどっかりと腰を下ろした黒崎が、太い腕を組んで大地を見つめた。汗で濡れたユニフォーム姿のまま座るその姿に、大地はうっとりとなって、一瞬言葉を失う。
「ちょっと、監督に聞いてほしいことがありまして……」
「だーかーら、その聞いてほしいことってのは、なんなんだって言ってるんだ!」
「あはは、はい……え~っと……」
苛立ったように、トントンと人差し指で机を叩く黒崎。こめかみには血管が浮き出ている。演技力など皆無の大地の心臓はバクバクと跳ね、吐く寸前だ。そのときだった。
『──侵入を開始する』
「あんっ? いまのは誰のこ……、ん゛ィ~~~?!」
黒崎の背後。ロッカーの陰からぬるりと現れたルーは液体状になると、すばやく黒崎の耳へと滑り込み、彼の脳を一瞬で支配してしまった。黒崎の身体はビクリと震えたあと、ガクンと椅子にもたれかかるように力を抜いた。
「……黒崎隆弘の肉体を制圧。脳波は安定。抵抗は──ない」
「……やったのか、ルー?」
黒崎の口から漏れた抑揚のない低い声に、大地は息を飲む。目の前には憧れの存在──黒崎の、大きくて重厚な肉体が、まるで人形のように無防備に座っている。
「黒崎隆宏の体液から、DNA取得完了。声質、緊張時の汗の分泌量、皮膚表面の体毛の情報も完全に取得した」
ルーの声が、小さく部室内に響く。だが続けて発した彼の言葉に、大地は思わず眉をひそめた。
「これより、黒崎のユニフォームおよび下着類の脱衣を、大地に依頼する」
「……え?」
「私は、君にしたように黒崎とも【合体】し、筋肉や骨格の動き、口調や表情の癖まで学習しようと思う。完璧な模倣のために」
「ま、待てよ。そこまでしなくても……」
ルーは、口ごもる大地の目の前で、液状の身体を変化させながら、黒崎の声で囁いた。
「大地の願いは、私が【完璧な黒崎隆宏】になること。私はそれに応えたい。だからこそ、彼のすべてを知る必要がある」
黒崎の胸が、ゆっくりと上下している。彼の意識がない今こそが、チャンスなのかもしれない。大地の喉が鳴る。汗ばんだ指先が、黒崎のユニフォームの前立てへと伸びた。
「……本当に、それでお前は、完璧な黒崎監督になれるんだな?」
「君が協力してくれれば、私は彼の隅から隅までを模倣可能だ」
「……わかったよ」
期待と不安、そして抗えない欲望が大地の内に渦巻き、彼の手は静かに黒崎のユニフォームのボタンに触れた。ひとつ、またひとつとボタンを外す。胸板がちらりと覗く。黒崎が息を吸うたびに、厚い胸がわずかに持ち上がり、静かに沈む。練習後の汗が乾いて、インナーの黒いアンダーシャツには淡く塩の跡が残っている。
大地は呼吸を整えると、慎重に黒崎のアンダーシャツの裾をたくし上げた。徐々に露わになる、大地の憧れだった肉体。腹筋はギッチリと六つに割れているし、胸筋も厚さと弾力を兼ね備えている。そのままアンダーシャツを脱がすために、黒崎を万歳させると、腋にはジャングルのような茂みが生い茂っていた。
途端に辺りに漂う、むせかえるような男の体臭。容赦なく鼻腔を突く、その匂いに屈しそうになりながらも、大地は黒崎のズボンに手を掛けた。どっしりとした太股に、濃い体毛。スパッツは穿いておらず、白のジョックストラップのゴムがむっちりとした肌に食い込んでいる。
──ゴクリ!
もう何度目だろうか。大地の喉が鳴った。イチモツの形を象るように、もっこりと大きく膨らんだ黒崎の下穿きが、あまりにもエロすぎる。
「どうした、大地?」
「……いや、なんでもない」
大地は頭を振ると、意を決して下着のゴムに手を掛けた。ゆっくりと引き下ろすと、黒々とした茂みから淫水焼けした黒い陰茎がぶるんと飛び出し、大地の鼻先を掠めた。
「ひゃっ……」
(く、黒崎監督のチンポだ……っ!)
思わず目をしばたたかせると、大地は恐る恐るその陰茎に手を伸ばした 。だがその瞬間、大きな膜となったルーが、黒崎の全身を覆っていく。まるで横から獲物を奪われた気がして、ムッとした大地だったが、黒崎の肉体がヌメヌメとしたスライムによって取り込まれていく様は、彼に新しい性癖を芽生えさせつつあった。好意を抱いた人間が、肉体を乗っ取られていく──。
大地はそんな倒錯的な光景を目に焼き付けつつ、シコシコとチンポを扱き始めた。無防備な姿の黒崎の全身を、紫色のスライムが覆い、穴という穴から彼の体内へと侵入していく様は、SF映画でよく見る捕食シーンのようだ。
「う゛っ……!」
黒崎の体が、ぶるっと震える。ルーが彼の体内を循環し、その細胞ひとつひとつにまで侵入しているのだ。紫色のルーの身体は黒崎の皮膚と同化し、やがて自然な肌色へと変わってしまった。もはや意識はないだろうが、黒崎はルーとの同化のあまりの心地よさから、アヘ顔を浮かべて勃起したチンポをぶるんぶるんと震わせている。
「あ゛っ……、アヘッ♥ ンアッ、イイ゛っ……♥♥」
「っ、黒崎監督……ッ」
大地の息が荒くなっていく。憧れた男の痴態に、興奮が抑えきれない。黒崎監督が、地球外生命体によって肉体を乗っ取られてしまう。いつも真剣な表情で野球部の練習を指導し、グラウンドで怒鳴っていた男が。自分の目の前で、無様にも快楽に喘ぎながら──。
──ビュルル! ビュッ、ビュルルルルル~~~!!!
「ハアッ……、クッ……監督!!」
ルーと完全に融合した快感から黒崎が射精したのを見て、大地もまた床に飛び散った黒崎の精液に重なるように、ザーメンを撒き散らした。
*
「……ん?」
重たいまぶたをこじ開けるようにして、黒崎は目を覚ました。
部室の外はすっかり夜の闇に包まれ、グラウンドは静まり返っている。窓の外の照明ももう落ちていて、校舎の輪郭だけが鈍く光っている。
「……あれ、俺、いつの間にか寝落ちしてたみたいだな」
両腕を上げて背筋を伸ばすと、鈍い疲労のような感覚が体の芯から伝わってきた。意識を失う前とは何かが違う気がする。だが、それが何なのかはわからない。
「ちょっと休むつもりが、ガチ寝しちまったってとこか……。んっ? 大地、お前まだ残ってたのか? ……って、ちょっと待て?! お前も俺も、チンポ丸出しじゃねーか!! なんだこれ、大地ッ、お前の仕業か?!」
「えっ、えっ?! ルーじゃなくて、黒崎監督……ですか?」
互いに慌てて股間を隠す、黒崎と大地。
「なんだよ、ルーって?! カレーの話なんてしてねえぞ……、今は【黒崎隆宏】と私が、共同でこの肉体を操作中だ。通常時の黒崎の思考や行動を学ぶため、わざと彼を半覚醒状態にしている。このあと何をしても、彼には記憶は残らないから安心してくれ、大地」
慌てふためいた態度から急転直下で、スンッと無表情になった黒崎に、大地は笑いながら黒崎の肩をバシバシと叩く。
「な~んだ! それなら早くいってくれよ、ルー。びっくりしたぜ!」
「……この野郎、だからルーってのはなんだっつーんだ?! あん? 俺の身体を乗っ取った、地球外生命体の名前? 俺のすべてを学習して、俺そっくりになりたいだと?! バカ言ってんな、ふざけやがって! ハァ? そんでもって、大地が俺のことを好きだって?!」
「……すみません監督、キモいっスよね……?」
「な、何言ってやがる、大地はキモくなんかねえ! 【私】も、お前が好きだ!!」
「えっ?」
「んっ?」
今、自分は何を言った? 生徒に対して愛の告白をしてしまったような気がする。何かが変だ。だが、目の前にいる大地が、可愛く見えて仕方がない。大地のことを見ていると、心臓の鼓動が跳ね上がってしまう。俺には妻もいて子供もいるというのに──。
「監督……俺……」
大地が切なそうに眉を寄せて、熱い視線を送ってくる。その表情は、まるで自分を誘っているかのようで、魅力的だった。ゴクリと黒崎の喉が鳴る。
気がつけば、身体が勝手に動いていた。黒崎は大地の背中に腕を回すと、その体を包み込むように抱きしめた。ユニフォームに染み込んだ大地の汗と土ぼこりの匂いが、ツンと鼻の奥をくすぐる。下半身に血液が集中し、じくじくと痛いくらいにチンポが膨張していくのがわかった。野球部の監督として散々嗅いできた、男の体臭。嫌悪の対象だったはずのそれが、今は興奮材料になっている。
(なんだこれ……? ホモじゃねえってのに、これも俺の身体を乗っ取ってやがるルーとかいうやつが、俺の脳みその中を弄ってるせいか?)
この感情は一体なんなのか。男に対する性的衝動など初めての経験だ。だが、嫌悪感は一切なかった。
「大地……!」
黒崎の理性の糸は断ち切られた。腕の中にいる大地が愛しくて堪らないのだ。本能的に大地の肩を掴むと、その顔にぐっと顔を近づけていた。
「監督っ……んんっ……♥♥」
大地の唇はしっとりとして柔らかく、湿り気を帯びていた。舌を入れると彼は驚いたように身を固くしたが、それでも押し返そうとはしなかった。むしろ貪欲に舌を絡めてきて、熱烈な接吻を返してきた。頭がクラクラするほど甘美なその感覚に痺れつつも、黒崎のチンポはますます硬くなるばかり。この状況について、頭の中で自問するが答えが出るはずもない。だがしかし、この熱情を抑えることはもうできなかったし、止めるつもりもなかった。
ただ目の前にいる少年を抱きたい──、その欲望だけが黒崎の頭の中を支配していく。ごつごつとした指が、教え子のユニフォームの前立てへと伸びていく。黒崎は大地のユニフォームのボタンを外しながら、彼と唇を重ね合わせていた。
「ん、ン……っ!」
女のそれと変わらない、唇の感触。舌を差し入れると、おずおずとした動きで濡れた舌が絡み付いてくる。その初々しい反応に黒崎は興奮し、さらに激しく口内を貪る。ダメなのに。教え子とこんな関係を持ってはいけないのに、止めることができない。
黒崎は大地の着ている服をすべて脱がせると、その肉体に魅入られてしまった。日に焼けた褐色の肌、筋肉質な若さ溢れる肉体は、あまりにも官能的で──。
「ハァ……監督っ♥」
雌の顔付きになった大地をリードしながら、黒崎は大地のアナルをほぐす。妻とのセックスの時のように優しく愛撫し、すっかり柔らかくなったそこへ勃起したチンポを当てがうと、彼は大地の腰を掴み一気に貫いた。
「あぁ、クソッ! 俺はなんてことを……、やめろぉっ、この変態異星人がぁっ! 俺のっ、俺の脳みそッ、弄るんじゃねぇぇっ!! うひっ♥ 男……相手に……、生徒相手にこんな、こんなぁ……♥♥」
奥まで入っただけで、黒崎は射精しそうになった。なんという幸福感。今まで抱いた女のモノとは、比べ物にならない穴の感触。まるで、自分のために作られたかのような肉壺。それほどまでに、大地のケツの穴は最高だった。実際には、黒崎の全身を覆っているルーが、大地の肛門や腸の形に合わせ、ぴったりと合う形状に黒崎のチンポを改造しているのだが、そんなことを彼は知る由もない。チンポに吸い付く襞が淫らにうねって締め付けてくるたびに、黒崎の口から甘い嬌声が上がる。
「あ゛っ♥ んあっ……大地っ、アア゛ッ!」
「監督ッ!! もっと~っ♥」
パンパンと肉同士がぶつかり合う音が部室に響く。男相手にガニ股で腰を振るなんて、変態的行為のはずなのに止められない。もうそんなこともどうでもいいくらい気持ちよすぎて、頭がおかしくなりそうだ。
「大地、【俺】はお前が好きだ!!」
野太い声で叫ぶと、黒崎は大地の奥深くへとチンポを押し込んだ。もはや彼の肉体は彼自身の意思ではなく、ルーが制御しつつあった。しかし、【黒崎隆宏】のセックスを学んだ彼は、腰を動かすスピードや喘ぎ声のボリューム、溢れ出る我慢汁の量まで完全に再現して見せる。毎晩のように黒崎と肉体を交えている彼の妻ですら、気付かないほどに──。
そんな彼に応じるように、大地の腸壁が激しく脈動し、ガチガチに硬くなった黒崎の男根をギュウッと締め上げた。
「お゛ほっ♥♥ イクッ! 教え子のケツに種付けするぅ♥ ンオッ、オ゛~~♥♥」
教え子を犯すという背徳感──、これまでに覚えたことのない快感に抗えぬまま、黒崎は天を仰いでいた。睾丸がぐりんぐりんと暴れまわり、煮えたぎるように熱い精子が尿道を駆け抜ける。大地の体をしっかり抱きしめたまま、黒崎はすべてを吐き出すかのように長い射精を繰り返した。
「ハアッ……♥」
黒崎はゆっくりと体を起こすと、ずるりと大地の中から自分のモノを引き抜いた。開きっぱなしになった穴からはドロリと濃厚なザーメンが垂れてくる。アナルの奥に見えるピンク色の内壁が、いやらしくヒクついている。その穴を見つめながらもまだ足りていないと言わんばかりに勃起を続けるチンポを扱くと、溢れ出た精液や腸液でグチョグチョになっているそこに再び挿入する。
「大地、好きだ。今度は、【俺】ひとりでお前を独占したい……」
感情のこもった甘い声。【黒崎隆宏】の肉体を完全に乗っ取ったルーが、大地へと愛を囁いていた。黒崎の脳の奥深くまで入り込んで彼のすべてを学習した今、大地に愛してもらうためにルーは黒崎に成り切って唇を重ねた。舌の絡め方も、唾液の分泌量も、少し乱れた鼻息の感じも、すべて黒崎を完全に模倣している。
「んあぁっ♥ あふっ……ンっ、黒崎監督ぅ♥」
大地の口から甘い声が上がる。大地が、自分のことを黒崎だと認識してくれている。もはや我慢ならないといった様子でルーは腰を揺すりながら、何度もキスを繰り返した。舌が絡み合うたびにゾクゾクとした快感が全身を駆け巡る。
(ああ……気持ちいい♥ これが愛する者と行うセックスか……♥)
性交時の陰茎の膨張率も、射精時の精液の放出量や濃さも学習した。体温も、体臭も──。なのに、今のこの感情だけは測定不能だ。胸が締め付けられるような、それでいて幸福感に包まれているかのような不思議な気持ちだ。だが確かに今自分が、この男を愛しているのだということは、ルーにも本能的に理解できた。
「……あっ、監督ッ♥ オレ、イッちゃう♥ 一緒にッ……ンッ♥♥」
「大地、俺も出すぞ! 一緒にイこうなッ♥♥♥」
【俺】は誰だ? 地球人の黒崎隆宏? それとも、地球外生命体のルー? この星の生命体の調査など、もうどうでもいい。今はただ、この身体を使って、目の前の少年を愛したい。演技をすることも忘れたルーは、激しく腰を振って粘膜と粘膜を擦り合わせ、精巣にあるありったけの精子をぶちまけた。
***
「今日一日の【俺】……、どうだった大地?」
ルーが黒崎の身体を乗っ取ったのが、ほんの三日前。彼はたったの三日の内に、黒崎のすべてを学習してしまった。口調だけでなく、口癖や仕草まで同じ。黒崎が担当する数学の授業内容や、野球部の活動内容までも完璧に把握したルーに対して、違和感を覚える人間は誰一人としていなかった。ちなみに本物の【黒崎隆宏】は、ルーの能力によって自宅で爆睡中である。
「完璧ですよ、黒崎監督! さすがはオレの恋人っす♥」
「大地……♥」
大地の股座をまさぐりながら、【黒崎】が熱い吐息を漏らす。ズボンの下で硬くなった高校生の陰部。性的な興奮を感じて羞恥に頬を染める大地の顔を見てほくそ笑むと、彼はさらに言葉を続けた。
「お前は【俺】が好きなんだろ? なら、お前も【俺】になってみろ!」
一瞬のうちに大地の衣服をすべて剥ぎ取り、人間の姿からスライム状へと変わったルーが、大地の身体を覆い尽くす。全身が巨大な膜で包まれる、奇妙な感触。大地の筋肉や骨が、ルーの手によって別のモノへと再構築されていく。
「あ゛っ……がッ! ああぁあっ♥♥」
大地は絶叫を上げたが、それは苦痛によるものではなかった。朝、目覚めて背伸びをした時のような爽快感。瞬く間に身長が10センチ以上伸び、肩や胸、尻の周りはごつい筋肉がついたようにデカくなる。足のサイズは29センチになり、腕も太股も丸太のようにボリュームを増して、大地の肉体は別人のものへと作り替えられつつあった。
ルーによって覆われ、紫色になっていた肌は爪先から徐々に自然な肌色へと変わり、喉仏も大きくなっていく。オルガスムスにも似た心地よさから上げたよがり声は低くなり、声質そのものが変わってしまう。骨格や筋肉が、軋んで痛いくらいに成長し続ける彼の全身の皮膚からは、ぶわっとジャングルのような体毛が勢いよく生えてきた。残すは、顔だけだ。
「んぶっ! んん゛~~♥」
仕上げとばかりに、紫色の粘膜が大地の顔面をドプリと包み込んだ。鼻や耳の穴、目の隙間や口の中にまでも粘膜が入り込んで、内部から大地の顔の形そのものを作り変えていく。顎はがっしりとした男らしい形になり、髭まで生え始める。顔面の粘膜が剥がれ落ちる頃には、【黒崎隆宏】と瓜二つの顔が出来上がっていた。
(どうだ、大地? 【黒崎隆宏】になった気分は?)
内面から聞こえてくるルーの声に、大地は自らの肉体へと視線を巡らせた。デカいガタイ、厳つい顔、太々しいチンポ。おまけに、筋骨隆々な肉体の上には中年特有の脂肪が張り付き、日に焼けた肌には加齢によるシワやシミまでも再現されている。そこには、あの憧れだった野球部監督の姿があった。
「す……すげえ、オレ……黒崎監督になってる……」
鏡を見ながら大地がうっとりとしていると、彼の身体から紫色の小さな塊がピョンと飛び出した。地面に落ちたそれは、ムクムクとその形態を変え、次の刹那には【水野大地】の姿へと変わっていた。
「どうっすか、黒崎監督? こうして【オレ】が目の前にいると、ますます、自分が【黒崎隆宏】になったんだっていう実感が湧いてくるっしょ?」
大地の顔をしたルーが、ニヤニヤと笑う。しかしすぐにその表情が、初々しい高校生らしい恥じらいのものへと変わる。彼はマットの上へと腰を下ろすと、大地に向かって足を開いた。
「黒崎監督……。オレ、あの日から、他人に成り切ってのセックスにハマっちまったんす……。今日はこの身体で、【水野大地】として監督に犯して欲しいっす♥ 監督のそのデカマラ、オレのケツマンコにぶち込んでください♥」
これまで目にしたことのなかった自分のアナル。豆だらけの指で広げられたサーモンピンクのその穴が、【黒崎隆宏】のチンポを受け入れようとヒクついている。大地はゴクリと唾を飲み込むと、そこに自らの剛直をあてがった。他人に成り切ってのセックス。そんなの興奮するに決まってるじゃないか。
「いくぞ、大地! お前の中に、俺のザーメン、たっぷり種付けしてやるからな! んお゛っ♥ ノンケの俺のチンポが……、妻も子供もいる俺のチンポが、教え子のケツマンコの中に、はあっ♥ 入ってく~~……っ♥♥」
(俺は、黒崎……。野球部監督の黒崎隆宏だ♥♥♥)
勃起した肉棒が、穴の中へと呑み込まれていく。黒崎の振りをして、かつての自分の肛門を犯すという背徳的な行為に、大地は【黒崎隆宏】としてアへ顔を浮かべるのだった。
(了)
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