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「ハックション!! うひ~~、寒っ!」


「ちょっと、あなた……。大丈夫?」


 季節は年の瀬。大晦日の昼下がり。雄神村(おがみむら)の空はどんよりとした鉛色の雲に覆われ、時折チラホラと粉雪が舞っている。玄関の隙間から入ってきた風に、ぶるりと身を震わせた真人は、ふんどし一丁の姿にダウンコートを羽織りながら、妻の和葉に軽く抱きついた。


「大丈夫だって。それじゃあ、行ってくる! こんな、ほぼ素っ裸の状態で祭りに参加するなんて、初めてで緊張してるけど……。まあ、この村のしきたりだしな」


 苦笑いを浮かべた夫の胸に、妻の和葉(かずは)は少し心配そうな顔で頬を寄せた。


 25歳の姫川真人(ひめかわ まさと)は、身長186センチ、体重115キロの恵まれた体躯の持ち主だ。中学から大学までアメリカンフットボールに打ち込み、肩幅は広く、逞しい胸板に加え、腹筋は岩のように硬い。短く刈った髪に、精悍で端正な顔立ち。屈強なスポーツマンがタイプの女性なら、誰でも振り返るような容姿だった。


 そんな真人は、大学時代に出会った姫川和葉に惚れ込み、結婚を機に彼女の故郷である、この雄神村へ入り婿として移り住んだ。村役場で働くようになって、まだ半年。今日が初めての【雄立祭(おだちまつり)】参加だ。雄神村に住む60歳未満の成人男性は全員、【雄立祭】に参加することが義務付けられている。


 隣に立つ義父の姫川力丸(りきまる)が、厳つい相好を崩してガハハと豪快に笑った。


「心配するな、和葉ァ。【雄立祭】は、男の祭! 真人も体育会畑で鍛え抜いてきた、立派な日本男児なんだから、きっとすぐに馴染む! お前の旦那を信じろ!!」


 45歳の力丸の身長は178センチ、体重はちょうど100キロ。日に焼けた肌に、太い眉と三白眼。針金のようにツンツンと立った硬そうな髪が、昭和の映画俳優を想起させる彫りの深い顔に映えている。


 ちなみに力丸は村役場の課長で、真人の上司でもある。筋肉質な彼の体は長年のトレーニングの賜物で、胸や腕、脚は依然として逞しいが、腹には少し脂肪が乗り、全体的にがっちりむっちりとしている。

 力丸は和葉の父親でありながら、真人のことも本当の息子のように可愛がってくれていた。


 ダウンコートの下に、伝統のふんどし一枚だけを締めた姿。鉢巻と地下足袋も身に着けているが、体を隠すのには、ほぼ意味を成していない。真人は最初こそ恥ずかしさに顔を赤らめたが、力丸に『男なら堂々としろ!』と一喝され、しぶしぶ受け入れることにした。コートを脱げば、ほぼ裸。ニュースなんかではよく見る光景だが、真冬の祭りとは思えない無茶な慣わしだと、真人は心の中で小さくため息を吐いた。


 和葉が手を振る中、二人は姫川家を出て神社へと向かう。道中、他の男衆も同じ格好でぞろぞろと集まってくると、真人が抱いていた気恥ずかしさも和らいでいくのだった。



***


 雄神村は田舎ということもあって肉体労働者が多く、建設業や林業、農業に従事する男たちが大半だ。成人した男性なら誰もが体格が良く、ジム通いの者も多い。村にはなぜか、田舎には不釣り合いな設備の充実した大きなトレーニングジムがあり、村の男たちはそこで鍛え上げた体を誇らしげに見せびらかす風習があった。


 真人たちが神社に着くと、すでに百数十人の男衆が集まっていた。夕方近くになると、全員が上着を脱ぎ捨て、ふんどし一丁の姿になった。真冬の空気の中、男たちの吐く息が白く立ち上る。


 真人は思わず息を飲んだ。周囲の男たちは、身長の高さや贅肉の量に多少の差があるものの、誰もかれもが豊富な筋肉の持ち主だった。18歳で成人したばかりの若者から、50代のベテランまで。鍛え上げられた偉丈夫ばかり。太い首筋、盛り上がった僧帽筋、厚い胸板、割れた腹筋、逞しい太腿。そして、ふんどしの布地を押し上げる股間の膨らみ──どれもこれも、強者の匂いを漂わせている。男相手だというのに、視線を奪われていた真人の背中を、力丸がバシッと叩いた。


「おら真人、ボ〜ッとするな! 神輿を担ぐぞっ!!」


 拝殿前には、巨大な狸を模した神像が鎮座した神輿が一基。狸の股間には異様に大きな玉袋が付き、その狸の神輿の両側には、巨大な男根を模した像の乗った神輿が一基ずつ置かれていた。男たちは自然と三手に分かれ、それぞれの神輿を担ぎ上げた。真人は力丸と同じく、狸の神輿の棒に手をかけた。担ぎ手は全員ふんどし姿。肌と肌が触れ合い、男たちの体温が伝わってくる。担ぐ前から、すでにムワッとするような熱気が辺り一面に立ち込めていた。


「「「せーーーのぉっ!!」」」


 大地を揺さぶるような掛け声とともに、重量感たっぷりの神輿が、男たちの筋力によって持ち上げられた。めちゃくちゃ重い。だが、祭に参加した野郎どもの力は凄まじい。真人の視界には、力丸の広い背中が入る。初めて目にする義父の、ふんどしの紐が食い込んだ尻に無意識に目が行ってしまった。

 村内を練り歩くルートは長く、坂道も多い。真冬の夜風が肌を刺すが、男たちの体からは湯気が立つほど熱気が発せられていた。気迫漲る野太い声が、村中に響き渡る。


──ソイヤッ!! セイヤッ!!


 足を踏み出すたび、マッチョマンたちの太腿の筋肉が波打ち、尻の筋肉が収縮する。汗が滴り落ち、ふんどしの布地を湿らせる。真人は最初こそ戸惑ったが、体育会系の血が騒ぎ、徐々にこの異様な熱気に飲み込まれていった。


「どうだ真人ぉ、気持ちいいだろ、この熱気? 男だから参加できる、野郎だけの祭りだぞォ!!」


 汗で濡れた力丸の背中は、真人の実父のものよりも広く逞しく、ケツも惚れ惚れするくらいにデカい。股間の膨らみも振動で揺れ、布地を押し上げていた。なぜか自分の股間も熱くなってくるのを感じ、真人は慌てて視線を逸らした。きっとこれは、祭りのせいで気分が高揚しているせいだ。異性愛者の自分が、男に興奮するなどあり得ないのだから──。




 夕方から23時まで、村の男たちは休みなく村内を練り歩いた。屋台の明かりが遠くに見え、子供や女性、老人たちの楽し気な声がそちらから聞こえてくる。担ぎ手たちは、成人した屈強な男だけ。汗と熱気と雄の匂いが混じり合い、拝殿前の広場に戻る頃には、全員が汗だくで息を荒げていた。


 23時──子の刻に入ると、男たちは神輿を下ろし、一カ所に集まった。新年まで、あと一時間。百数十人のふんどし姿の男たちが、ぎゅうぎゅうとなって肩を寄せ合い、熱気で湯気が立ち上る様は圧巻だ。

 力丸の隣に立ち、祭りの余韻に浸りながら真人が息を整えていると、一年の終わりを告げる除夜の鐘の音が、広場内に鳴り響いた。


──ごぉぉぉぉん!


 次の刹那、狸の神像が突然、妖しい光を放ち始めた。光は徐々に強くなり、神像の股間の巨大な玉袋が輝きを増す。周囲の男衆が、急に色めき立ったようにざわめき始めた。


「皆の衆、来たぞぉ! 【雄みくじ】の始まりじゃぁッ!!」


 誰かが、がなり声で叫んだ。呼応するように彼以外の、特に年長の男衆は待ってましたと言わんばかりに、恍惚としながら歓声を上げている。真人は不安になって辺りを見回した。


「うははっ、【雄みくじ】タイムだ、真人! お前も次に目が覚めた時は、まったくの別人になっとる。気をしっかり持てよ! もうちょいしたら、脳みそにビビッと刺激が来るからなぁっ!!」


「お、 お義父さん、別人になるって何言って……ウア゛ァァッ?!!」


 真人が力丸からの答えを聞き終わらぬうちに、百数十人の男たちの魂が同時に身体からベリッと引き剥がされ、宙に浮かぶ光の粒となって神像の巨大な玉袋のほうへと向かっていった。真人は、自分の魂が二つの睾丸の内の一方に吸い込まれていくのを感じた。熱く、粘っこい、強烈な雄の匂いがする闇の中へ──。




 拝殿前の広場では、先ほどまで雄の熱気に満ち溢れていた男衆が、こと切れたように冷たい地面に倒れ伏していた。百数十人のふんどし姿の男たちが、汗と土埃にまみれた体を寄せ合って眠る様は、まるで死者が重なり合ってできた山のようだ。

 シンと静まり返った広場に、篝火の火の粉が爆ぜるパチパチという音だけが響く。遠く、参道の屋台から聞こえてくる女性売り子たちの掛け声や、買い物客たちの笑い声が、かすかに風に乗って届いていた。


 その明るい賑わいと、倒れた男たちの無音の姿との不気味なギャップが、より一層異様さを醸し出している。拝殿前に置かれた狸の神像は、いまだ妖しく輝いていた。周囲の男たちの魂をすべて吸い込んだ巨大な玉袋は、今や一メートル下の地面に付くほどにパンパンに膨張している。


 何度目か分からない除夜の鐘が鳴った瞬間、重く垂れ下がったその玉袋が、ぶるりと震えた。すると、神像の男根──皮で亀頭が完全に覆われたそれが、ゆっくりと勃起し始めた。太く逞しくなって、脈打つように膨張する。やがて、尿道口から光る魂の粒が、精液のように勢いよく噴き出された。百数十の魂が、輝く飛沫となって解き放たれ、広場内の宙を舞う。

 だが、それらは元の肉体には戻らなかった。神のいたずらのようにランダムに──、それぞれ別の器へと吸い込まれていった。




 しばらくして、死んだように眠っていた男たちが、ひとりまた一人と目を覚まし始めた。息を吐く音、呻く声が伝播していく。真人も、意識を取り戻した。体を起こそうとするが、全身が石のように重い。神輿を担いだことによる疲労感などではないのが明らかだと思えるほどの、次元を超えた異様な気怠さ。部活で散々しごかれた翌朝、筋肉痛に襲われた体を無理やり動かした時よりも遥かに酷い。違和感に満ちた重みだ。夢うつつな状態の真人の耳に、周囲の男たちの感情の昂った声が、次第に聞こえてきた。


「よっしゃい! 今回の【雄みくじ】は大当たりじゃぁ!! 久方ぶりの若者ボディ♥♥ 肌にも張りがあって……、チンポもデケェわ!!」


 見れば、20歳くらいのがっしりとした体躯の若者が、自身の分厚い胸板をモミモミと揉みしだきながら立っていた。その目は狂人のように爛々と輝き、股間のふんどしからは、興奮のあまり勃起したチンポがはみ出している。


「やっぱ、若い身体が一番じゃのぉ! 今年はたっぷりと楽しめそうじゃわい!! チンポもガッチガチに勃起しよるわ!」


 今度は、別の男性から発せられた声。30代前半くらいの建設作業員っぽい、日に焼けたガチムチの男が引き締まった腹筋を片手で撫でまわし、もう一方の手で反り返った竿を掴んで擦っている。


「な、なんだよこりゃあ?! オレの身体、オッサンになっちまってる! 腹が出てて、重てぇ……。おまけに胸毛が生えまくってて、気持ち悪ぃッ!!」


 弾んだ声ばかりかと思いきや、絶望したかのようなしわがれた声も聞こえてきた。40代くらいの肥満体型の中年男性が自分の分厚い腹肉を掴み上げ、悲壮感に満ちた表情で泣き言を言っている。不健康な脂ぎった肌が、松明の火に照らされてテカテカと輝いている。


 周囲の男衆が喜んだり怒ったりする一方で、ようやく体をそれなりに動かせるようになった真人は、立ち上がって今の自分の姿を見下ろした。


 目に映るのは、いつも見ていたのとは違う掌。指は少し短くなり、その代わりごつごつとして太い。胸板は筋肉質だが、脂肪が付いていて少し垂れ気味。濃い胸毛が汗で濡れ、乳首周りを囲んでいる。腹筋はくっきりと割れていたはずなのに、今はビール腹のように柔らかく膨らみ、割れ目がうっすらとしか見えない。尻もなんだかデカくなっている感じがする。脚は短くなった反面、太腿が太くなり、股間のふんどしを押し上げる膨らみは、重く熱い。


「なんだよ、これ……? オレの身体に何が起きてるんだっ?!」


 驚きのあまり、真人は小さく呻くしかなかった。しかもその声は、彼自身のものではない。低く、渋い響き──どこか聞き覚えのある声だった。




「まさか、今年の【雄みくじ】の相手がお前になるとは……すまんなぁ、真人。お前の身体、俺がもらっちまった」


 掛けられた声の方へと、真人は顔を向けた。そこにいたのは、先ほどまでの自分──【姫川真人】そっくりの姿をした男。身長186センチの恵まれた体躯、厚い胸板、岩のような腹筋、短髪の精悍な顔立ち。だが、その表情は酸いも甘いも知り尽くした大人のそれで、口元にはいつもの力丸のような豪快な笑みが浮かんでいた。


「【オレ】……じゃなくて、もしかしてお義父さん……なんですか?!」


「おうよ、俺は姫川力丸だ。さっき狸様の玉袋の中に魂を吸い込まれて、運命のいたずらか、娘婿のお前の魂と入れ替わったらしい」


「そんなっ!」


 大きな掌が、真人の──いや、【力丸】のがっちりとした肩にそっと置かれる。


「戸惑うのも分かる。俺も初めて体験した時は、お前みたいに困惑したもんだ。一年に一回行われるこの【雄立祭】では、あそこにいる狸様の神像の不思議な力で、男衆の肉体が入れ替わるんだ。村の男衆には通称、【雄みくじ】って呼ばれとる。和葉のことは恨まんでくれよ? 村の女たちは、男衆の身体が入れ替わっとるなんぞ、これっぽっちも知らんからな」


 力丸の声は今や【真人】のものとなっているうえに、いつものガハハという豪快さは抑えられていて、心底申し訳ないという感情がその声から滲み出ていた。真人の身体に魂が入った彼は、逞しい腕を組み、太い首筋を少し傾けながら真人を上目遣いで見つめる。股間のふんどしが、興奮で膨らみを増しているのが見えたが、それでも表情は沈み、眉を寄せて唇を噛むような仕草を見せた。

 まるで、自分の息子を傷つけてしまった父親のような、後悔と優しさが混じった表情だ。


(このままオレの魂がお義父さんの体に定着して、【姫川真人】としてではなく【姫川力丸】として生きていくことになるのか? オレがお義父さんとして生きていくことになったなら、和葉はどうなる?)


 祭りの後、【真人】の身体に入った力丸が自宅に帰ったら? この奇妙な神事を知らない和葉は、きっと気づかない。魂の入れ替わりなど、まともな人間なら考えもつかないだろう。そして力丸は、まだ新婚の【真人】の肉体で和葉を抱くことになるはずだ。【真人】の逞しい腕で彼女は引き寄せられ、厚い胸板に顔を押しつけ、岩のような腹筋に手を這わせる。強引なマッチョの男に弱い和葉は、きっと喜ぶはずだ。


『真人、今日はなんだか力強いわ……』


 そう甘い声で囁きながら……。そんな想像が、真人の脳裏に鮮明に浮かんだ。【真人】の唇が、和葉の柔らかい唇を貪るように重ねられる。舌が絡み合い、唾液が交換される。【真人】のゴツゴツした手が、和葉の華奢な体をまさぐり、その胸を鷲掴みにする。柔らかい乳房が形を変え、指の間から零れそうになる。【真人】の巨根が、和葉の狭い秘裂を強引に押し広げる。抵抗する間もなく、力強い腰使いで奥深くまで突き上げる。


──ダメだ! 和葉は俺の嫁だ! お義父さんが相手でも許せないッ!!


 嫉妬と欲望、そして嫌悪感が、真人の中で激しく渦巻いた。こんな理解不能な超常的現象のせいで、妻が目の前の男──、かつての自分の身体を持った義父に犯される。そんな事態が脳裏に浮かび、気が狂いそうになるのと同時に、不思議な興奮も覚えた。


「お義父さん! これは、一時的な入れ替わりなんですよね?! 百人以上の男たちの身体が一斉に入れ替わるなんて異常な現象が、永遠に続くわけがない!!」


 真人は力丸の肩を掴み、必死に問いかけた。握った手に力が入り、焦りと恐怖が込み上げてくる。しかし、真人の訴えを聞いた力丸は、目を細めてかぶりを振った。


「【雄みくじ】で入れ替わった身体は、元には戻らん。次に別の身体との交換が起きるのは、来年の大晦日だ。その間の一年、お前は【俺】の身体で生きていくことになる。つまり、俺になりきって過ごすしかないってこった……」


「一年も?! そんな……」


 言葉を失った真人に、力丸は続けて言った。


「心配しなくても、一週間もすりゃあ、新しい身体を受け入れるようになる。そんで一か月も経てば、今の肉体が自分の本当の身体だと認識するようになってな……。次の大晦日が来る頃には、元の身体には未練なんぞ残っとらん。それが、【雄みくじ】の不思議な力だ」


──ごぉぉぉぉん!!!


 ひときわ大きな鐘の音が鳴り響いた。108つの除夜の鐘の折り返しを告げる音だった。


 戸惑いと焦りでいっぱいだった真人の脳内が、その音を聞いた途端、スゥッとクリアになっていった。まるで鐘の音が、混乱した彼の思考を洗い流すかのように──。

 そして消え去った不安感の代わりに彼の脳を満たしたのは、異常なまでの性欲だった。目の前に立っている義父──、先ほどまでの自分そっくりな姿の男に、とてつもない性的魅力を感じてしまう。股間がズキズキと疼き、ふんどしをさらに押し上げていく。それはもはや、普通の勃起の域を超えていた。血管が浮き上がり、破裂しそうなほどに膨張して、ふんどしの表面は先走りでびっちょりと濡れそぼっている。


 周囲を見回せば、他の男衆も同じ状況のようで、目の色を変えて互いの肉体を求め合い始めていた。




 鐘の音が余韻を残しながらゆっくりと鳴り続ける中、拝殿前の広場はますます熱を帯びていた。篝火の炎が煌々と揺らめき、汗と精液の匂いが濃密に立ち込める。百数十人の男たちが、神の呪いにかかったように互いの肉体を貪り、獣の咆哮にも似た喘ぎ声が冷え切った夜空に溶けていく。


 熱い視線を交わし合う真人と力丸のすぐ近くでも、他の男たちが淫らな宴に興じようとしていた。


 村唯一の交番で巡査部長を務める、太田武蔵(おおた むさし)。28歳、既婚で二人の子持ち。警官らしい誠実で端正な顔立ちに、短く刈った髪、鋭い目つき。身長と体重は真人並みで、筋骨隆々ながっしりとした体格は、村のジムで鍛え上げられたものだ。

 厚い胸板は鋼のように固く、割れた腹筋は六つに刻まれ、丸太のように逞しい腕と脚には、極太の血管が浮き出ている。股間の男根も、太く長く、威圧感さえある。普段は正義感あふれる巡査部長だが、今はその屈強な肉体を他人に明け渡し、立ちバックで肛門を貫かれていた。


 武蔵の身体に入っているのは、阿部洋一(あべ よういち)の魂。59歳の阿部は、今年が祭り参加の最後の年である。元ヤクザの前科者で、今は無職。パンチパーマの頭に、垂れ目と厚い唇の好色そうな顔。全身、刺青だらけ。体は贅肉たっぷりで、腹は大きく垂れ下がり、胸はたるんで脂肪が揺れ、尻は柔らかく広がっている。体毛は薄く、肌は弛みきった白さ。股間の皮被りチンポは勃起しているものの重く垂れ下がり、皮の隙間からトロリとした先走りをたらしながらブラブラと揺れている。それが今の武蔵だった。


 阿部は、【太田武蔵】の男前で誠実な顔をだらしなく緩めていた。普段の【武蔵】の鋭い目は、快楽で虚ろに蕩け、小鼻が興奮で膨らみ、息を荒げている。汗で濡れた短髪が額に張りつき、厚い胸板が激しく上下する。太い腕で相手の腰を掴み、獣のような力で引き寄せる。猛り狂ったような巨大な肉棒──【武蔵】の淫水焼けしたそれの表面には太い血管が浮き立ち、亀頭は赤黒く膨張し、先走りの汁でテカテカと光っている。それを、弛みきった【阿部洋一】の尻に、ズボズボと挿入を繰り返していた。


「うほほっ……いい具合に締まるぞ、【ワシ】のケツぅ♥♥ 年取って緩くなった肉が、チンポに絡みついてきてよぉ♥」


 嬉しそうに低く唸り、若い肉体を使って、腰を激しく前後に振る。パンパンという肉のぶつかる音が響き、贅肉をたっぷり蓄えた【阿部洋一】の尻筋が収縮するたび、突き出された若い雄マラが根元まで、武蔵の奥深くに埋まる。セックスに耽る雄二人の汗が周囲に飛び散り、四本の太腿の筋肉は波打ち、二つの尻がブルンブルンと揺れている。阿部は興奮の頂点で、誠実な警察官としての顔を歪め、舌を出しながら腰を思いきり打ちつけた。


 一方、武蔵は阿部に立ちバックで犯されながら、苦悶の表情を浮かべていた。白髪混じりの頭頂部は汗で濡れ、好色そうな顔は青ざめ、厚い唇から涎が垂れ落ちる。尻の穴は広がり、挿入されたチンポの感触に肛門がヒクヒクと痙攣する。【阿部洋一】の肉体が男によって犯される快感を覚えているせいか、弛んだ体が熱く火照り、股間の重いチンポが半勃起で揺れ、先端から汁が滴る。阿部の亀頭が武蔵の前立腺を抉るたび、頭がおかしくなりそうなほどの快感が全身を駆け巡る。


「ひっ……ひぎぃっ! こんな、汚ぇ……オヤジの身体で犯されるなんて、最悪……だぁ!! それなのに、ケツが、気持ち良すぎて……おかしくなりそう……だ!!」


 阿部が容赦なく腰を振り、巨大な肉棒を【阿部洋一】の弛んだ尻にねじ込む。武蔵は膝をガクガクさせながらも、必死に踏ん張り、射精を我慢した。


「うっ……あぁっ……、ダメだっ……! このままイッちまったら、俺はこの身体で一生──」


 武蔵は小さく呻き、声を絞り出した。苦痛と快楽が混じった表情で、贅肉まみれの胸と腹を震わせる。筋骨隆々な体で、村民と家族を守ってきた自分が、今は肥えた老人の身体で、ヤクザの魂に犯され、肛門を抉られている。理性と正義感が、薄汚れた老人の肉体で溶けていく。だが、屈辱の苦痛の中に、未知の快感が芽生え始め、武蔵の心を蝕んでいた。


「なにを我慢しとるんじゃ、元ヤクザの【阿部洋一】さんよぉ! これからは永遠に、お前さんはその身体で生きていくことになるんじゃから、遠慮せずに目いっぱい気持ち良うなれぇや! ほれ、【俺】のこの若いチンポでドピュドピュ、イかせてやるからなぁ!」


 阿部が意地悪く笑い、肉棒をひときわ強く突き入れる。その動きに、【阿部洋一】の尻の穴がギュッと締まり、武蔵は理性を保つのが限界に達した。筋肉質な体で生きてきた誇りが、老人の肉体で朽ち果てる快感に塗り潰される。彼の精神は、老人の肉体に縛られたまま、阿部に堕とされていく。


「イクぞっ、チンポが好きな、スケベオヤジ! マッポのドロドロに煮詰まったザーメン、その汚いケツ穴で受け止めろぉ!!」


 大きな掌で尻を叩かれ、武蔵の体内に熱いものが注ぎ込まれた。パンッという音が辺りに響き、白いケツに赤い痕が残る。【阿部洋一】の弛んだ腹筋がヒクつき、肛門は雄の汁を求めるように窄まり、股間の皮被りチンポから大量の精液が噴き出した。イッてしまえば、すべてが終わりだということを知っていたのに、今の武蔵の肉体はあまりにも雄のチンポに従順で、抗うことができなかった。白濁した雄汁が降り注ぎ、地面を濡らし、生臭い匂いが周囲に広がる。力の抜けた老人の肉体が膝から崩れ落ち、土の上に横たわった。


 武蔵は荒い息を吐きながら、目の前で直立不動している【太田武蔵】の若い肉体を、恨めし気に見上げた。誠実で正義感あふれる警察官だった男は、自分の体を犯した阿部に負け、男への服従を覚えた老人の身体で、この先一生を送るのだ。射精のし過ぎで萎えたチンポの先からは、トロトロと汁が流れ続け、弛んだ腹の肉が時折痙攣している。老人の肉体に宿った精神は、もう元には戻らない。若かったころは筋骨隆々で頼りがいのある警察官だった武蔵は、この日を境に消え失せた。


「ふぅっ、いいケツマンコだったぜ、爺さん♥ これからは【俺】が、【太田武蔵】巡査部長として家族と村民を守ってやるから、安心しな!」


 元ヤクザの阿部──、【太田武蔵】巡査部長は高らかに宣言すると、ふんどしを締め直してくんずほぐれつする男衆の輪の中へと入っていった。その背中は、元の阿部とは似ても似つかない、若々しい筋肉と自信に満ち溢れたものだった。



***


「お義父さん……♥」


 除夜の鐘の音がひとつ、また一つと鳴るたびに真人の心はさらに溶け、目の前にいる【姫川真人】の肉体に愛しさを感じるようになっていた。ゴツゴツした自身の手が力丸の胸板を撫でるだけで、鳥肌が立つほどの快感が背筋を走る。周囲から聞こえてくる理性を失った益荒男たちの上げる嬌声が、真人の心をさらに掻き乱す。


「お義父さん……好きです♥ でもそれ以上に、オレは和葉のことが……」


「おう、分かっとる……。だがな、和葉のことは心配せんでもいい。今日からは【オレ】が和葉の夫として、責任を持ってあいつのことを幸せにしてやるからよ♥ それにな、肉体の中身が変わったとしても、【姫川真人】はそのままってことを覚えとけ。俺が和葉を孕ませたとしても、生まれるのはお前の子供なんだよ」


 力丸の下衆な口ぶりに、真人は腹立たしい思いを覚えたのと同時に、全身が粟立つほどの歓喜をも覚えてしまった。武骨な指がふんどしの下をまさぐり、陰茎を扱かれただけで腰が砕けそうになる。先ほどまでは抵抗感しかなかった同性による奉仕に、今では興奮さえ覚えている。鐘がつかれるたび、真人の意識は少しずつ【姫川力丸】の肉体に支配されていくようだった。違和感のあった肉体に魂が馴染み、手足の指先まで神経が行き届いていくのを感じる。それが気持ち悪くもあり、全身をゾクゾクと痺れさせる。真人が射精をするのは間近だった。


 力丸がニヤリと笑い、真人の胸を揉みながら彼の耳元で囁く。


「言うのを忘れとったが、肉体が入れ替わった後でも、正月の午前一時まで射精するのを我慢すれば、元の肉体に戻れるんだ。だが真人……、ケツの穴の気持ち良さを覚えたお前には、もう遅いかもしれんがなぁっ!!」


「そんな……、お義父さん何をするつもり……ひぎっ……?!」


 突如として肛門に侵入してきた異物が、激しく蠢く感覚に、真人の思考が停止した。二十人以上もの村民が所有してきた【姫川力丸】のケツ穴は、体育会系のちょっとくらい大きなチンポなど容易く呑み込むほどに、すっかり開発されてしまっていた。しかも狼狽えたような態度とは裏腹に、顔には笑みを浮かべ、あまつさえ肛門を穿ってくれと力丸に懇願するように尻を向けるほどに──。


 真人は目の前が真っ暗になり、尻を掘られている現実を、ただただ受け入れるしかなかった。かつての自分のチンポが、愛する妻の父によって操られ、真人の熱く湿った肉壁を容赦なく抉る。鐘の音が脳髄の奥まで響くたび、理性が溶け、目の前に広がる非現実的な光景が、今や真人にとっての現実となろうとしている。


「ケツの中が熱い゛っ……♥ やめてくださっ……、お義父さん……♥♥」


 肛門を貫かれる心地よさに酔いしれた【姫川力丸】の肉体が、真人の意思とは無関係に快楽に溺れていく。すでにふんどしのから飛び出した肉棒は、透明な汁を周囲に撒き散らしながら暴れまわっていた。


 熱い──。今までに経験したことのない感覚だ。頭の中では射精をしてはダメだと、煩わしいくらいにアラームが鳴っているというのに、真人の今の肉体は快感を受け入れて今にも精を吐き出してしまいそうになっている。


「どうだ、気持ちいいだろ? その身体はなぁ……、これまでも、これからも、村の男衆全員のモノなんだ! ここの男どもの大半は、その身体を抱いたことがある。若いのから老いぼれまで、み〜んな【俺】のケツマンコにハマって離れられなくなっちまう。その持ち主が、今年はお前になるってだけだ。真人も諦めて、その肉体でたっぷりと雄の快感に溺れやがれっ!!」


 尻の穴を蹂躙する力丸のチンポが、さらに奥深くまで侵入し、真人の前立腺をゴリゴリと擦る。熱く硬い亀頭が、敏感な腸壁を押し広げ、ピストン運動は激しさを増していく。【姫川力丸】の肉体が、雄の蹂躙を悦んで受け入れるようにできているせいなのか、肛門の奥が疼き、収縮し、力丸の肉棒に絡みつく。


「お゛あぁっ! イイ゛ッ……、【真人】ォ、もっと突いてくれぇッ……♥ もっと……、もっとぉ……♥♥」


 真人がすっかりと堕ち切ったのを見届けた力丸は、悦びに満ちた表情を浮かべながら、真人の尻を両手で揉みしだいた。その指が肉に食い込むたび、真人の肛門の締め付けが強まり、力丸の肉棒をさらに深く飲み込んでいく。今、真人は【姫川力丸】として、雄の奉仕を受け入れる器となったのだ。


「イキますよ、【お義父さん】!!」


 時刻はすでに、正月の午前一時寸前。百回目の鐘が鳴ったのを合図に、力丸の熱い雄汁が、真人の体内に注ぎ込まれた。同時に、真人の男根も力強く跳ね上がり、青臭い精液を周囲に振り撒く。


「おお゛っ♥ 娘婿にケツ穴掘られて、種付けされるの気持ち良すぎる♥♥ 和葉ぁ、許してくれぇ! 今日から【俺】は、お前の父親だぁ……♥」


 白目を剥き、唾液を垂らしながら、真人は【姫川力丸】として射精の快感に酔いしれた。【姫川真人】が注いだ雄汁の熱が、肉体の隅々まで広がっていく。周囲からも彼らと同じように、肉体交換が成立した証の男衆たちの喘ぎ声が、拝殿前全体に響き渡っていた。


 108つめの鐘の音が鳴り、狸の神像の玉袋が、再び妖しい光を放ち始める。それは、今年の【雄みくじ】が終了したことを告げる合図だった。光は徐々に薄れ、最終的には静かに消え去った。周囲では、性交を終えた男衆たちが疲れ果てた様子で眠りについている。真人は【姫川力丸】の肉体で横たわり、重くなった瞼を閉じた。意識が遠のく中、彼は悟った。射精を許してしまった以上、魂が今の肉体から抜けて元の肉体に戻ることはない。もう自分は、【姫川真人】としての人生を歩むことはできないのだと──。


(了)



以下、差分イラストです








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黒竜Leo

更新お疲れ様です! 雄たちの性欲を引き出す裏の祭りが好き!! 年取った男たちは毎年違う人と入れ替わったから、色んな男の経験を得た後段々今の自分になったと思います... たぶんだけど、毎年元に戻った人はとても少なくと思って、そして来年にまた違う男になって繰り返すんだろうね。 お義父さんの力丸さんも去年「力丸さん」になったって、元の真人さんもそのうち自分の息子になる可能性があるが、それを体験できるのは元の真人さんじゃないだけの事だね...

ムチユキ

コメントありがとうございます! この祭りを初めて体験した、ノンケの真人ですら男同士のセックスに屈してしまったので、入れ替わらずに元に戻れた人はほぼゼロでしょうね。 一応裏設定で、神様の気まぐれで、ギャップとか意外性がある二人が入れ替わりやすいというのがあったりします。