コックリング・スワップ (Pixiv Fanbox)
Content
「あ~~~、クソッ!! ヤりてえなぁ……!」
ワイシャツがパツパツになるほどに逞しい肉体。初対面なら震え上がるような厳つい四角顔。ベテラン刑事の梶谷信介(かじたに しんすけ)は、その職にあまりにもふさわしくない言葉を吐くと、口に咥えたタバコのフィルターを嚙み潰した。
「あれ? カジさん、タバコやめたって言ってませんでしたっけ?」
信介の小間使いとして、日常的に彼に手を貸しているチンピラ──、柴田竜也(しばた たつや)が缶コーヒーから唇を離し、突っ込みを入れた。
「うるっせえぞ、タツ! 吸うのは一本だけだっての! 女房の腹の中にガキがいてよ……。あいつ毎日イライラしてるわ、セックスできねえわで、ストレスが溜まって仕方がねえ! この一本が、俺の今の癒しなんだよ」
信介が思いきり息を吸い込むと、タバコはすぐに灰の塊となり、ボロボロと崩れ落ちた。
「ぬあ~~~っ!? 俺の……、俺の貴重なタバコが! 貴重な一服がァ……」
精悍な顔の信介の目尻に、涙がうっすらと滲む。そんな彼の様子を見て、竜也は口の端を吊り上げた。
「……カジさん、性欲を抑えきれないんですよね? オレ、良いモノ持ってますよ。使ってみませんか?」
***
「……んだよ、良いモノって?」
チンピラが言う【良いモノ】など、当てになるわけがない。訝し気な顔を見せる信介に、竜也は得意げな顔で頷くと、手のひらサイズの二つのリングを取り出した。それは特に目立った装飾も施されておらず、シンプルなシルバーのブレスレットのように見えた。
「じゃじゃーん、コレっす! 【スワップ・コックリング】っていうアイテムなんすけど、二つで対になってて、装着した二人のチンポが入れ替わっちゃうっていう不思議なコックリングなんです。性欲旺盛で困ってるんなら、試しにオレとカジさんのチンポ、これを使って交換してみませんか? オレは、そんなに性欲強い方でもないっすし」
あまりにも荒唐無稽な竜也の提案。しかし、そんな案にも信介はすがりたい思いだった。彼の妻が妊娠してから、約半年。性欲旺盛な信介は、毎日最低でも五回はオナニーを繰り返し、どうにかこうにか今日まで乗り切ってきたが、それもそろそろ限界に達してきていて、自慰ではもはや解消しきれないところまで来ていた。
「おら、チンポ交換だかなんだか分かんねえけど、早くするぞ!」
信介の仕事が明けたあと、二人は竜也の住むマンションで向かい合っていた。チンピラのくせに、そこそこいい部屋に住んでいるのが鼻につく。立ったままの竜也に向かって股をガバッと開きつつソファーに座ると、信介はスラックスとパンツをずり下ろし、自分の竿を取り出した。萎えていても子どもの手首ほどはある太さに、長さは15センチはあるだろうか。一般成人男性のそれと比較しても、サイズがかなり大きい。おまけにその表面は度重なる女性との性交で、真っ黒に淫水焼けしている。
「おわっ!? カジさんのチンポ、ズボンの上からでもデカいとは思ってたっすけど、想像通りっすね~。しかも、ズル剥けで黒光りしてるじゃないっすか……」
「黙れ、タコ! じろじろ見てんじゃねえ気色悪ぃ、早くしろっ!!」
「っわわ……。じゃ、まずはオレが……」
信介にクッションをぶつけられた竜也が、竿の根元にコックリングをハメていく。皮被りのチンポにリングがハマっていく様子を見届けた信介は、竜也からもう一方のコックリングを受け取ると、それを巨大なイチモツに装着していった。
「これで、本当にチンポが入れ替わるのかぁ? ……うおぉっ?!」
疑いの眼差しで信介が竜也の顔をにらんだ瞬間、二人のチンポがぐにゃりと歪み始めた。肌色に近かった竜也の包茎チンポは徐々に黒ずみ、亀頭が皮から顔を出しながらデカくなっていく。それとは真逆に、平常時でもズル剥けだった信介のチンポの色は、薄くなりながら縮んでいき、ピンク色になった亀頭は皮で覆われていった。
「ま、マジかよ……」
自分の股間にぶら下がったチンポが、すっかり仮性包茎になったのを目にした信介は、竜也のチンポに目を移した。それはどこからどう見ても、毎日彼が目にし、無骨な掌でシゴきまくってきたチンポだった。
「あぁ、すっげ……♥ オレの股に、カジさんのチンポがくっついてる……♥」
信介に見られている快感からか、竜也は悶えるように身体をくねらせ、勃起し切ったチンポをびくびくと脈打たせた。その先端からは蜜液が漏れ出し、亀頭をテカらせている。そんな竜也の態度に、信介は憤りを覚えたものの、久方ぶりに性欲が消え失せた爽快感が、それを上回った。体が軽い。これまでずっと、セックスのことでいっぱいになっていた脳が、すっきりとクリアになっていく。
「んだよこれ、スゲェな!! これでもう、うざってえストレスともおさらばだぜ!」
満面の笑みを竜也へ向け、彼に抱き着く信介。二人の上半身が密着する。信介は気付かなかった。その時、竜也の顔が恍惚としていたことに──。
*
「今回もお手柄だったな、梶谷警部補! 今後も、この調子で頼んだぞっ!!」
竜也とチンポを入れ替えてから二か月。警察署署長から肩を叩かれた信介は、上機嫌だった。妻とは些細なことで仲違いすることもなくなったし、性欲が減退したおかげで、職務にもバリバリ集中できるようになった。何もかもが順風満帆で、この先には幸せしか待っていないと、彼は信じて疑わなかった。
──ドッパーーーンッ!!
大きな衝突音が、警察署内の柔道場に響き渡る。立った状態で呼吸を整えているのは信介。そして大の字で畳に横たわっているのは、彼の後輩の刑事、新田剛(にった つよし)だ。
「だあ……っ!! もう無理っす、カジさん! 勘弁してくださいよ~~!!」
「バッカ野郎! お前も男なら、もうちょい踏ん張ってみろや!!」
そう言ってはみたものの、信介はやりすぎたかと思い直し、剛に手を差し出した。駄々をこねる子どものように畳の上をゴロゴロと転がっていた剛は、ほんの少しの間その伸ばされた手を不思議そうに見つめたあと、その手を掴んで立ち上がった。
「カジさん、前より強くなってません?」
「ん? ワハハ、集中力を高める秘訣を手に入れたもんでな!」
豪快に笑うと、信介は柔道着越しに股間を撫でた。仕事は順調、柔道では誰が相手でも負け知らず。信介は完全に、人生という名のステージを駆け上がっているような感覚を覚えていた。
「それに、カジさんなんか優しくなりましたよね? 前は投げたあとに寝技かけてきて、失神寸前まで締めてきたのに……。同僚のみんなも言ってますよ。【鬼の梶谷】に代わる異名を考えないとなって」
その言葉に、信介はドキリとした。確かに最近、同僚たちとのスキンシップが増えたような気がする。肩を抱いたり、尻を触ったり、ときには抱き着くことも──。高校は男子校だったし、ずっと体育会系の中で過ごしてきた。とはいえ思い返せば、このところの自分は、やたらめったら男の体にベタベタ触りたがっていたかもしれない。しかも、特に剛のようなむさ苦しい男相手に……。
「まさかカジさん、奥さんが相手してくれないから、男に乗り換えるつもりだったりして──」
剛が冗談のつもりで言ったのは、信介にも分かった。しかし、いまも無意識のうちに彼の視線は、後輩の柔道着の隙間から見える分厚い胸板にくぎ付けになっていた。股間が熱い。気のせいかと思いたかったが、ドンドンと頭の中で脳汁が溢れているのを感じる。強烈な匂いを放つ、剛の体臭。幾筋もの汗の滴が垂れる、剛の男らしい顔。信介にも勝るとも劣らない、屈強な肉体。そのすべてが魅惑的で、彼の興奮を煽ってくる。
「な、何言ってやがんだお前……? ちっ……、稽古は終わりだ! さっさと帰って、飯食って寝ろ!!」
「おぅ……、押忍。お疲れ様っす……」
やや怪訝そうな顔をしながらも、剛は更衣室に戻っていった。信介は平静を装いながら、トイレへと足早に向かった。誰にも見られないようトイレの個室に入ると、信介は壁にもたれかかりながらパンツを下ろした。蒸れた雄の匂いを放つ黒のボクサーパンツには、我慢汁がべっとりとこびりついていた。
「お、俺……、剛のことを思ってこんなに……」
仮性包茎のチンポが熱い。勃起してもそれほど大きくもないイチモツの表面には血管が浮き上がり、ビクビクと震えている。【柴田竜也】のチンポだが、二か月間ともに過ごしてきたせいもあって、愛着がわいている。信介は亀頭を皮越しに鷲掴みにし、そのまま竿をしごき始めた。
「んん゛っ!!」
ほんの少し擦っただけなのに、全身が震えるほどの快感が襲ってくる。あっという間に我慢汁が溢れ出し、すぐににちゃにちゃという粘着音がトイレの中に響き始めた。掌を前後に動かすたびに、皮がカリ首を刺激して、腰から下がなくなってしまうのではないかと疑うほど気持ちいい。頭の中は、剛のことでいっぱいだった。あの雄臭い顔、みっちりと筋肉の詰まった大胸筋に六つに割れた腹筋。一升瓶のように太い腕に丸太のような太股。着替え中やシャワー中に何度も見たことのある彼のチンポは、いまの信介の股間のモノ同様仮性包茎だが、驚くほどの巨根だった。そのチンポで、剛はどれほどの女たちを抱いてきたんだろう……。
「あっ……♥ ぐっ……、おっ……」
ボクサーパンツが汚れることも厭わず、信介は一心不乱に手を動かし続けた。セックスはもちろん、オナニーさえもいつぶりか分からないほど久しぶりだったが、今まで経験したどの自慰よりも気持ちがよかった。脳内では素っ裸になった剛と、くんずほぐれつ絡み合ったあと、彼のデカマラでアナルを掘られ、女のように喘ぎながらアヘ顔で果てていた。
「つ、剛……っ! あ゛っ、イクっ!! ダメだッ、俺たち刑事なのにっ!! お゛お゛ぉおおっっ♥♥♥」
──ドビュルルルッ!! ドブッドブッ! ドプッ、ドプッ……!!
便器の中に大量の精液を放ちながら、信介の腰が前後にガクガクと動く。あまりの快感に膝は震え、立っていられずにその場に崩れ落ちてしまった。だが、それでも彼の射精は止まらない。信介はひんやりとした便座に頬を預けながら、包茎チンポからねっとりとした白い糸を垂らし続けた。
*
あの日から──、剛が冗談で言ったつもりの言葉を聞いてから、俺はドンドンおかしくなっていった。ダメだと分かっていても、いつの間にか同僚のケツを目で追い、あいつらの全裸姿を想像してチンポを硬くする毎日。確かに女相手には欲情することもなくなり、性欲も減った。その代償とばかりに、今の俺はマッチョな野郎どもとまぐわう場面を妄想しながら、センズリをこく猿野郎へと成り下がっていた。
「チキショウ……。なんで俺はまた、警察署の便所なんかでチンポしごいてんだ……」
ついこないだまでは、充実した生活を手に入れたと信じて疑わなかった。今後は産まれてくる子と、妻との輝かしい未来が待っている──。そう思っていたはずなのに、俺は気付けばふらふらと警察署内の男性用トイレに足を踏み入れていた。個室に入るとスマホを操作して、隠し撮りした同僚たちの全裸姿を眺めながらのセンズリ。もはや妻に対しては、一ミリも性愛の気持ちを抱いていなかった。
「くっそ……、こいつら、なんでこんなにエロイんだよぉ! またチンポがビンビンになっちまうだろうが……!」
毎日のようにセックスの相手をしていた妻よりも、いまやガタイのいい野郎どものことで頭がいっぱいだ。野性的な顔立ちをした男たちが、逞しい肉体を持った男たちが、俺の空いた心の隙間を埋めてくれる。俺はますますチンポをしごくスピードを速めると、スマホの画面に映ったガチムチ野郎どもと交わるところを妄想しながら、濃厚なザーメンを便器の中に撒き散らした。
*
「柴田竜也って、カジさんの子飼いのチンピラでしたよね?」
同僚の口から久方ぶりに聞いた竜也の名に、信介はびくりと肩を震わせた。
「ん……、ああ……。最近は会ってねえけど、あいつがなんかしたか?」
「カジさん、知らないんすか? その柴田、いま裏じゃあ噂になってますよ。その持ち前のデカマラで、雄好きな野郎どものケツ穴を犯しまくってるって」
「は……?」
信介の頭の中は真っ白になった。男たちとセックスをしているということは、【梶谷信介】のチンポを、男の尻の穴に出し入れしているということだ。俺のチンポを、男のケツの穴に? 俺の……、俺のチンポを──。
*
「おいっ、タツ! テメエ、俺のチンポでいろいろ悪さしてるらしいなぁ?」
竜也のねぐらに赴いた信介は、合鍵を使って室内へ足を踏み入れるなり、傍若無人な物言いで問いただした。
「悪さって……、何のことを言ってるか分かんねっす。オレ、カジさんと違って頭良くないんで……」
信介の突然の来訪に面食らいながらも、竜也は平静を装って答えたが、彼のチンポは四つん這いになった男のケツ穴を執拗に突きまくっていた。その暗い穴は、すでに弄り回されたらしくパックリと開き切り、その口からザーメンを垂れ流している。
「……あぁ、これっすか? へへ……。カジさんのチンポ、最初は男相手だと、萎えっぱなしで勃起させるのも一苦労だったんすけど、ケツマンの味を覚えてからは、野郎のデカいケツを見ただけでフル勃起するようになりましたよ。おまけにザーメンも、練乳みたいに濃いやつがドバドバ出ますしね。もう完全に男好きのゲイチンポっすよ、カジさんのイチモツは♥」
「おまっ……、ふざっけんな!! 俺のチンポで好き勝手しやがるのも、これまでだ……っ!! こんなもん、もう外してやる!!」
怒りで顔を真っ赤にした信介は、自身の股間の根元にハメていたコックリングを、力任せに引き剥がした。
「あ~あ……、やっちゃいましたね、カジさん。これでオレたちの身体は……」
「あん?」
俺たちの身体が、なんだと言うんだ? すでに我慢の限界に達しようとしていた信介が、竜也の胸ぐらを掴もうと手を伸ばした瞬間だった。
「あぐっ!? あ゛っ、お゛お゛おぉおっ!!」
コックリングを外した股間の根元から、強烈なまでに沸き上がるような快感。それは全身へと瞬く間に広がり、信介の身体を蝕んでいった。
「うぐ……っ! なんっだ、この感覚は……!?」
信介の全身の骨がミシミシと音を立てて軋み、肉体が変化していく。それはまるで、体内で骨格が動くような異音。信介は思わずその場に手をついた。次の瞬間、眉がゾワリと動いた。生え際に感じたむず痒さのあと、太く男らしかった眉が細く整っていく。まるで誰かに丁寧に調整されていくかのように。
「んお゛っ♥」
甘い吐息を漏らした信介の、男らしく大きかった目が、徐々に陰険さの漂う、薄い切れ長の目に変わっていく。次に鼻筋がピクンと震えると、鼻梁の伸びていた鼻が短く、少し下向きの形へ。黒々としていた髪は、根元から黄味を帯び始める。軽薄なチンピラである、【柴田達也】を象徴するような金髪へと──。
「なにが起きてっ……!」
猪のように太かった首も細くなり、低かった声さえも、高くなりつつあった。これまで鍛え抜いてきた彼の肉体は、すでに先ほどよりも一回りは小さい。胸や腹に付いた筋肉が萎む代わりに無駄な贅肉が付き、手足は細く華奢になり、目線の高さもすっかり低くなった。信介の薬指にはまっていた結婚指輪は、サイズが合わなくなったことで床に転がり落ちて、小さな音を立てた。
「お゛お゛♥♥ 顔が♥ キモチイイ♥♥」
ドプドプとコンドームの中に精を吐き出し続けている竜也の体もまた、信介同様別人のモノへと変化し終えていた。180後半の背に、100キロを優に超える筋肉たっぷりの巨躯。その首の上に付いた頭部が、SF映画のワンシーンのようにぐにゃりと歪み、悪人面から刑事にふさわしい正義感あふれる顔付きに変わっていく。
──すべてが入れ替わってしまった。
肩で息をする信介の前にいたのは、頭の天辺から爪先まで見慣れた男。精悍な顔を喜悦で歪めた、【梶谷信介】だった──。
*
「……へへ、落ちたっすよ?」
しゃがみ込んだ【梶谷信介】──、彼そっくりになった竜也が、ゆっくりとそれを拾い上げる。ごつごつとした拳に、節くれだった長い指。見慣れた手。しかしそれは、もう信介のモノではなかった。竜也はシルバーのリングを持ち上げると、わざとらしく光にかざした。
「ふ〜ん、これが【妻帯者の証】ってやつっすか。ずっしりと……、重たいっすね」
そのまま、自分の左手の薬指に、スッ……と通す。サイズはピタリと合っていた。
「……結婚指輪をはめただけで──」
自身の指に指輪をはめた竜也が、信介を見下ろしながら、口角を上げてニヤッと笑った。
「なんか、ノンケになった気がして……エロい気分になるっすね♥」
光沢のある指輪が、まるで最初から竜也のモノであったかのように、彼の指に馴染んでいる。
「ほら、似合いますか? 【梶谷信介】の身体に、【梶谷信介】の指輪っすよ♥ あ~、すっげ……。チンポだけでも入れ替わってサイコーだったのに、オレの肉体すべてが、カジさんになっちまった……。顔も体も、エロ過ぎっすよ♥♥♥」
鏡の前に立った竜也は、厳つくなった顔を一方の手でなぞりながら、もう一方の手を使って、自身の盛り上がった胸筋を揉み始めた。
「おおっ……♥ やばっ! この身体で雄っぱい揉んでると、入れ替わったの実感して、すっげえ興奮すんなあ~♥」
舌を垂らし、下卑た笑みを浮かべる【梶谷信介】。胸から腹筋の溝、そして股間へと手を滑らせていった彼が口にしたのは、パートナーの合意なくコックリングを外した場合、そのまま肉体が入れ替わったままになってしまう呪いの真実だった。
「カジさんが無理やりコックリングを外したせいで、オレたちの身体はこの先、永遠に入れ替わったままっす♥ はぁ~……、オレ、これからは刑事の【梶谷信介】として生きていくしかないんすね……」
「ざけんじゃねえっ……返せっ、俺の身体! テメエみたいなチンピラが俺の──」
「あぁ? うるっせえぞ、チンピラはテメエだ!!」
ドスッ──! 信介が言い切る前に、竜也の拳が彼の鳩尾にめり込んだ。
「うぐっ……!!」
その一撃だけで信介は床に倒れ込み、腹を抱えて丸くなった。
「さすがは、柔道有段者の肉体。強ぇ、つえぇ。テメエにゃ悪いがな……このスケベボディは、もう【オレ】のモンだ♥ お前はチンピラとして、おとなしく俺にケツを掘られてりゃいいんだよぉ♥」
床に仰向けに転がった信介に、竜也が全体重をかけてのしかかる。彼はコンドームを新しいものに付け替えると、細くなった信介の両脚を開脚させ、チンポを彼の肛門に押し当てた。
「お前、何考えて……?! やめろ!! そんなもん入るわけ……! 俺は……ホモじゃねえっ!!」
もはや悲鳴にしか聞こえない抗議の言葉を上げる信介に、竜也は冷笑で答えた。
──ズブゥウウッ……!!
「んぎっ!? んあ゛あ゙あ゛ぁっ!!」
メリメリィッ! と、焼けるような激痛が、信介の肛門から脳天へと走る。無意識に腰を引こうとしたが、竜也に組み伏されて逃げ出せない。痛みに耐えようと鼻から空気を目いっぱいに取り込むと、嗅ぎなれた体臭が鼻孔を通り抜けた。【梶谷信介】の肉体から漂う雄の匂いだ。他人の肉体から発せられる懐かしい体臭は、彼らの肉体が入れ替わってしまったのだと実感させるには充分だった。
「どうっすか、カジさん? かつての自分のチンポの味は?」
「あぁ……っ、入って、くるな……!」
痛みに耐えながら、信介は必死の抵抗を試みる。しかし今の肉体では竜也をどかすことすら出来ない。されるがままだ。
──ズプッ……ヌプヌプッ……! グプブ…………!!
小さな穴を押し広げ、凶暴なまでの太さと硬さを備えた竜也のチンポが、信介の中に侵入する。熱い肉の塊が信介の腸壁を容赦なく擦り上げ、その存在感を彼の新しい肉体に刻みつけていく。
「おおっ……、やべえ!! ちょうどいい締まり具合だ♥ この日のために、極太ディルドでケツマンを鍛えてきた甲斐があったってもんだぜ♥♥」
「あ゛っ……♥ あぐっ、ううっ……!」
竜也のチンポが根元まで挿入され、信介はその苦しさに思わず顔を仰け反らせた。しかし痛みは徐々に引いていき、代わりに感じたことのない快楽が彼の脳を蕩けさせていく。
──ズチュッ! ドチュッ!! ……パンッ! パァンッ……!!
肉と肉のぶつかり合う音が室内に響く。信介の視線の先には、チンピラの【柴田竜也】が刑事の【梶谷信介】によって犯されている様が映った、鏡があった。これまでに彼自身が浮かべたことのない、嗜虐的な表情に、発情したトロ顔。快楽に溺れて喘いでいる刑事の顔は、あまりにも下品で淫らなモノだったが、それが信介を興奮させた。同時に彼の前立腺に、ゴリゴリと竜也の亀頭の先が擦り付けられた。
「ああ゛ぁっ、イグッ♥♥♥」
ヴァギナに挿入したわけでもなく、手淫したわけでもない。それなのに、信介はイッてしまった。睾丸が忙しなく収縮と弛緩を繰り返し、尿道を通って鈴口からマグマのような熱量がほとばしる。
信介は、竜也によって完全に肉体を奪われてしまった。段階を踏まずにコックリングを外した罰で、彼には竜也に逆らえなくなる呪いがかかり、コックリングの秘密すら誰にも明かせなくなってしまった。頭の中では竜也に対して罵倒を繰り返しても、雄の肉体を知っている【柴田竜也】の口からは恍惚なよがり声が漏れてしまう。どうしようもなくなった信介は、かつての自分のチンポを、緩くなったアナルの中に受け入れるしかなかった。
***
暗いマンションの室内を、プロジェクターの光が淡く照らしている。スクリーンに映っているのは、赤子を抱いてあやす屈強な男だ。
『お〜、よちよち。優奈(ゆな)ちゃん、パパでちゅよ~』
強面の顔をデレッと崩した【梶谷信介】が、哺乳瓶による授乳からオムツの交換まで、甲斐甲斐しく我が子の世話を焼いている。その姿は通常であれば、父親が愛する娘に対して向ける慈愛の光景そのものだ。
場面が切り替わる。そこに映っているのは、梶谷家の寝室のベッド。刑事にふさわしい巨体が揺らめき、鍛え抜かれた背筋がしなる。滴る汗が降り注ぎ、妻の裸体を濡らしていく。それは、いわゆるハメ撮りだった。
『ん゛っ……、久しぶりのしんすけのおチンチン……♥ すごい……っ、おマンコ壊れちゃう……♥♥』
信介が──いや、竜也の精神が宿ったその肉体が、【梶谷信介】の妻を抱いていた。
「ほら、よく見てくださいよ。カジさんの奥さんが、【この身体】に抱かれてとろけてる姿を──」
竜也がリモコンを操作すると、スピーカーから広がる妻の甘い声が大きくなった。
『しんすけ……、もっと……突いてっ、好き……♥』
ベッドの軋む音と濡れた音が、室内に淫靡に響く。画面の中では、妻が恍惚とした表情で【夫】に愛の言葉を囁いている。
信介は目を逸らそうとした。だが──
「逃げんなよ、カジさん。……ほら、ちゃんと【今の梶谷信介】を見届けるんだ」
「っ……あ……、やめてくれぇ……」
抗う信介の腕を、竜也が後ろから抱き締めるようにして封じる。
「あんたの奥さん、感じまくってますよ。それに……カジさんも、興奮してるじゃないっすか♥」
「……やめろっ、俺は……っ」
竜也のゴツゴツとした指が、信介の下腹部に触れる。確かに、パンツの膨らみには熱がこもっていた。恥ずかしくて、情けなくて──、なのに、硬い指先の感触は気持ちがよかった。そのまま流れるように、無骨な手が信介の下着を脱がせていく。信介は拒絶の言葉を吐きながらも、その温もりに身を任せていた。
目の前のスクリーンの中で、自分ではない誰かが妻を抱く姿に、性的欲望を掻き立てられる。妻を寝取られた。しかし彼女を抱いているのは、かつての自分の肉体。そんな倒錯的状況に、信介はゾクゾクと背筋を震わせずにはいられなかった。
「どうっすか? カジさんの奥さん、いい声出すでしょ? 長年夫婦やってるだけあって、チンポとマンコの相性もサイコーでしたよ〜。まあ、旦那の中身が別人に変わってるのには、全然気付かなかったっすけどね」
野太い声が耳元に届く。背後から信介の上半身に回された竜也の腕は、無駄な贅肉のない強靭な筋肉に包まれていた。その感触は、嫌でも身体に刻み込まれている──自分がかつて持っていたもの。竜也の指先が、信介の頬から喉元、胸元へと艶めかしい手つきで這っていく。
信介の呼吸が浅くなる。肌がひくつくのは恐怖のせいか、それとも──。
画面では、妻の声が高く跳ね、達した瞬間を迎えていた。
『しん……すけ……、イッちゃう♥ んあぁっ、愛してるぅ~~~♥♥』
妻が快感に耐えられず発した台詞。それは信介ではなく、信介の肉体を乗っ取った竜也に向けられていた。自分のすべてを奪った男に。狂おしいほどに湧き上がる、憎しみの感情。
しかしそれ以上に、彼は興奮していた。自分が何百回と愛してきた妻の肉体が、自分の振りをした男によって汚されていく。信介は画面に映る、二人の痴態から目が離せなくなっていた。
「っはぁ……♥ あんたの奥さん、オレのチンポで感じてイッちゃいましたよ? そりゃ、こんなデカくて硬いチンポで穴をズボズボ貫かれたら、男だろうが女だろうが感じて当然っすよね……。それにしても、ゲイでしょっぱいチンピラだったオレが、妻子持ちのノンケパパになれるなんてなぁ♥ マジで、【スワップ・コックリング】さまさまだぜ♥♥」
眼前で見せつけられるように揺れる、竜也の勃起したチンポ。その先端からは透明な汁が溢れ、てらてらと光っていた。あまりにも凶暴なその形。慣れ親しんだ自分の目で見た時とは、まるで別物だ。
「カジさん……。あんたの奥さんも、生まれてきた娘も愛しくて愛しくて、オレの命にも代えがたいくらい大切な存在になっちまった。なにせ今となっては、あの子と血が繋がっているのはオレ……。遺伝子上でも、オレと優奈が親子なんすよ♥♥」
「……っ」
「どうした、【タツ】? そんな顔して。物欲しそうな顔をしやがってよ……。お前はゲイだから、どうせノンケ親父の極太チンポが欲しくてたまんねぇってとこだろ?」
スクリーンに映し出されるかつての自分の姿を見た直後から、信介の尻の穴は無意識に雄を求めて疼いていた。それを見透かすように竜也が耳元で囁くと、彼は四つん這いになった信介の背後に回り、尻の谷間に硬いチンポをあてがってきた。
「あっ……。何を?!」
「心配しなくても、ちゃんとお望みのモノをくれてやるよ! おらっ、この淫乱ホモ野郎!!」
竜也が怒鳴ると同時に、ズブッと後ろからチンポをねじ込まれる。熱く張り詰めたそれは挿入だけで信介のイイところを突き上げ、無理やりにでも快楽で屈服させようとしていた。
「ああ゛っ!! あぅっ……! ぬああ゛ぁぁっ♥」
──ぬぷっ……ずぷぷっ、ズブブッ……!
遠慮なく激しく尻穴をかき回すような腰つき。そのたびに、尻穴の入り口が抉られ、それでいて弱い部分を的確に突いてくる。竜也のチンポは、まるで信介の肉体を熟知しているかのように動いた。
「いいケツマンコだぜ、【タツ】。女房のマンコにも負けてねえ。俺のデカマラを締め付けやがってよ。へへっ、もうその身体に満足して、この【梶谷信介】の身体はいらねえってことだよな? 俺ももうあんたの女房のことも、生まれてきた娘も、この肉体も愛しくてたまらねえんだ。だがなぁ──、それ以上にお前のことを愛してるっ!!」
竜也の腰つきがどんどん激しくなる。信介の尻穴は、襲いかかる剛直を離すまいと締め付けていた。数え切れないほど男のチンポを咥え込み、悦んで尻を振ってきたこと。その記憶が【柴田竜也】の身体に深く刻み込まれているのだ。
「ハァ……、お前が好きだ……♥ これからも俺の小間使いとして……、オナホとして働いてくれよ、【タツ】ゥ♥♥ ……オラ、イクぞ! 現役刑事の濃厚ザーメン、しっかり受け止めやがれッ!!」
「【カジさん】っ……! ああ゛ぁっ~~♥♥」
竜也は信介の尻たぶを鷲掴みにすると、そのまま腰を大きく動かし、猛り狂った肉棒をパクつく穴の中へと突き入れた。そして──
──どびゅるるるるぅっ!! ブビュッ、ブビューーッ!!
信介の腸内に、容赦なく熱く煮えたぎったようなザーメンがぶちまけられる。
(う、嘘だ……っ。俺、刑事だったのに……。身体を奪われた挙句に嫁まで寝取られて、ケツにチンポはめられて……)
頭の中では走馬灯のように愛する妻と、先ほど見せつけられた娘の映像が目まぐるしく回る。
オーガズムに達してもなお、竜也の動きが止まる気配はない。むしろ射精したばかりだというのにチンポにますます力が入り始めた。腹の内側が熱くなっていく感覚に信介は抗おうとするものの、敏感になった尻穴をまさぐられながらでは上手くいかない。それどころか──
「お? なんだぁ? ハハ、もう身体は俺に従順になっちまったな。いいケツマンコだぜ、さすがは俺の愛する【柴田竜也】だ♥ これからも、俺たち、愛し合っていこうぜ♥♥」
ギュッと締まったアナルに強烈なピストンを喰らうたび、信介の頭の中が多幸感で満たされていく。
「いっ……、あ゛っ……! ああんっ♥♥」
ダメ押しとばかりに竜也の追撃を前立腺で受け止めた瞬間、信介は自分の魂が【柴田竜也】の肉体に染まっていくのを感じた。もう元に戻ることは出来ない。なぜなら彼が愛するのは、もはや妻や娘ではなく、【梶谷信介】なのだから──。
「うおっ……、キツキツマンコが絡みついてきやがる♥ ……ったく、このいやらしいケツマンは俺専用の便所だな! 一生こうやって俺を悦ばせてくれよ、なあ【タツ】ゥ♥♥♥」
あっさりとオーガズムに達した信介は、竜也の薬指に光る指輪を視界に収めながら、イチモツの先からドプドプと精液を吐き出し続けて、アへ顔を浮かべるのだった。
(了)
Files
Previews only