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トリニティ総合学園、トリニティ自警団の宇沢レイサは眼下に広がるD.U.の夜景を眺めていた。市街中央の大きな通りをトラックやバスがひっきりなしに走行している。オフィスビルから出てきたスーツ姿の獣人やロボット達の帰宅ラッシュが始まっており、期末試験を終えて遊びに来ていた生徒達と合わさり、脇の歩道は大勢の人で賑わっていた。  1月も終わって月が変わり、キヴォトス全生徒注目のバレンタインデーまでのカウントダウンが始まりつつある。暖かな春がやって来るにはもう少し時間がかかりそうな寒空の下で、自分の口から出ている白い息をなんとなく眺めているレイサの意識は、隣に立つパートーナーからの言葉で外界へと戻って来る。 「宇沢、モノレール来たよ」 「あ、そうですね」  レイサと同じトリニティ生であり、放課後スイーツ部の杏山カズサ。頭部に生えた黒い耳が寒さにぴょこぴょこと揺れている。  そんな彼女の冷たい手を握り、レイサは自分の羽織っているコートのポケットへとまとめて突っ込んだ。ポケットの中はカイロが空間を温め、入ってくる冷たい手を優しく迎え入れる。 「温かい……」 「ふふ、良かったです」  普段の溌剌さが少し抑えられた小さな笑みを向けられたカズサは気恥ずかしさを抱えつつ、モノレールの車両へと乗り込む。レイサのポケットには自分の手が入ったままだ。  静かに発進したモノレールは、走行音や揺れをほとんど感じさせず、15分ほどでミレニアム自治区の都市部へ到着した。 「やっぱりトリニティとは雰囲気が全然違うなぁ」  ミレニアムには何度か来たことがあるが、この空気感の違いに毎回新鮮さを感じる。改札を通って駅ビルの外へ。 「こっちです!」 「ん」  周りをキョロキョロと見回すカズサの手を握ったままのレイサは、彼女の手を引いて先導する。期末試験を終えた生徒達で賑わう大通りを進み、途中で道を外れて1本奥へ。途端に喧騒がなくなった道を少し進めば、ネオンの灯りが特徴的なホテルが現れる。今回のホテルデートの目的地だ。  自動ドアをが開き、暖房によって暖められた空間が2人を迎え入れる。レイサに少し待つように言われたカズサは、スムーズに受付をしているレイサを静かに眺める。ほどなくして、鍵と紙袋を受け取ったレイサが戻って来る。  エレベーターに乗って目的の部屋へと進む途中、カズサは無言のままだった。 「……」 「な、なんですか杏山カズサ……?」  ジトリ、と湿った視線を向けられたレイサはおっかなびっくりといった様子で自身のパートーナーへと声をかける。 「宇沢、なんか手慣れてなかった? もしかして来たことあるの?」 「へぇっ!? そ、そんなわけないじゃないですか! と、友達だってほとんどいないのに……」  徐々に声が小さくなりレイサの顔が下を向く。 「ただ……」 「ん?」 「杏山カズサと初めてのホテルデートですから……失敗したくなくて……その……」  ゴニョゴニョと再び最後の方が小さくなっていくレイサに、カズサは小さく笑みを浮かべため息をつく。 「私のために色々調べてくれたんだ?」 「えっと、はい……」 「ありがとね」 「……っ! はい!!」  レイサの答えに満足したのか、カズサがニカッと明るい笑みを浮かべ、釣られるようにレイサの表情も明るくなった。 「……あ、部屋ここですね!」  廊下の突き当たりまで進むと、鍵に書かれているものと同じ数字が表示されている扉が姿を見せる。 紙袋で手が塞がっているレイサの代わりに扉を開けて中へと足を踏み入れる。ビジネスホテルのような3点ユニットバスではなく、しっかりとトイレとバスルームが分かれている。バスルームは透明なガラスで仕切られており、中がしっかりと見える。部屋のメインであるベッドもしっかりとした作りのダブルベッドだ。 「意外と普通の部屋なんだ。いくらミレニアムだからって最先端技術がどこでも使われてるってわけじゃないか」  口の中で呟きつつ、備え付けられている机の上で紙袋を開けているレイサへ視線を向ける。 「受け付けで貰ってたよね。なにそれ?」 「ふっふっふ……。今回のホテルデートのために、事前に頼んでおいたものです!」  得意気に取り出して眼前に突き出されたそれを、カズサはまじまじと見る。形状としてはレオタードが近く、透明なそれはビニール製かのような印象を受ける。  まさか本当にレオタードではないだろうと思いつつ、自分の持っている知識で次に近いものを口に出す。 「……水着?」 「見た目は近いですよね! とりあえず着替えましょう!」  レイサに言われるがままに衣服を脱いで裸になる。部屋には自分とレイサしかいないのだが、気恥ずかしさに右手で胸を隠す。改めて手渡されたものに視線を落とす。  レイサから直接渡されたものなのだが、何か間違っているのではないかという不安に、レイサの名前を呼びながら振り返る。 「……ねえ宇沢。これやっぱり間違ってるんじゃ……」 「どうかしましたか?」 「…………ううん、なんでもない」  しかしそこには、既に透明なレオタードを身に着けていたレイサがきょとんとした顔でカズサを見ていた。そのあまりにも普段通りの調子のレイサを見て、半ば諦めのような感情を抱きつつカズサは手早く生地が非常に薄いレオタードを纏う。 「(え、これ本当に着てるんだよね……?)」  カズサは思わず腹部に手を当てる。生地の薄さと透明さが合わさり、まるで肌に直接触れているような感覚だ。  無事に着替えを終え、室内にはパッと見全裸の2人が向かい合う形になっている。 「それで、これってなんなの? まさか本当に透明な水着だなんて言わないよね?」 「えっと……確かリモコンも一緒に……あっ。ありました!」  紙袋を漁っていたレイサが、手のひらに収まりそうなサイズの薄いリモコンを見せる。レイサが自然な流れでボタンを押すと、一瞬でレイサの格好が変わった。 「それって確か……」  遊園地のイベントでショーをした際に着ていたという衣装。モモトークで送られてきた写真で見た覚えがあった。その格好を見たカズサは今回のホテルデートの趣旨を理解する。 「ふーん、今日はそういうプレイがしたいってこと? その水着みたいなやつも、専用のなんだ?」 「ミレニアムの最新技術で、事前に衣装データの注文をしておけば、好きな衣装を映せるんです! 実際のコスプレ衣装だと高価なのと、こういうのに使うのは気が引けるので……」 「なるほどね。……で、宇沢はその魔法少女の衣装で良いけど、私は何にすれば良いわけ? こういうプレイに使えるような衣装なんて、着たこと、な…い……!?」  言葉の途中でカズサは自分の格好に気がついた。華やかな格好のレイサにばかり気を取られ、自分の格好が変わっていることに気づけなかった。トリニティ謝肉祭のお化け屋敷カフェで着ていた、黒い毛が特徴的なワーウルフの格好。 「な、なんでこれ!? う、宇沢! あんたが私の衣装のデータなんて持ってるわけないでしょ!?」 「ナツさんに相談したら喜んで写真を送ってくれました!」  混乱した頭で問いただすが、いつもと変わらない笑みを浮かべている彼女の口から出てきた部活仲間の名前。レイサに悟られないように曖昧な笑みを浮かべつつ、額には青筋が浮かんでいた。 「(あいつ……っ)」 友人への折檻の予約を内心で済ませ、目の前のパートーナーへ視線を戻す。 「……じゃあ今日は、そういうプレイがしたいってことで良いんだよね?」 「……はい」  カズサの問いに彼女は頬を紅潮させて頷く。 「それじゃ、始めよっか」  シンプルな宣言と共にカズサはレイサの腕を引いてベッドまで連れていき、そのまま押し倒した。 「む、無理矢理だなんて、正体を現しましたね怪猫キャスパリーグ! ですが正義の味方であるテルミットピンクは絶対に負けな、ひぃっ!?」  情事の始まりを予感し、恥ずかしさを誤魔化すように早口で捲し立てるレイサの身体に指を這わせ、セリフを途中で寸断する。  カズサの10本の指が腹部を挟むようにして脇腹に着地。そのまま裾から内側へと手を伸ばす。レイサの衣装に隠れているため、自分の視界に両手は映っておらず、指先や手の甲にも衣装の布地が触れている感触が確かにあった。 「(どういう仕組みか分からないけど、ミレニアムの技術ってやっぱり凄いんだ……)」  そんなことを考えながら指先を不規則に小さく動かしていると、レイサの身体がピクピクと震える。 「くふ、んふぅっふふふっ! いひゃ、ぁ……ん、ぁははっ!?」 「まだ指をちょっと動かしただけなのに、正義の味方のテルミ、ぁー……えっと」  チラリと視線でヘルプを求める。 「テルミットピンクですぅっふふふ!」 「そう、それ。正義の味方のテルミットピンクはこんなに弱い刺激に負けちゃうのかなー?」 「あふっふひひひひっ!? あひゃはははははは、くひゅぅっふふふふふふふ!! ゆ、ゆびっその動きずるいですぅぁっははぁっ!?」  途中から調子を取り戻したカズサがニヤニヤと悪い笑みを浮かべる。関節を使った細かい指先の動きから、指の腹でなぞる刺激へ。腹回りと肋骨を行き交うくすぐったさに、レイサが必死に笑いを堪えているのを楽しげに眺める。 「あひゃははは、いひゃははははは!? 」  指に込めた力や動かし方に変化は加えず、刺激を与える場所を変えるだけ。くすぐる場所という唯一の変化が、レイサにとって最大の問題であった。不規則な変化は予想も覚悟も許さず、レイサに『慣れ』を与えない。 「んぐっひゅふふふふ! うひひ、ぁひゃあははっ!! ひぃーっひひひひっ!」  笑いを堪らえようと必死に閉じられている口からは空気と共に笑い声が徐々に漏れ出し始めている。 「(そろそろ限界、かな……?)」  これまでの情事の経験でレイサの決壊が近いことを感じ取ったカズサは、おもむろに彼女の臍の入口に人差し指を伸ばす。 ―――カリッ  優しい一掻き。しかしこれまで触れていなかった場所への不意打ちは、彼女の我慢を崩すには十分な破壊力を持っていた。  突然の刺激にレイサの目が見開かれる。見下ろしているカズサから、彼女の優しげな薄紫の瞳がはっきりと確認できた。 「あひゃ、あははっ!? あははははははははははははははははっ!! あひゃああっははははははははは!! くすぐったい、くすぐったいですぅぁっはははははは!! がまんできませえぇっへっへっへっへっへっへ!!!」 「あーあ、笑っちゃった。それじゃあテルミットピンクがどこまで笑えるか、限界に挑戦してみよっか」  レイサの決壊に合わせ、指先でなぞる動きから明確にくすぐる動きへと変化する。脇腹を両手に挟み込み、優しく揉み込む。指の動きは緩やかだが、レイサが感じるくすぐったさは優しさとは無縁である。脇腹の刺激から逃れようと腰を引くと、柔らかなベッドは僅かに凹んで逃走の手助けをしてくれる。しかしすぐに心変わりを起こし、レイサの腰をカズサへと献上してしまう。 「うぎゅぅっふふふふふふふふふふふふふふ!? んあっははははははははははははははは!! にげられっ!? にげられましぇんぁぁっははははははははははははは!!? うひひひひひひひひひひひひひひひひひひっ!!!」  カズサの細くしなやかな指から継続して流し込まれるくすぐったさに、レイサは思わず彼女の手を掴んで止めようとする。 「おっ」  しかし、トリニティ自警団として鍛えられた鋼の意志が自らの腕を制止する。そんな様子に、カズサの口から驚きの混ざった音が漏れる。  このまま止めてしまえば情事は間違いなく中断されるし、最悪の場合は今回のホテルデートの即時終了すらありえる。自分が信頼している彼女がそんなことをするはずがないと断言はできるのだが、一度脳裏によぎってしまった嫌な未来から目を逸らすことがレイサにはできなかった。  レイサはそのまま両腕を頭上に戻し、カズサの指を受け入れる体勢を取る。 「うぐぅっふふふふ……っ! いひひひひひひひひひひっ!! あひゃっ!! んあははははははははははははははははっ!!」 「あれ、逃げなくて良いのテルミットピンク? くすぐったいの嫌なんじゃないの? やめる? こちょこちょ終わりにする?」 「いやじゃなぃぃひひひひひひひひひひ!! いやじゃないですからぁぁっはははははははははははははは!! あぎゃっ、あ゛ははははははははははははははは!? やだ、やああっははははははははははははははははははははははははっ!!」  嫌ではないと否定する最中に脇腹を強く揉みしだかれ、反射的に拒絶の言葉がレイサの口からこぼれる。そんなレイサの様子に、カズサは自身の口元に悪い笑みが浮かんでいることを自覚する。 「交互に言わないでよ。ほら、はっきりして。テルミットピンクさんはこちょこちょして欲しいんですかぁ?それともやめて欲しいんですかぁ?」 「やめにゃいでくださぁぁっはははははははははははははははははははは!!こちょこちょっこちょこちょしてくださいぃぃっひひひひひひひひひひひ!!きゃはははははははははははははははははははははははっ!!」 「…………っ」  煽るような言葉に対してストレートな懇願を返すレイサの姿に、カズサは縫い付けられたかのように視線を離すことができなかった。  紅潮した頬に潤んだ瞳。衣装の裾は捲れ、インナー越しでありながらも彼女の綺麗な腹部と臍がしっかりと視認できる。腋の下をくすぐりやすいようにと頭上に挙げられていた両腕は、既に額付近まで落ちてきている。それでも彼女は必死に腕を下ろさないようにと堪えている。  そんな淫靡で扇情的とも呼べる姿を前に、カズサは生唾を飲む。嗜虐心が膨れ上がり、急成長をしている。 「そんなにくすぐられるのが好きなんだ? 宇沢……テルミットピンクさんってもしかしてぇ……」  カズサはくすぐる手を止め、レイサの身体へしなだれるように体重を預けた。そのまま彼女の耳元へ顔を近づけると、普段からつけている香水とそれに混ざる微かな汗の匂いが鼻腔をくすぐる。 「れろ……っ」 「あひゃぁっ!!?」  耳介に舌を這わせ、わざと水音を響かせるようにしゃぶる。レイサの顔が羞恥とくすぐったさ、そして僅かな快感に震える様子を堪能し、舌を離して一言。 「変態さん、なのかなぁ?」 「…………ぃひっ!?」  淫靡な囁きから間髪入れずに耳に息を吹きかける。  レイサの背筋を走るゾクゾクとした快感に身体が震え、その快感に身を委ねようと目を閉じる。意識が外界から内側へと向けられ、明確な隙が生まれる。  カズサはその隙を見逃さず、両手を静かに腋の下へ侵入させる。 「……ぁ」  カズサの指先が腋の下に触れた瞬間にレイサの目が見開かれる。レイサの反応を待たずに指が素早く動き出した。  愛しい恋人の指から流し込まれた感覚にレイサの脳は正しく反応し、正しい出力をするべく信号を送り出す。  堪らえようとしたレイサの口が一瞬歪むが、抵抗虚しく抑えきれなかった笑い声が溢れ出る。 「あ゛あ゛ぁぁっはははははははははははははははははははははははっ!!!? ぅあ゛ひゃはははははははははははははははははははははっ!!くふひひひひひひひひひ!!わきっわきカリカリやっそれやだっくすぐったいですってばぁぁっははははははははははははははははははは!!!」 「ほんと……あんたの笑い声ってかわいいよね……」  彼女の決壊に満面の笑みを浮かべているカズサは楽しげに指先を動かしていく。親指を胸の付け根に置いて支えにし、人差し指の先端で腋の窪み周辺を優しく引っ掻く。残りの3本は肩甲骨周りで蠢き、種類の異なるくすぐったさを与えている。  くすぐったさから逃れようとして無意識で下がりそうになる両腕を、レイサは精神力で必死に抑える。くすぐったさで全身から力が抜け、笑い疲れて腹筋が痛む。そんな中でも腕に力を込め、挙げ続けている彼女の顔は、アルコールが入っているのではと思うほどに真っ赤になっていた。 「ほらほら、頑張って腕挙げないとこちょこちょ終わっちゃうよ?」 「んぎぃっひひひひひひひひ!? やだ、終わりはいやですっふふふふふふふふ!!あひゃははははは!!でもむりっわきのしたほんとによわいからぁっははははははははははははは!!べつのっちぎゃうところなりゃああっははははははははははははは!!」 「正義の魔法少女が敵にお願いするなんてみっともないんじゃない? そんなテルミットピンクさんにはお仕置きが必要だね~?」  カズサが鼻歌交じりに人差し指を離し、間髪入れずに親指を腋窩へと突き刺した。 「――――――!」  瞬間、レイサの身体がビクリと震え固まる。ほどなくして先程までよりも大きな笑いが飛び出た。 「んぎゃあああっははははははははははははははははは!!?や゛っきょうやまかじゅぅぁははははははははははははははははははははは!!だめっそれほんとにだめですぅぁっはははははははははははははは!!」 「あ、ツボ入っちゃった?」  そんな言葉と共に、レイサの反応を確認しながら親指をグリグリと動かして腋窩を抉る。  今日の情事で最大のくすぐったさを流し込まれ、遂にレイサの精神力も底を尽きた。腋の下への凌辱を阻止しようと腋を閉じるが、既に入り込んでいる指の動きを止めることはできない。 「ほらほら、頑張れテルミットピンク~。こちょこちょになんて負けるな~」 「むり゛っまけますッ!! くすぐったいんですぅっふふふふふふふふ!! あ゛ははははははははははははははははは!! いぎいいぃっひひひひひひひひひひひひひひひひひ!! だーっはっはっはっはっはっは!!」  だらしなく開いた口の端からは涎が垂れ、見開かれた目からは涙が止めどなく溢れてくる。  精神的拘束から解放されレイサは逃走が可能になっていた。しかし耐え難いくすぐったさは身体から力を奪い、実現性を奪っている。情事の最初から比べれば責めに使われている指の本数は5分の1になっているが、レイサが感じているくすぐったさは5倍どころでは済まなかった。  そしてホテルデート開始から30分が経過したタイミングで、遂にその時が訪れた。 「むりぃっひひひひひひひひひひひ!! だめですほんどにぃっひひひひひひ!! あひゃひゃひゃひゃ、ああぁつ!! もうげんかぃぁあ゛ははははははははははははははははははははははは!! あ゛あ゛っあひゃあああははははははははははははははははははははははは!!!」  一際大きい笑い声をあげ、レイサのヘイローがフッと消えた。カズサの手を挟んでいた腕からも力が抜け、ベッドに力なく落ちる。 「あ、気絶しちゃった? うざわ~?お~い」 「ひ、ひひ……っ。あひゃ、は……」  くすぐりの余韻が残っているのか口から小さな笑いが漏れ出てはいるが、カズサの呼びかけには反応しない。人差し指で頬をつつくが変わらずだ。  そんな彼女を見下ろしていたカズサはゆっくりと、静かにレイサの隣で横になる。特徴的な薄紫の髪に自分の指先を絡ませる。 「ほんっと……可愛いよね、宇沢は……」 目を閉じたままの彼女の頭を優しく撫でる。手のひらに触れる髪の毛の感触を楽しんでいると、足先から段々と睡魔が上がってくる。カズサは抵抗せずに、ゆっくりと目を閉じて身を委ねる。 「おやすみ、うざわ……」 ・・☆・・ 「ん……っ」  カズサの意識が覚醒し、ゆっくりと目を開ける。飛び込んでくる灯りの眩しさに数度しばたかせた。10秒も経たずに眩しさに慣れ、カズサは全裸のレイサが自分を見下ろしていることに気がついた。 「あれ、宇沢どうしたの……?」 「気分はどうですか、テルミットブラック?」 「テルミ……えっ!?」  自分へ投げかけられた馴染みのない単語に驚き自分の格好を確認する。レイサが身に着けていたものに近い、黒を基調とした魔法少女の衣装。 「さあ、尋問を始めましょう。あなた達のアジトはどこですか?」 「は!? そんなの知ってるわけ……」  恋人がハマっているアニメ、というレベルの知識しか持ち合わせていないカズサに答えられる質問ではなかった。そんな彼女の返答に、レイサは満面の笑みを浮かべる。 「知らないんですか? ……それでは仕方がありませんね!」  レイサの言葉にカズサの顔に安堵の色が浮かぶ。 「思い出したら言ってくださいね!」 「は……?」  事実上のギブアップを認めない宣言をカズサに突きつける。 「こちょこちょこちょ~!!」 「いひゃああああああああああああっ!?」  困惑するカズサの身体に、レイサの指が恐ろしいスピードで這い回る。カズサがくすぐった時は少しずつくすぐりを強めていったが、レイサは一切の容赦なく、最初からフルスロットルで指を動かしていた。 「――――――!!」  レイサの楽しげな笑い声と、カズサの悶え苦しむ笑い声。同じ笑い声でありながらも、種類の違うものがホテルの一室に響き渡った。

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