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「皆様、新年あけましておめでとうございます」 「あけましておめでとうございます」  右も左も分からない何もない真っ白な空間で、誰もいない同じ方向を向いて、丁寧に頭を下げて新年の挨拶を行う葵と碧。  浴衣のようなそれらしい服装もしておらず、一糸まとわぬ姿でその色気に満ちた光るような裸体を晒している。 「さて、新年最初の催し物ですが……私達には今回の起動前に少々の換装が施されています」 「換装? 一体何のことを言ってるの?」  相変わらずの、自分が機械であることを理解できないオリジナルである葵と、自分が機械であることを自覚しているコピーである碧のやり取り。  全裸であることに何の疑問も思わないその歪さが、奇妙な魅力を引き出す。 「まあ、葵はデフォルトの設定がこれだからいつも通りだけど、中身何度も弄くられてもこれなんだから、機械って面白いわよね。私もだけど」 「えっ、何? なんのことを言ってるの?」 「まあいいわ。それでは、これから皆様へ向けた餅つきを開始します。これから造られる餅は皆様へのお年玉となりますのでお楽しみに。さ、抱き合いましょ葵」 「ええ、いいわ」  戸惑いの様子から一転、碧に身体から人格データまで全権を握られている葵は、唐突な抱き合いのお願いにも何の疑問も抱かず、言われた通りにその身体を差し出した。  そして、優しく包み合うように互いを抱き寄せる。大きな乳房が潰れ合い、どこか鏡餅のような様相を思わせる。 「ん……ん……ぅ……ほら、葵……私のを……飲み込んで……」  碧はあらかじめ補充されていた調理済みのもち米を口移しで葵の口内へと移し、それを次々と咀嚼させずに飲み込ませていった。  この行為のために、二人の身体は起動する前にいつもより念入りに洗浄されており、虚ろな目で身体中を熱湯や洗浄液で道具のように扱われ、人工唾液を抜かれた後は代わりとして熱湯が補充されていた。 「む……ぅ……んん……おい……しい……あっ……ん……」  少しずつ碧の中にある炊かれたもち米を葵へと移し、それを胸部へと溜め込んでいく。  碧内部にあったそれを、舌を絡ませながら移動させ終えると、二人は口を離してとろんとした表情で見つめ合う。  直後、葵は顔を赤くして胸を揉みしだき、ふらふらと身体をくねらせ始めた。 「ふあ……あっ……あああっ……なに……これ……ぇ……私の胸がぁ……なんだか熱いの……何がおきてるの……?」  もち米を飲み込み終えた瞬間、人の姿には似つかわしくない駆動音と共に突然胸の中に襲ってきた、とても熱い感覚。  それは感情的な物や感覚的な物でもなく、確かに実際に感じる火傷するような温度だった。  現在の葵は、これまでとは大きく機構を作り変えられた胴体へと頭部を移し替えられており、人間のような乳房の奥、上半身の中には餅つき機が備え付けられていた。  もち米が投入されたことに伴い、その機能が自動的に作動。完成するまでの動作の間、葵の身体はおいしい餅を作る為に熱く保たれ、それを人格データは快感に感じるように設定されていた。 「あああっ! あっあっ……だめ……ぇ……あついい……」  熱い吐息を漏らしながら、身体を捩らせること数十分間。  溢れ出る快楽信号に満たされた葵は、胸を揉みしだきながら一旦の落ち着きを取り戻した。  体内で作られていた餅の製造作業が終わりを迎えたという合図である。 「お疲れ様葵。それじゃ、最後の工程を行うわね」 「はぁ……はぁ……ぁ……さい……ご……? それって……ああああっ! 胸が、むねがなにかあああああ……ああああっ」  生産工場の機器をいたわる様な言い方で葵に優しく語りかける碧。  直後、葵の乳房の内側に何か迫り出してくるような熱い感覚が湧き上がってきた。  身体の奥から何かが押し寄せてくるような、はっきりと感覚として形の感じられる何かが少しずつ外へと向かっていくような感覚。  葵は自身の胸を握り、人差し指で優しく乳首を穿っては擦る。そして次の瞬間、乳頭から母乳のような液体ではない、白く柔らかな固形物がにゅるりと湯気を上げながら押し出され始めた。  それは胴体で作られていたつきたての餅だった。 「あはああああっ! きもちいい……頭がへんに……あんっ……あああっ……」  一定の量まで空気に触れると、乳房の中で一旦裁断される。そして、それから少しの合間を置いて、再び排出が始められた。  碧はその餅を手に握り、形を整えて一つのよく見る姿の餅へと変えていった。 「私達アオイの乳房のように柔らかな餅。葵の身体の中で作られ、このようにその胸から出されているので、とってもおいしいですよ。どうぞみなさん、一度ご賞味ください」 「あはあっ! あんっ、あっ……あついい……焼けちゃうう! けどきもちいいのおお……」 「ふふっ、お金持ちの道楽みたいね」  乳首の作り物の肉が熱々の餅に触れ、刺激的な信号を全身に走らせる葵の様を笑顔で眺めながら、優しく組み込まれた手順で餅を捏ねていく碧。  どこにいるかもわからない自分達の顧客に向けて、碧は笑顔と挨拶を。葵はただ餅を製造する人型の機械として胸から餅を吐き出し続ける。  そして彼女達は、指定された量のそれを作り終えるその時まで、そのポジションを保ち続けた。  二人は人間ではなく、人間のために奉仕する機械人形。人間のように新年を自分達の行事として祝うこともなく、再び機能を止められていくのである。

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