性玩具の造り方 一話先行公開 (Pixiv Fanbox)
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2018-11-12 18:05:02
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2026-06
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日常の生活家電やPCや携帯端末のような機械製品が、月日を経るたびに性能が向上していくのと同様に、人体の一部を機械に置き換えるというサイボーグ技術も格段に進化を遂げた現代。
手足の補助や四肢を失った者への装着はもちろん、自分の脳にチップを埋め込み、自身の思考能力を向上させる目的や、自分の記憶を保存する為に外部機器との通信を可能にするための改造等、元々五体満足だったその身体の機能をさらに向上させて快適な人生を送るためにと、自らの身体の一部分を機械に改造するものも今では珍しく無くなっていた。
一般市民にまで普及しているサイボーグ技術。しかし当然、その一般人の手に届かない遙か先の技術も存在している。
それがどのように使われているかということまでは、知るものは少ない。
だが、そんな未来的技術に関して、一般人は時に被害者に、時にその恩恵を受ける側になったりと、知らぬ間にその技術の影響を大なり小なり享受していることもある。
「ハーイカンパーイ! 今日はもうバッチリ準備してきたし? いくら飲んでも大丈夫っしょ!」
とあるイタリアンバルにて、ワイン片手に上機嫌に振る舞う、二十代前半程のお姉さん的風貌を持つ、モデルのような体型と柔らかそうな大きな乳房を兼ね備えた、ダークブラウンのセミロングの髪型の沢辺里奈。
男性二人女性四人という構成の仲の良い集まりで、この日は楽しく飲み明かそうという、とりあえずエンジョイしていこうという、まさしく仲間内で騒ぐために皆で集まっていた。
大きな胸元がよく見えるような露出度の高い衣服に身を包み、その引き締まった魅力的な体型を惜しげもなく晒していく、
「ほらもう飲みなって! 飲み放題なんだし、ここで待ってちゃ損っしょ!」
やりすぎないようにと加減しながら、どんどんワインやカクテルを飲むように煽り立てる里奈とその仲間。
すっかりと出来上がってしまった六人は、一旦その飲む手を止めて、ピッツァやアンティパストを摘みながら酒の勢いに任せて思い思いの発言をぶちまけていった。
「いやもうほんとずっと思ってたけどさ、里奈ってマージ可愛くない? 美人じゃない? これ素顔でもいけるっしょ。まーじ羨ましいわー」
「そっちだって可愛いじゃん?身につけてる小物のセンスもいいしさー、それ私に分けてほしいってゆーか」
「あっ、じゃあこれ利害成立してるっぽくない? その顔頂戴よー!」
「もーすーぐ欲張るんだからー」
おいしい食事においしい酒。その二つを燃料に他愛ない会話が進んでいく。会話が進み、食が進み、口も頭もどんどん回っていく。
そうしてあっという間に楽しい時間は過ぎ、六人の集まりは解散の時間を迎えた。
「お疲れ様でしたー!!」
「それじゃあまたねー! 楽しかったよー!」
六人は店の外でそれぞれに別れ、各々の帰路についた。
すっかりとアルコールを取り入れ、頬を赤らめつつ出来上がっていた里奈は、途中まで同じ道を向かう友人と隣り合い絡みながら、自宅へ帰る為の道を進んでいた。
「ちょっとどうすんのよー! 道間違ってたりしちゃったりしてるー?」
「もう里奈、飲み過ぎだって……そんなに酔ってどうすんのよ」
「あっははは! 大丈夫大丈夫だって!」
「んもう……それじゃ、私はこっちだから。一人で大丈夫?」
「大丈夫よーぅ。子供じゃあるまいしぃ。あ、子供は酒飲めないわ!」
「ほんとに気をつけてね?」
「はーい!」
友人と別れ、一人で家まで帰る為の交通機関への道を歩く里奈。
やや千鳥足気味の足で進んでいると、いつの間にか人気の無い道へと入っていた。
進行方向としては、予定していた帰り道とは殆ど大差ないが、少し道を外れただけでその様相はがらりと変わる。
「あれ、こっちで合ってたかな」
自分の歩いていた道に不安と疑問が生まれた里奈は、壁を背にして手元の携帯端末からマップのアプリを開き、現在地の確認をしようとした。
「きゃっ! な、なに!? んん! んんーー!」
その時、里奈の身体が突然何者かの手によって強引に引っ張られ、口を抑えつけられた。
視点をその相手の方へ向けると、一人の金髪の無表情な女性がそこにいた。
酩酊し、そのような警戒を全くしていなかったというのもあって、里奈の身体は瞬く間に押さえつけられる。その力は明らかに人間のそれではなく、怪力によって無理矢理捻じ伏せられた。
何度か触れ合った肌も人肌にしては温かくなく、人間のそれにしては柔らかくとも微妙な違和感も覚える。
「た、たすけ……う……ぁ……」
なんとかその拘束を解こうと暴れてみるがまるで歯が立たず、押さえられた口の隙間をどうにか作って助けを叫ぼうにもすぐさま閉じ直される。そんな虚しい抵抗を続けていると、首筋に何か針のような物を刺された感触を確認した。
それからの意識は長くは保たず、里奈の身体からは力が抜けていき、意思もどんどん朧気になり始め、ついにはことりと意識を失ってしまった。
「原材料の捕獲完了。これより帰投します」
感情の無い冷たく無機質な女性の声でそこにはいない何者かに連絡する。相手側からの返答を待っているのか、その状態からぴくりとも動かなくなった。
その数分後、女性は再び動き出し、背負っていた巨大なバッグに里奈をてきぱきと手慣れた動作で詰め込む。
怪しまれない為のカモフラージュか、女性は周囲を確認すると、その場でジャージに着替え、一見するといかにも何かしらのスポーツが趣味であると判断されそうな姿へと変貌した。
一通りの作業を終えると、ずっと生気の無いようだった女性の瞳に光が灯り、まるで何事もなかったかのように人一人が詰め込まれたバックを肩にかけ、どこか遠くへと移動を開始した。
* * *
「んん……う……」
「RS03814が目覚めました」
「あら、意識レベルが低下したまま最終工程に進みたかったけど、まあいいわ」
突然何者かに襲われ、そのまま眠ってしまっていた里奈が目を覚ます。
あれだけ酔っ払ったのに二日酔いしているような感覚もなく、むしろ頭の中がすっきりしているようにも感じられる。
もしかしたらあれは夢だったのか、酔いすぎて夢と現実が曖昧になってたのだろうかと、そのような願望に近い予想を立てていたが、目を開けてその先に広がった光景に、それは打ち崩された。
「…………!! きゃああ――――」
「音量レベルを低下させました」
「よしよし、優秀ねあなたは」
「ありがとうございます」
里奈の視界に映ったのは、どのような用途に使うのかもよくわからない物々しい機器の数々。
その先に一つ、首の無い綺麗な女性の身体がまるでマネキンのように棒立ちしていた。
首の断面からは何本ものケーブルが伸びており、時折腕や足を小さく動いては、元の棒立ちへ戻るを繰り返す。
その異様さに思わず悲鳴を上げようとした里奈だったが、その声は突然かき消えたように出なくなってしまった。
いくら叫んでも口を動かしても、声が出てくる様子は全く無い。
「残念だけど、今はどんなに喋ろうとしても声は出ないわ」
日常の光景とは大きくかけ離れた、まるで別世界のような映画の世界ような現実感の無い景色。
戸惑いの色溢れる里奈の前に、一人の白衣の女性が姿を表した。
「あっ、このままじゃ話できないわね。音量上げて」
白衣の女性が再び意味の理解できない指示を伝えると、口をぱくぱくと動かし続けていた里奈の声が再び発され始めた。
「――――うなってんのよ! 身体も動かないし……あれ」
「改めて喋れるようになった気分はどう、沢辺里奈? それとも、RS03814?」
声が出ていないとわかってても、なぜか自分の身体が動かなくとも、とにかく反抗するために叫んでいた里奈。だが、突然その声が復活し思わず戸惑いを覚えてしまう。
どうしてこんな知りもしない、出会ったこともない女が自分の名前を知っているのかという疑問も抱くが、その後に口にしたRS03814という番号。
里奈はそんなもの一度も聞いたこともないしそのように呼ばれたこともない。しかし、なぜかそれ対して自分の根幹であるような親しみを、理解できないながらに抱いていた。
「い、一体何なのよあんた……」
「あなたが今知る必要は無いわ。だって、どうせそんなことどうでもよくなるもの」
「なによそれ……はぐらかしてんの!?」
得体の知れなさから湧き上がる恐怖を圧し殺すように、里奈は強気の口調で目の前の女性に問い詰める。
しかしそれに動じる気配もなく、むしろ嘲笑うかのような表情で目線を合わせてきた。
「ねえ里奈、今あなたがどうなってるのか知りたくない? 具体的には……どうして身体が動かないのかとか」
「ど、どういうこと……」
反抗心を剥き出しにしていた里奈の表情に、一気に陰りが見え始めた。
今の自分の身体には頭部の感覚以外のものがない。薄々勘づいてはいたが、その状態の自由を目の前の見知らぬ女性が握っているとすれば、生殺与奪権が奪われているも同然である。
里奈の声に震えが乗り始める。
「いいわそういう反応。顧客にはそういうのが好きなのもいるから、いい商品になるわね」
「商品って……」
不穏な単語が次々と二人の間に飛び出していく。
もしかしたら自分はどこかに売られてしまうのか、知らない誰かに慰み物にされてしまうのかと考えたくない推測が次々と浮かび上がる。
しかし、里奈の中に浮かび上がる予測された光景の数々は、次の瞬間に一気に否定されてしまう。
「ふふ、つまりはね、こういうことなのよ里奈。いいえ、RS03814」
「な、なにこれ……私が……頭……だけ……!?」
白衣の女性が楽しそうな笑顔を見せながら、小さな手鏡を里奈へと向けた。
そこに写し出されたのは、拘束や麻酔などという生易しいものではない。今の里奈は首の断面を底面として妙な機材に囲まれたテーブルの上に置かれ、手足も胴体も何もない状態で動いていた。
そんな非現実的な姿を見せられた里奈は、なぜ首だけで動けているのか、なぜ生きているのかという根本的な疑問よりも、純粋な恐怖が奥底から湧き出した。
「これが今のあなたの状態。生身の部分は一切無くなり、電力で動く老けることのない機械人形として生まれ変わったの」
「そんな……嘘よ……そんなわけ……」
「もっと言えば、さっき眼の前で動いてたあの身体。もうすぐ動作テストを終えるあなたの身体なのよ? あんなにエロい身体して、もう素晴らしいとしか言いようがないわ」
その言葉は、本当に純粋に褒めているのだろうが、今この瞬間の恐怖が交わった状況では褒めていると受け取れない。
徐々に里奈の表情が青ざめていった直後、白衣の女性がすっとその視界から抜けていく。
開けた視線の先には、先程自分の身体だと信じられないことを伝えられた首の無い肢体が姿を現した。
首の断面に何本ものケーブルが繋げられた身体は、張りのある大きな乳房を両手で鷲掴みにし、まるでノズルのような構造に作り変えられた乳首に指を入れ、母乳らしき液体を垂れ流しながらびくびくと気持ちよさそうに震えている。
「や、やめて! 私の身体で遊ばないで!」
にわかには目の前の身体が自分のものだとは信じられない。だが里奈は、本能的にそうなのではないかと感じ、叫ばずにはいられなかった。
「遊んでるわけではないわ? 立派な動作テストだもの。せっかくだから、近くまで移動させようかしら」
自慰行為という名の辱めを受け続ける眼の前の身体。
白衣の女性がその身体に近づくと、首の断面に繋げられたケーブルを一本ずつ取り外していく。
身体は未だ自分の胸を揉みしだくことを止めなかったが、最後の一本が抜き取られた瞬間、がくんとその姿勢のまま停止し、崩れ落ちかけた。
白衣の女性はその身体を片手で受け止め、ケーブルの代わりに小さな機器を取り付けた。
すると、力の抜けたようになった身体は再びひとりでに動き出し、首だけの里奈の方へとぎこちない動作で歩き始めた。
「まだテスト段階だから無線機能をちゃんと実装したわけじゃないけど、それでもこういう風に遠隔操作はできるのよ」
自慢げにその技術を語る白衣の女性。その横で、無線で操作された身体が里奈の目の前まで近づいた。
直後、里奈は口を呆然と開けたまま信じられないと言ったような顔で声を出した。
「本当に……本当に私の身体……」
間近でそれを見た瞬間、嘘としか思えなかったそれが事実であると信じざるを得なくなってしまった。
産毛一つないすべすべとした光沢のある肌、引き締まっていながらも人間らしさを残すようにほんの少しだけたるみを残した腹部、アンダーヘアまできっちりと処理された、嫌でも新品という言葉が似合う艶めいた女性器。
そしてその肉感的な太腿には、自分についてるものと位置も大きさも一致している一つの黒子がついていた。
俯瞰的に見ても、自分の身体と符号が一致する部分がいくつもあったが、はっきりと覚えている特徴を目撃したその時、信じたくない事実が確定した。
「そうよ。これが今のあなたの身体。ほら、無線操作だけでもこんなことができるのよ」
本来の持ち主の眼の前で、女性器を強調するように突き出して立つ身体をいやらしく触る白衣の女性。
首無しの身体はそれに呼応するように、膝を床について右手を女性器ユニットに挿入して自慰を始め、左手で綺麗に作り変えられたへその穴をほじくり始めた。
びくびくと感じているように震え、女性器ユニットからどくどくと人工愛液が溢れ出す。
「やめて! 私の身体で遊ばないで!」
まるでラブドールのようにもて遊ばれる自分の身体。
自分の意志でやっているわけでもないオナニーをまじまじと見せつけられ、里奈はそのあまりの恥ずかしさに泣き出しそうになっていた。
「そうね。ボディの調整も終わったし、そろそろ仕上げに入ろうかしら」
怪しげな笑みを浮かべ、最終段階への以降を宣言する白衣の女性。
すると、再び頭だけの里奈の側まで近づき、今にもキスしそうな程の距離まで顔を近づけた。
「さっきも言ったけど、あなたの身体にはもう生身の部分は無いわ。それで、今あなたの頭がどうなってるか。せっかくだから見せてあげる」
つい先程も口にしたことを確認するかのようにまた繰り返される。
なぜそんなことを、改めて知らしめるかのように言い出したのかと考えた次の瞬間、里奈の目の前には小さなハンドサイズのモニターが置かれる。
そこに映し出されたのは、今の里奈の後頭部の映像だった。
「え……あ……これ…………」
髪の毛の植え付けられたパネルが上下左右に開き、その中に収まった脳の形をした金属の塊が顔を出す。
そこには一片として肉の部分は無い。自分の記憶や思考、自我を司る器官はすっかりと、それを模したような機械へと丸々置き換わってしまっていた。
「細かい説明は省くけど、生体脳はこっちで材質置換を施して、丸々部品の一部として使わせてもらったわ。今あなたの意思も記憶も何もかも、外部から改変可能な一データとして組み込まれてる。あとはその人格をラブドールに相応しいモノにするだけ」
「や……やめて……おねがい……ラブドールになんてなりたくない……」
数十分間前であれば、強気に声を張って抵抗していたのかもしれない。
だが、散々自分の姿を見せつけられた今現在となっては、気丈に振る舞うような余裕すら生まれず、ただ涙声で懇願することしかできなかった。
「大丈夫よ。だんだんそんなこと思わなくなるから」
言っている意味が全く理解できない。全く知らない者から勝手に自分を作り変えられる恐怖。それが抜けることなどありえないと思っていた里奈、
しかし、その変化は少しずつ表れ始める。
「里奈、今の気分はどう? 怖い?」
「当たり前じゃない。すごく怖……」
怖い? 怖いって何なのかしら? 私は何に対して怖がっているの? 参照中…………ロボットへ作り変えられ、首と身体を分けられて、遊び道具のように扱われていたことが怖いと感じていたと推測。
何を考えていたのかしら。私はラブドールなのだから、所有者に玩具として扱われるのは幸せであり当然………………???
「ちょっと人格データが抵抗してるのかしら?」
まるで自分が誰かに使われる機械であることを肯定するような思考や、機械的な考察ををしていたことに驚きを隠せなかった里奈。
内心では勝手に自分の人格を弄り改変されていることが怖くて仕方なかったが。その感情は表情には出ておらず、里奈の顔はぽかんと口を開いたまま舌を出し、どこか遠くを見つめるような瞳で瞬きもせず、まさしくマネキンヘッドのような状態になっていた。
「ログはちゃんと残しておかないとね、改変時のリアルタイムの思考が好きな顧客もいるし」
「あああ……あぁ……あ゛ぁ……あああええあえあ……」
「あなたの名前は? 里奈? それともRS03814?」
私の名前は沢辺里奈、いいえ、RS03814と登録されてる。違う、私は沢辺里奈、沢辺里奈のはず、だけど現在はRS03814と登録されていて、沢辺里奈はそれ以前の以前の以前の以前の…………違う違う違います違います。否定否定、私は里奈、里奈です。里奈であるとされていましたが私は私は私は…………
「いいじゃない。もうそろそろ出来上がりそうね。RS03814、あなたは人間? それともラブドール?」
私のことをRS03814と呼んでくれるなんて、嬉しい……私は人間、人間でした。人間を原料に加工を施し製造されたラブドールで、ユーザーに気持ちよく使用してもらうための……私は人間で、人間で、沢辺里奈……でした。私はユーザーに購入していただき、ユーザーに使用していただくために造られました。私は、私は、私は、わた、し、は……人間で……はなく、ラブドールです。私がラブドールとして使っていただけることが一番の喜びで……す……
「こういう思考サンプルは大事にしなきゃね」
人間らしさを残していた里奈の思考が次々と塗り替えられ、人間に使われるための従順なラブドールのそれへと作り変えられていく。
狂いだしていた表情もだんだん落ち着きを取り戻し、なんの変哲もない無感情なものへと移り変わる。そこには既に焦りや恐怖などの感情はどこにもない。
そして、そっと里奈の瞳が閉じられたと同時に、白衣の女性は加工を施された電子頭脳に接続されたケーブルを全て引き抜き、毛髪の植え付けられたパネルを閉じた。
「さてと、起きてRS03814」
閉じた瞼を無理矢理開け、カメラアイを直接触れても痛がることもピクリとも反応しないことを確認し、白衣の女性はポケットから携帯端末を取り出し、ラブドールの遠隔操作を行うアプリを起動。
沢辺里奈改め、RS03814を起動させた。
「おはようございます。当機体は現在テストモードで起動しています」
先程までの怯えた顔も声も無く、淡々とシステムメッセージを口にするRS03814。
機械的な姿を晒した直後に、女性はアプリから弄られたばかりの人格データを起動した。
「おはよう。生まれ変わった気分はどう里奈?」
女性は敢えて、登録されたものとは違う過去の名前でその頭部を呼びつける。
「私の名前は里奈ではないわ。それは人間だった当時の名前で、今の私は……」
「ああ、そういうのはいいわ。型式番号じゃ面倒くさいし以前の名前で呼ぶから。じゃあ、ラブドールに生まれ変わって、今はどんな気分?」
「はい。早く誰かに購入されたくて仕方ありません。私の身体を使っていただいて、快楽信号を共有したいの」
もうそこには、自分は里奈だとずっと必死に抵抗していた面影はどこにもない。自分がラブドールであると弄くられ改変された自我をすっかりと受け入れてしまっていた。
その表情は求めるような欲しがりの笑顔に満ちており、首から下の無い状態のままで舌を出し、性玩具としての存在意義のままに快楽を求め始める。
「偉いわ。それでこそラブドールであり、私達の商品よ」
「ありがとうございます……」
「それじゃ、最終調整の後で繋げてあげるから、あとは売られるまで待っててね」
「はい、かしこまりましたぁ……」
最終調整という単語が、その電子頭脳に甘美に響き渡る。
早く商品として完成したい。誰かに仕えたい。誰かの性玩具として扱われたい。
人間だった頃の思考の残照はそこには見られず、友達との楽しい交友もそれまでの日々も、全て過去の記憶データの一部でしかない。
里奈はいつか人間に奉仕する道具として使われることへの喜びを抱きながら、そのままスリープモードへと入った。
* * *
最終調整を終えた里奈は、離れ離れになっていた頭部と胴体を繋げられ、ようやく人間の頃と同じような人らしい姿を取り戻した。
しかしその生物として動いていた時とは違い、産毛は愚か首から下の毛は全て処理され、人間のそれよりも艶めく張りのある肌と、より大きく感触良く作られた乳房が備え付けられた。
人間だった時と魅力溢れる容姿を持っていたが、その素材を活かしつつ性欲を煽り立てるように改造を施されたその身体は、まさに高級品と言えるものだぅた。
「さ、あなたはようやく商品となる時が来たのよ。今の気持ちはどう?」
「はい、とても嬉しくて仕方ありません。この身体を早く誰かに使っていただきたいの」
道具としての思考に改竄された里奈の人格は、自分の商品としての幸せを求めるようになっていた。
当然それは、自律的な思考でそう思うように組み込まれただけである。
「ふふ、それじゃ、購入者が訪れるその時までショーケースの中で待機してもらうから、あつか買われるといいわね」
「はい、このような素晴らしい身体にしていただいてありがとうございます」
里奈は人格データの底からのお礼を言うと、予めプログラムされた通りの道を進み、周囲をガラス張りのショーウインドウで囲われた、落ち着いた暗い雰囲気の巨大な一室、その裏口から直接繋がっている巨大ガラスケースの中へと入っていった。
ガラス窓の向こうには、何体もの女性の姿が見られる。よく見ると、そのどれもが首筋とアナルにケーブルが挿し込まれており、一体一体ポーズも違っている。
里奈はその中の空いた一箇所へと移動し、組み込まれた手順通りに自ら首筋とアナルに床から伸びるケーブルを挿し込んでいった。
「ああっ、あっ……あんっ……」
その手の趣味を持つ購入者相手に改良を施す以外の場合は、女性器ユニットに組み込まれた尿道からの冷却液排出以外で排泄をすることが一切無くなった、里奈含めたこの場所で展示されているラブドール達。
実質的に挿入されたモノを受け入れる性器と化したアナルに挿し込まれたケーブルには、人工愛液と全く同じ粘液を微量排出しながら震えるバイブ機能が備え付けられている。
里奈はプログラムされた通りの、ガラスの向こうの顧客を誘惑するようなポーズを取り、挿入されたケーブルをその肉壁で咥え、常に快楽信号を受信しながら客に買われるその時を待ち続けた。
ある一体は両胸を握り、ある一体は女性器ユニットに指を挿入したまま。それぞれに違うポーズを瞬きもせず姿勢を崩すこともなく、時間が止まったように動かないラブドール達。
しかしその中で、女性器ユニットの割れ目のみが、快楽信号を処理しつつひくひくと何かを求めるように動き続けていた。
展示されたマネキンのように微動だにせず、かつ一枚も服を、下着すら着させられないラブドール達。
里奈がケースへと入り二時間ほど経ったその時、ガラスの向こうに見える小さな入口が開く音が聞こえた。
「いらっしゃいませお客様」
店員役を担うスーツ姿のラブドールの一言を合図に、展示されたラブドールのカメラアイが激しく動作し始める。
それぞれの位置から客の特徴を取り込み、いつ自分に興味を持たれてもいいように、客向けのアピールプログラムを起動し始める。
「すごいな……こんな人間そっくりなの作られてるのか」
その店舗に現れたのは、スーツ姿の若い男性。
入店して早々ガラス越しの人形を見渡し、その人間との遜色の無いクオリティに驚愕する。
映像や画像の中で見たような色気溢れる人間の女体が、現実に性を煽るようなポーズで止まって存在している。
さらにそれらは、購入してしまえば自分の物になる。そんな夢のような店で、男性はまじまじとラブドール達の姿を品定めした。
「こちらの商品はいかがでしょうか? 締まりの良い素体の女性器を元に、素材を活かしたままその感触と耐久性を向上させた極上の女性器ユニットを実装しております」
「当機体の乳房は、その大きさをそのままにユーザー専用のミルクサーバー及びジュースサーバーとして使用できます。なお、当機体の乳房はニプルファックの用途を……」
「私は素体のバランスの取れたボディラインを極力加工せず、他商品より元々の人間らしさにこだわった高級ラブドールとなっております。実装されたスペックは……」
ラブドール達は、客の視界に自分が入ると同時に、各々にポーズを取りながら売り文句を次々と飛ばしていく。
自分が以前は人間だったかなど関係無い。むしろそれを品質の裏付けとし、女性器を指で拡げたり、大きな胸を強調するようなポーズや、艶めいたボディを隠さず晒したりと、ガラス越しの人間の客に使ってもらいたいとばかりに、男性客が目の前を通るたびに説明に乗せた誘惑を向けた。
「当機体は柔らかく大きな乳房を持っていた素体の魅力をさらに引き上げ、美しく扇情的なボディへと改良を施した、加工されたばかりの……」
里奈も同様に、自分の製品としてのアピールを、右乳首に指を入れて揉みしだきながら弄くりつつ、作られて間もないという部分を強調して女性器を大きく広げてみせた。
改造される前であれば口にした一字一句や自分の身体を商品のように扱う真似はしなかっただろう。
だが、改造された人格データはその挙動一つ一つに得も言われぬ快感を覚える。
お客様に私の身体を見てほしい。早くお客様に使っていただきたい。この完璧に作り変えられたボディを以ってお客様を気持ちよくしたい。
情欲のみで動く人格データが、少しでも誘惑するように身体を操作していた。
「よし。この娘にしよう」
じっくりと品定めしていた男性が、そのうち一体のラブドールを指差す。
その瞬間、指定された一体以外の機体の動作が一斉に停止し、元のポーズへと戻っていく。
そして、選ばれた一体は満面の笑みをガラス越しに向け、両手を前に重ねて置き、深々と一礼をした。
「こちら、YR02721・百合でよろしいですか?」
「ああ、この娘が気に入ったよ」
「かしこまりました。このまま連れていきますか? それとも梱包して自宅へと配達致しますか?」
「配達で頼む」
「かしこまりました。では、記入の準備を行いますので少々お待ち下さい」
店員役は購入御礼と深々と頭を下げると、選択された配達方式の準備を行う為に、一度店舗内から離れスタッフルームへと向かう、
同時に、購入された百合は自分のことを買っていただいたというラブドールとしてはこの上ない喜びを人格データに感じながら、アナルに挿入されたケーブルと首筋の充電コードを取り外し、同様に店の裏へと入っていった。
店員役と男性客が購入手続きを済ませているその間も、未だ買われないままのラブドール達は、先程までの熱烈なアピールの様子から一転、扇情的なポーズのまま剥製のように動かなくなり、また誰かに購入してもらえるその時を待ち続けた。
* * *
閉店時間が訪れると、ラブドール達は一斉にポーズと解き、てきぱきと正確な動作で接続されたケーブルを全て取り外し、一歩一歩一定の感覚で店舗裏へと戻っていった。
ぞろぞろと全裸の魅力的な女性が集まっていく中、この日購入が決定した百合は、他のラブドールスタッフの協力の元、電源を切られた状態での梱包作業を進められていた。
頭部、胴体、四肢、女性器ユニットを別々に取り外され、口内やぽっかりと空いた股間の穴に緩衝材が詰め込まれていく。
元々は人間でありながら、その扱いは物そのもの。その姿を無表情で見つめるラブドール達は何も思うこともないどころか、買っていただいた購入者のために梱包されているというその姿がとても羨ましく思っていた。
(羨ましい……早く私も誰かに買っていただきたい……早く購入者のためにラブドールとして稼働したいわ……)
無表情の奥で陰部が疼く。その思考には、かつての友達と談笑し、酒を飲み、食事をしながら交流を楽しんでいたようかつての感情は残されていない。
今の里奈の人格データは快楽信号一色。改造される前のような状態にもエミュレートとして再現することはできるが、それはあくまでオプションとしての機能であり、人間だった頃の自分は過去のものとし、現在の淫乱さが今の里奈のスタンダード。
里奈含めた十数体の未だ売却されていないラブドールは、在庫として保管されるためにそれぞれ空間に余裕のある一体分の格納カプセルへと入っていった。
「次回の商品展示及びクオリティ保持の為、機体の洗浄を開始します」
首筋にカプセル内から伸びるケーブルが接続されると、ふっと表情が無くなり、感情の無いシステムメッセージが発される。
直後、里奈の四肢と子宮ユニット付きの女性器ユニットが取り外され、開放された腹部から人工愛液のタンクが取り外される。
達磨姿のオナホールのような姿となった里奈の股間にぽっかり空いた穴にホースが挿入される。
「あああっ! あっ、あんっ、ああっ! きもち……いい……あはあっ、あんっ!」
勢いよく放出された洗浄液が、金属の部品で組み立てられた身体を洗い出す。
人間であれば溺れてしまうような行為でも苦しむことは一切無く、むしろ快感としてびくびくと全身を震わせながら受け入れる里奈。
口内や鼻、眼から洗浄液が溢れ、涙や唾液のように垂れ流されるが、それに対してリアクションを取ることもなく、喘ぎながらだらだらとこぼし続ける。
過度な快楽信号による反応か、外された肩や股関節の断面からうぃんうぃんと駆動音のような無機質な音を鳴らしながらうねうねと動いた。
体内を弄られるような気持ちよさに、ピンク色の乳首がぷっくりと固く勃ち上がる。内部で人工乳液を放出するような動作を行っているのか、乳首がぴくぴくと動くその一方で、大きな乳房の向こうから小さな駆動音が聞こえてくる。
「ああっ、あっあっあっ、あんっ……もっと、もっと……して……ぇ……身体のなかぁ……あん……っ……」
放出が止まり、身体中の穴という穴から垂れる洗浄液の排出が収まっていく。それに連動し、機体内から全身を侵される快感が少しずつ小さくなっていった。
里奈の人格データがそれでは物足りないと、カプセル内で懇願するような甘え声で洗浄液の再放出を求める。
「気持ちよすぎて、おかしくなりそう……あはっ……もっと、もっと欲し……人格データが停止されました。命令を受信。これより簡易メンテナンスの後、スリープモードに入ります」
人間らしく頬を赤らめ、蕩けるような表情を誰もいないカプセル内で見せていたその時、人格データが停止させられ、基礎人格からのメッセージが無表情な口から発された。
それまで色っぽく喘ぎ声を上げていた声から一転、冷淡で感情の無い声が響き渡る。
しかし、快楽信号の処理が完全に終了していなかったのか、里奈の胴体は規則的にびくんびくんと震える、乳首は小さくぴくぴくと動き、カメラアイは小刻みに揺れながら、股間の穴からは小さな駆動音が絶え間なく鳴らされていた。
その身体の隣で、取り外された女性器ユニットと子宮ユニットが、洗浄液で濡らされたハンディモップのような機器で前後に激しく動かしながら洗浄されていった。
原料である里奈は処女であり、そのような行為は愚か、このような棒状の物を激しく突き入れるような自慰行為を行ったこともない。
そんな里奈の秘部が取り外し可能になり、更には生命の象徴でもある子宮も性玩具として扱われる。
人間への冒涜と言っても過言ではないが、人格そのものに直接手を加えられた里奈は、それがとても嬉しく感じるように作り変えられた。
機械的というイメージの似合う基礎人格で稼働している現在は、何に対しても淡々と反応するのみ。当然自分の身体の一部への扱いなど当然のように受け入れる。
「簡易メンテナンスが終了しました。スリープモードに入ります。私の全てはお客様のためにあります」
製品管理のためのシステムチェックやパーツ確認を終えると、里奈はその猟奇的な姿のまま設定されたモットーを里奈の声で口にし、ゆっくりと目を閉じて待機状態へと移行した。
こうして、他のラブドール達も同じ手順で細かなチェックを行われた後でスリープモードに入り、次の展示時間、またはネットから購入された出荷されるまでの間、冷たいカプセルの中でずっと動かないまま待ち続ける。
人間の女性から改造され、作り変えられたラブドール達。人権を踏みにじるような行為をされようとも、そう設定されている限り、それが機械人形達の幸せなのである。