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 現代よりもやや大きく離れた未来の時代。  時代が進むごとに様々なテクノロジーが発展、進化を遂げ、新たな世界が一般の人々のもとへと広がっていき、人間社会の様子もそれと同時に様変わりしていった。  特に大きく変わったのは、それまでの人間の都市の中を歩くのは生身の人間のみだったが、その中にどこから見ても人間にしか見えない機械が混じるようになったことである。それこそが、他でもないアンドロイドである。  かつては富裕層または大企業のみ、それから高額ながらも専門店や家電量販店で販売され、いつしか長い時が経ち、中には自律稼働しまるで人間とほぼ変わらない一般市民として社会で暮らす機体が増加していった。  身体の各部に入ったとても薄い分割線や、首筋や背中に存在する皮膚カバーなど、人間には存在しない機能や価値観など、はっきりとした違いはあるものの、普通に接するとまるで人間と区別がつかないような挙動をする。  今だ道具や備品として使用されるのは当たり前であり、廃棄場に大量に棄てられたりしながらも、そんな独立したアンドロイドが人間と共に暮らすのは、専用のアイテムが販売されるほどに標準的なことになっていた。  これは、そんな時代のある一人暮らしの女性型アンドロイドが、新たに手に入れたアイテムと共に快楽を愉しみ、新たな機体と共に色んなことをする話である。 * * *   とある郊外に建造されたマンション。一部屋一部屋が比較的広々として自由がある、人間の基準でもかなり良い部屋に、ある一人のアンドロイドが住んでいた。 「もうそろそろかな……あれ買うの目指して働いてたんだから、早く着いてもらわないと……!」  彼女の名前は須藤優佳。人間社会の住人として一人暮らしをしている自律稼働型の女性型アンドロイドである。  製造されてから7年、外見年齢は20代中頃。  艷やかで美しく、いつまでも触っていたくなるような黒のセミロングヘアーに、想定された外見年齢に見合うような、色気のあるまさしく理想の大人のお姉さん的な美貌。  身長は女性の中ではやや高めに造られており、明るい色合いの部屋着の下からでもはっきりと主張している両乳房は、素肌が出ていなくてもハリツヤがとても感じられる程に突き出ておりボリュームがある。  ボディラインもずっと見ていたくなる程に線が綺麗で、ひとたびあるけばどんな服装でもランウェイを歩くモデルが着ているかのような美麗な体型を持っていた。  そんな彼女は現在、ある会社で働きながら生活をしている。  一般的な人間と変わらないような生活を過ごしているが、そんな彼女は、あまり人には言えない、むしろ同じアンドロイド相手にもあまり言えないような趣味を持っていた。  それを満たす為の商品を、彼女はずっと溜め込んでいた貯金を使ってついに購入。この休日の昼前、それが届く時をずっと待ち侘びていたのだった。 「はあ……まだかしら……もうずっと我慢してきたし、無駄にどこかに行って修理してもらう必要も無くなるんだから……」    期待に胸膨らませ、部屋着の上から自分の右乳を軽く触れながら、悩ましげに身体をくねらせる優佳。  今にも自慰を始めてしまいそうな雰囲気を醸し出していたその時、彼女の部屋に待望のチャイムが鳴った。 「来た!? やっときたぁぁぁ……」  設定年齢よりも若い、最初から大人の女性として造られた彼女の見せる存在しない少女の頃のような明るい表情を出しながら、すぐさまインターホンで玄関先の人物を確認する。  そこには、複数人の配達員と、巨大なダンボール箱が置かれていた。 「間違いないわ、やっときたんだ……ずっとこの時を待ってたのよ!」  優佳は今、まるで製造されてから今までで一番の幸せを噛み締めているような気持ちになっていた。  今にもここで踊りたくなるような気分だが、配達員を放置し続けてはならないと思考しつつ、すぐに玄関に向かった。  そして、自分と同じ女性型アンドロイドの配達員に、いかにも重そうな箱を玄関の上に置いてもらうと、深々とプログラムされた角度の礼をして、頑張って運んできた機体達に感謝した。 「ありがとうございました………………はぁぁぁ……ついに来たのね……もうこれ見つけてからずっと買いたかったのよぉぉぉ…………」  玄関が閉じられ、外界と隔絶した瞬間、優佳はダンボール箱に頬擦りし、べたべたと触り始めた。  まるで財宝が隠された宝箱を見つけたかのように、まだ中身を開けていないにも関わらず抱き締めてしばらく余韻に浸っているうちに、ようやく正気に戻る。 「あ、こんなことずっとしてても意味ないか……早く持っていかないと」  ずっと欲しかったものが手に入った喜びに浸りすぎて、思わず擬似人格が喜の反応一色になる程の嬉しさだったが、流石にこのまま浸り続けるのもよくないと思考し、ダンボール箱を運び始める。 「おっも……やっぱり部屋に持っていってもらった方が良かったかしら……いやいや、さすがにあの部屋は見せらんないか……」          自分と同じアンドロイドが複数人動いてようやく運び出せた程の重さ。人間以上の出力を持っているとはいえ、押して運ぶのにも苦労する重量を持っていた。  優佳は少しずつ、少しずつ運んでいき、ある部屋の中へと移動させた。  そこは、彼女個人の部屋だが、中には無数のアダルトグッズや、女性型アンドロイドのパーツの一部など、非常にピンク色な雰囲気の内装となっていた。  その一角に、やや不自然に空いた広めのスペースが存在するが、それはこの荷物を設置するために彼女があらかじめ作っておいたスペースである。  優佳は自宅に二つの個人部屋を設けており、一つはよくある寝室や作業部屋の役目を持つ普通の個室。そしてもう一つが、この趣味全開で人には見せられない部屋となっている。  やっとの思いで運び終え、優佳は早速その荷物を開くと、巨大な機器と購入者本人が接続していく無数のパーツが梱包されていた。 「さーて、ここからどれだけ時間がかかるやら……」   非常に大きな機器であるだけに、かかる作業も途方も無いものだが、彼女にとってはなんでもないもの。  紙の説明書が封入されているが、優佳はその中に入っているコードを読み込み、その機器を取り扱う会社のサイトへアクセス。電子説明書をダウンロードし、そこから組み立てを開始した。 「……………………やったああああ完成!! ついに私のところにも来たわ!! 自動修復機!!」  機械だからこそできる集中力によって、正確な手捌きと電子頭脳に入れた説明書を読み込みながらてきぱきと機器を組み上げていく。  そして、ついにそれは完成した。優佳が購入した機器、それはアンドロイド専用の自動修復機だった。 「これで何度もメンテナンスセンターへ行かずに済むぅぅ……いちいち擬似人格のデバッグしろだとか改善しろとか小言言われなくて済むのよね……」  自身に使用されている部品やパーツをストックとしてセットしておくことで、自身が何かしらの破損によって機能停止したり、動作不能になり家内で動けなくなっても、登録された機体から発信された信号を受け取り、付属の小型移動機が登録者を運び出す。  それから、修復機の台の上に乗せられ、接続されたロボットアームによって機体の修復が行われる。  ウィルスなどのソフトウェア系の問題にも対処可能であり、場合によってはメンテナンスセンターに向かわなければならないような事態でも、これさえあれば自宅内で解決できるようになるという、アンドロイドにとって非常に便利な道具であった。  だがその分かなり値が張る為、すぐに買えるようなものではない。それ故に、優佳はこの自動修復機を手に入れる為、ずっと仕事を頑張り続けてきたのであった。 「じゃあ早速試してみようかしら。ふふ、この為にたくさん買い溜めしてきたんだものね」  組み立てが完了し、上機嫌になった優佳は、早速自動修復機のセットアップを開始する。  首筋の皮膚カバーを開けて、接続口の一つに自前のケーブルを接続し、もう一方を自動修復機側に繋げると、彼女の表情が消失し動かなくなった。 「新しいデバイスが接続されました。ソフトウェアをインストールしています…………インストールが完了しました。新しいデバイスが登録されました…………」  それまでのウキウキとした、大人の女性ながらも可愛らしくはしゃいでいる様子から一転し、まるで音声案内のような抑揚のはっきりとした感情のない喋りへと切り替わる優佳。  口は一つも動かず、喉奥のスピーカーだけでシステムメッセージを淡々と喋り、それまで感じられた人間らしさが消失し機械的な面が露出していた。  機器との接続が完了すると、そこから電子頭脳内で様々な登録を進めていく。  アンドロイドとしての製造番号、登録名、自身の構造図、全データのバックアップ、無線接続、ウィルス対策ソフトのセットアップなど、デスクトップ端末を使用する時のような操作を次々とスムーズにこなす。  電子データ上ではそれらの操作がきちんと行われているが、現実世界ではただ一人の女性型アンドロイドがずっとその場で硬直したまま、微細な動作音のみを鳴らしており、まるで人の息吹を感じない光景となっていた。 「………………これで設定上の準備は完了っと。あとは私のスペアパーツや部品をセットして……」  一通りのセットアップが完了し、無表情からいきなり元の柔らかな表情を取り戻し立ち上がる優佳。  この時点で、室内では自動修復機との無線接続は行われており、リアルタイムで彼女の内部データのバックアップが取得され続けている。  最後の準備として、優佳は自身に使用されている細かな部品や、眼球や手足、下半身などの外見パーツ、電子頭脳や金属骨格などの内部パーツ、人工皮膚の替えや修復剤を大量にセット。どこが欠けても困らないようにと以前から溜め込んでいたスペアを投入した。 「これで全部終わったーー!! 自動修復機の準備完了ーー!! あーー長かったぁ……」  こうして、念願の自動修復機が、真に彼女のモノになった。  どれだけ壊れても、これがあれば勝手に修理してくれる。アンドロイドからすれば念願の便利アイテムである。  だが、彼女の真の目的はそれではない。己の欲望を満たし、それを自由に行えるようにする為の道具として欲していたのだった。  全ての作業を終えた解放感から、笑顔で背伸びをした直後、彼女はおもむろに部屋着を脱ぎ捨て、一糸まとわぬ姿へと変わった。  衣服や下着を失っても乳房の突き出したハリは失われず、ピンク色の乳首が艶めいている。  ムダ毛やシミひとつない人工皮膚に覆われた肢体は、造形美と色気の両方を持ち合わせており、彼女のうっすらと周囲に分割線の走っている女性器ユニットは、既に興奮しているのかわずかにじんわりと濡れていた。 「さーてと、やっと煩わしいとか考えずに出来るのね……何度もメンテナンスセンターに発信することもなく……ふふ……」  そう言うと、優佳は自動修復機から少しだけ距離を取り、いつでも回収して修復できるようにとお膳立てをした。  そして、電子頭脳内である設定を適用した後で、両手指を鳩尾の下辺りに置き、人工皮膚がへこむ程に指を押し付けたその直後、彼女は突然腕の出力を上昇させ、自ら人工皮膚を突き破った。 「はあんっ! あっ! あ、ぁ……やっぱ……り……この瞬間が……あっ……いいわぁ…………始まったって感じが……あんっ!」  室内に樹脂製の皮膚が破れる音が鳴り、電子音声の嬌声が被さるように発される。  優佳の電子頭脳には快楽信号がほとばしり、それをさらに求めるように穴を拡げ、ブチブチと音を立てて自らの中身を曝け出した。  白い柔肌の下から露わになった、金属骨格と電子部品の集合体。優佳はさらにその中へ右手を突っ込み、胴体の方へと入れていく。  同時に、同じ穴から左手を下半身側の方へ滑り込ませ、股間ではなく身体の中の方から、女性器ユニットの最奥に備わった子宮ユニットと、膣内を形成する肉筒を握った。 「は、あっ……ぁぁ……久しぶり……ね……この感覚……あんっ……普通に……自慰行為するだけじゃ……物足りないんだもの……」  胸の奥から鳴る、かちゃかちゃという内部機構に触れる無機質で硬質的な音と、下腹部の人工皮膚が腕と手の甲の形に盛り上がる姿が、人間ではありえない不自然さを醸し出している。  まるで前戯をするようにしばらく身体の中から己を愛撫し続けた後、彼女はいきなり胸部内を掻き回し始め、さらに子宮ユニットを握り締めた。 「ああああああっっっ! あ、あ、あっ! わ、私の、わ、私の中が、あっ! あんっ! は、破損し、筐体内に破損を確認。修復を推奨します。あっ! あ、あ、はあんっ! あ、あ、あっ! こ、これよ、これぇ……ああっ! これを、も、もも、求めてた、たた、ああっ!! 筐体内の破損を確認」  身体の中から何かが破損する音が鳴る度、優佳は喘ぎ声を上げ、背中を仰け反らせて人工膣液を垂れ流した。  途中、嬌声の間にシステムメッセージが割り込み、いきなり動かなくなったりと不自然な挙動を起こすが、すぐにまた蕩けた表情を晒し、再び奇妙な自慰行為を再開した。  彼女がこのような自損行為を始める前に起動したプログラム。それは、様々な要因で発生した破損やウィルスなどにより生じたエラーを快楽信号に変換し、性的快感として処理するというものだった。  それにより、己の擬似人格や記憶データなどのファイルが破損したり、プログラムに異常が発生したり、自身の身体が壊れても、それらが全て痛みなどではなく性感として処理されるようになる。  優佳は以前から、この自損行為による自慰にハマっており、それが原因で、度々メンテナンスセンターの世話になっていた。  その度「一度擬似人格を調整してみたらいかがですか? このまま何度も破損していてはスクラップになってしまいますよ?」や「私達のようなアンドロイドは、性器ユニットと弄ることで充分な快楽信号が得られるんですから、抑えたほうが良いのでは?」などと忠告をされていたが、彼女はその度に直すんだからと思考し、懲りずにいた。  我慢したくないしすぐに直したいし、何度もメンテナンスセンターのお世話にはなりたくない。それらの要望を込みで演算を続けた結果、自動修復機を購入するという結論に至ったのだった。 「あっ! あっ! 警告、バッテリーの接続が不安定です。原因を取り除、ああっ! いてください。あ、あ、あっ! ま、まだ、気持ちいい……あんっ! 破損を確認、確に、ああっ! ま、また、イ、イく、ああっ!!」  自損行為はエスカレートし、胸部内にセットされているバッテリーを鷲掴みにし、今にも外れてしまいそうな程に右手を激しく動かしながら、まるで子宮ユニットをゴムボールを扱うかのように握り潰していく。  刺激や損傷がそのまま性感になる。彼女の電子頭脳は、多大な快楽信号によって動作が遅くなり発熱しながらも、しっかりと処理を続けていた。 「あんっ! あんっ! あ、あ、き、きもち、あっ! あ、あ! ああっ!! こ、これよ、これが、も、もう気兼ねなくししし、した、したか、したかったのよ! あ、あ、ああっ! ああっ! イ、イkkkk──────」  喘ぎ声の中で、彼女の喋りに異常が生じ始める。  音声が不自然に連続し、まるで音飛びしたかのようになるが、それに比例するように快楽から来る卑猥で本能的な挙動が増加した。  乳首を固くし、両乳房が跳ね、背中を仰け反らせながら全身を痙攣させる優佳。  下腹部の人工皮膚の下では、握っている子宮ユニットも密かにぶるぶるとバイブのように震えていた。  そして、快楽信号が絶頂の基準値まで達した瞬間、彼女は快感の頂点に達した声を上げ、人工膣液の潮を噴き出した。  しかしその最中、彼女の挙動は突如停止し、達した声も全て発し切る前に途切れてしまった。  優佳の顔は、恍惚に染まった表情で固まり、姿勢もまるでブリッジの形になる最中のような背中を仰け反らせた形で止まっている。  それまで蠢くように動いていた女性器ユニットも動作を停止し、床には人工膣液の水溜りが生まれていた。  彼女は絶頂に達したその瞬間、胸部内のバッテリーとの接続を切らしてしまい、動力源を失った。  バッテリーを失った機械は当然動くこともできない。今の優佳は、ただ美女の形をしただけの、人間のフリもできない機械人形と化していた。  すると、快感に貫かれている最中に彼女が機能停止して間もなく、自動修復機は登録された機体が停止したことを検知し、名に違わず自動で動き始めた。  付属の小型移動機が、停止した優佳のところへ移動し、彼女の姿を確認する。  付属のアームで彼女の首を掴むと、引きずるようにして本体の方へと運んでいった。  修復機の周囲、一定範囲内まで運ぶと、ロボットアームが優佳の首や腰を掴み、ゆっくりと台の上へと動かしていく。  工場製品のように持ち上げられている間、彼女の長髪は空中で揺れ動き、股間からはわずかに愛液のしずくが落下していた。  修復台の上に乗せられ、少しだけ上半身が浮いているように位置をキープしている間に、首筋の皮膚カバーを開けてケーブルを接続。そのままゆっくりと台の上に置き、修復機側からの信号を送信された瞬間、優佳の硬直していたポーズが一気に解けてぐったりとした姿勢になり、性楽に染まっていた表情も消失し、ただの無表情へと切り替わった。  最後のポーズで固定されていた関節のロックが解除され、ラブドールからだらんと糸の切れた人形のようになった優佳。  その後、修復機側に機能停止の原因を解析され、機体の破損状況が確認される。  胸部内がかちゃかちゃ鳴らされたが、破損している箇所は無いに等しく、むしろそれによって彼女の右手指の人工皮膚に傷がついていた。  女性器ユニット側も、ひたすら強い刺激が与えられ続けただけで破損の様子はなく、今回の損傷はバッテリーが外れたことと各部人工皮膚の破損のみだと診断された。  修復機側は、すぐに修復作業へ取り掛かる。  まず、ずっと体内に突っ込まれたままの両手をそれぞれ引っ張り出す。子宮ユニットとバッテリーが先程まで掴まれたままだったが、関節部のロックが解除されたことでするりと手放された。  それに代わって、ロボットアームが胴体内へと侵入し、精細な動作で取り外されたバッテリーの再接続を進めていく。自らの手で強引に外された動力源は、精細かつ正確な動作で元の位置と状態に戻され、いつでも再起動可能な状態となった。  だが、それだけではまだ修復は終わっていない。体内から出たロボットアームと共に、今度は人工皮膚の修復剤を用意された状態で、それぞれ左右に引き裂かれた鳩尾下の皮膚をくっつけ合わせた。  当然、乱雑に裂けた断面はまともにくっつくことはないが、ロボットアームのうち一機がその接合部に熱を当てて少しずつ融かし、接着させていった。  部屋の中には、焼けた樹脂のニオイが漂うが、それを嗅ぐ人間の存在はない。  自ら引き裂いた腹部の皮膚は再びくっついたが、その方法上どうしても形はいびつになり、ところどころに焦げの跡も見られる。  そこから、修復機側は最後の作業として、接合部の切り取りと削り取りを行い、細かく焦げの部分も排除していった。  まるで長年培った職人のような正確な動作で、人工皮膚の修復剤と併用しながら、少しずつ美しく色気のあるすべすべとした腹部の姿が取り戻されていく。  そして、まるで自損前とほぼ変わらないような、ずっと触れていたくなるような腹部が取り戻されると、修復機側は作業完了と判断し、ケーブルを通して起動信号を送信した。 「…………起動命令を受信しました。登録名 須藤 優佳 起動します…………」  眼球ユニットの奥に光が点り、絞りが拡縮を繰り返し動作調整を行う。  唇が動き、焦点の合っていない瞳のまま、誰もいない方向へと感情のないシステムメッセージを喋り始めた。 「前回終了時、正常に終了されませんでした。破損ファイルのチェックを開始します………………」  ぐったりとしたポーズで股間が卑猥に濡れたまま、口と眼だけを動かす姿は、まるでゴミ捨て場に棄てられたセクサロイドのよう。  自分の行いで発生した追加の起動処理をシステムに従って行い、内部データの異常を確認していく。 「システムチェック中…………擬似人格を起動します…………」  そうして、ようやく諸々の動作が終了し、優佳としての人格が動き出すと、彼女の瞳に光が宿り、表情や所作に柔らかさが取り戻された。  ゆっくりと台の上で起き上がり、周囲を見渡す。 「……あれ、私さっき、自慰行為してて、それでイッちゃったから、それで……あ、それが最後の記録かぁ……」  彼女の視線の先には、床に溜まった愛液の水溜り。  そこから水跡が自分の座っている場所まで続いており、停止後運ばれたことを示していた。  優佳は、自分が今自動修復機の上にいることを認識し、自分が破き引き裂いたことをしっかり記憶している腹部の人工皮膚や、修理の間に殆ど乾いている女性器ユニットに指で触れた後、ようやく全てを把握した。  そして、一気に表情が花開いた。 「そっかぁ……私、本当にここで修復されたんだぁ……じゃあ、ちゃんと自動修復機は機能してるってことよね? あはは……やったわ! 最高じゃない! これでもう家で何度も快楽信号に浸れるわ! あはは! 買ってよかったあ!!」  もしもの場合を想定して、控えめに自分を壊して絶頂と共に機能停止させたが、まさかここまできちんと修復されるとは思ってもみなかった。  そこまで損害の無い破損であったが、それならそれでその範疇での修復を行ってくれるさじ加減。無駄に修理用のパーツや部品を使わず、この先の為に余裕を持って直してくれたのは、これから何度壊れてもパーツ補充の手間を減らしつつもっと破損やエラーによる快楽信号を楽しめることを示していた。 「これならもっと派手に壊れても良いってことよね! はぁぁ……買ってよかったぁ本当に……これからもよろしくね…………」  自分と同じ機械であるが、人の形をしていない自動修復機に対してとても高い好感度を示した優佳は、思わず頬擦りしながら機体を優しく撫でていた。  自分の理想を叶えてくれる機器が自宅にやってきて、その威力をその身で思い知った彼女は、ここでさらなる欲望が電子頭脳内の思考に浮上してきた。 「となると……これだけでももう私すごく大満足なんだけど、もう一人誰か欲しいかもしれないわね……私と一緒に絡み合ったり、壊れ合ってくれるアンドロイドを」  それは、所謂番いや同居人としての意味でも、新たな女性型アンドロイドが欲しいというものだった。  一人で壊れ続けるには限界があるが、誰かもう一体でもいれば、プレイのバリエーションは一気に広がってくる。  どれだけ自由に壊れても良いという安心が手に入った今、次に彼女が欲しくなったのは、気持ちよくなる行為のバリエーションだった。 「……けど、そんな相手そうそう居ないのよね……そもそもあんまり表で言えることでもないし」  だが、当然自壊や損壊による自慰行為や性行為を表立って言う者はそこまでいない。それが大好きな彼女自身も、日常の中では常に隠している。 『自分で自分を壊したいって、なんというか……メンテナンスセンターで一回フォーマットしてもらった方が良いんじゃないかって思うんですよね……ほら、だって……自分で自分を壊したいって、私には理解できないですし……優佳さんもそう思いません?』 『あーたまにニュースとか、SNSで流れてくるよねー、自分で壊して気持ちよくなってる奴。この前自分の電子頭脳壊してる子流れてきてさー、ちょっとこわって思ったよね。やっぱりウィルスとかにやられてるんじゃない? あたしもそういうのに感染したらと思うと怖いわー』  時折そのような話題が、彼女の同僚や友人の女性型との間で出てくることはあるが、誰もが否定的であり、中毒者のような扱いだった。  自分でもそう言われるだろうということは理解しているが、自分はそれに対して肯定派だということは言えるはずもなく、常に己の自損による快楽信号の衝動を秘め続け、己に嘘をついて否定的な意見に対して渋々ながらも同調するにしていた。                   だが、やはり自分の好き、欲望には逆らえない。それを調整されたくもないし擬似人格を弄られたくもない。弄るなら自分で弄っておかしくなって気持ちよくなりたい。優佳は少なくとも本音ではそう思考していた。    「……だからそういう相手って見つけられないのよね……」           それ故に、同好の士を見つけるのは至難の業。それもまた、彼女の悩みの種でもあった。  懐は自動修復機の購入代で枯渇した為、市販のアンドロイドを購入するという選択肢も今は無い。 「………………そうだ、いいこと思いついた。なら作っちゃえばいいんじゃない。新しく私の同棲相手を」  しかしここで、彼女は逆転の発想を導き出した。  市販の機体を購入しなくても、新たな機体を家に置く術は存在していた。  最初からそうすればよかったという認識もあるが、とにかく思いついたからにはやってみるしかない。上手く行けば、ほぼ無料で新しい同棲相手のアンドロイドを生み出せる。 「今日の夜は…………晴れてるわね。よし、早速夜に出かけることにするわ」  電子頭脳をネットワークに接続し、今日の一時間ごとの天気を確認し、行動可能かどうかを判断する。  記憶データから、自身の所有している車両のガソリンは補充されているかなどの準備を確認し、問題ないことを確認すると、タスク内に新たな項目を記入した。「廃棄場へと移動」と。 「お願いだから、私好みの機体があってほしいわ……けど、まだ夜まで時間あるし……ちょっと自慰行為でもしようかな……ん……あっ……あんっ……」  性生活がさらに充実することを期待し、優佳は夜になるまでの間の楽しみとして、自身の乳を下から持ち上げて乳首を咥え、自ら吸い付いて空っぽの乳内から噴き出す空気を吸い込みながら、その時を待つのであった。 * * *  そして、時刻は夜。外も静かになり、街灯やそれぞれの家屋やマンションから外付けの明かりばかりが照らされる頃。  優佳は自身が所有する車両を運転し、一人でタスクを達成するべく廃棄場に向かっていた。  車両の運転席にはハンドルがついているが、現在優佳は座席から伸びるケーブルを自身に接続し、電子頭脳から直接運転を行っている。 「あまり車通ってないし、今日は快適そうね」  車両は郊外を離れていき、少しずつ人の気配が消えていく場所へと移動している。  その調子を保ったまま移動し続け、やや寂しさすら感じるような風景がしばらく続いたところで、優佳は目的地である廃棄場へと到着した。 「何度か来たことはあるけど、今日ほど宝の山に見えたことはないわね」  その廃棄場は、いわばアンドロイドの墓場とも言える場所だった。  廃棄処分が決定された機体や、修復不能と判断された機体、所有者の身勝手により売るよりとりあえず棄てておこうと放置された機体など、多種多様な事情を抱えたアンドロイド達が、この場所で事切れている。  その有様はまるで死体の山で、美女や美少女の姿をした機械人形達が、大地に分解されることもなく、ほとんど画人工皮膚を被ったまま、亡者のごとく虚ろな目で視線の先の光景を無力に写していた。 「……私の未来を見てるようでなんか憂鬱になっちゃうけど、出来る限り長く稼働はしてたいなあ……さてと、どの子を持っていこうかな」  同じ機械人形であるが故に、思考にノイズが走ることはあるが、それでも自分はまだ動いている側だという認識は崩さず、己の擬似人格が求める欲望のままに、残骸の中へと足を踏み入れた。  多種多様な外見を持った、美女や美少女達がぐったりと無数にうなだれている。  屋根のない空の下で雨風に晒され、薄汚れながらも、その人間的美貌や可愛らしさはずっと被造物らしく保たれていた。  そんなよりどりみどりな中で、どれがいいか、どれがより好みかどうしても悩んでしまう。  暗闇の中で赤外線センサーを働かせ、優佳は物色し続けていく。 「よし、この三体がいいわね! これらを組み合わせて上手く動かせるといいんだけど」        そして、三体の機能停止した女性型アンドロイドに見当をつけ、それらを引っ張り出した。  廃棄場に棄てられているアンドロイドは、大抵どこかが壊れていたり劣化していたりと、何かしらの機能不全を起こしている為、そのまま単体で動かせるということはまずない。  そこで優佳は、それぞれの使えるパーツだけを外してキメラのように接続し、新しい機体を作り出そうとしていた。  仮に内部のソフトウェアが破損している場合は、新たにインストールし直して全く別の個体として動作させる。おそらく廃棄場に棄てられている以上、内部データが無事である個体は少ないと予測されるが、それでも正常に動作するものがあれば儲けものだと認識している。  優佳が選んだのは      ・ブラウンヘアーで全体的に褐色の人工皮膚で覆われた、スポーツ系で快活な雰囲気を感じさせる設定年齢20歳程の女性型。   ・額を晒した左右分けで黒いセミロングヘアーの、設定年齢20代後半な母性的でおっとりとした雰囲気を持つ美女的な顔立ちの、両乳房が正面に突き出した母親型と思われる女性型。   ・しっかりと切り揃えられた黒のセミロングヘアーの、清楚な雰囲気を感じさせる造形の顔立ちに、色白の人工皮膚に覆われた、設定年齢17歳程の空気を抱く、美少女系の女性型。  この三体を、彼女は無数の残骸の山の中から選びだした。  製造されたばかりだったら、もっと綺麗で絶世の美女や美少女とも言えるような姿をしていたのだろうが、三体ともそれぞれ別々の箇所を損傷、または破損しており、明らかに摩耗している。  余程使い込まれたのか、それとも事故にあったのか。電子頭脳内のデータを見ていない以上、まだ推測しか出来ないが、優佳はそんな彼女達のまだ状態の良いパーツを見て魅力的に感じていた。 「本当ならどれも正常に動作するなら私のもとで動かしてあげたいけど……ボロボロだものね。まだ使えるパーツで、私の同居人として動かしてあげるから……それで、私といっぱいセックスしましょ」  虚ろな表情でぴくりとも動かない機械人形達に話しかけながら、人間ならば辟易してしまう程の重量の残骸を運び出し、自前の車両まで動かしていく優佳。  車両に乗せる前に巨大なバッグの中へと、まるで死体を運搬するかのように収納し、しっかりジッパーを閉じて、外からそれがアンドロイドの残骸だとわからないようにする。  元々人間よりも重量のあるアンドロイドだが、それが三体も増えた分、車両にかかる重さもさらに大きくなる。 「とりあえず、余計なトラブルが起きなくてよかった……廃棄場って変なことが起きたりもするのよね……まあ、私が言えたことじゃないか。ああ……もっとお金あったら新しいアンドロイド買ってそれで相手してもらうとか出来たかもしれないのになぁ……でも、好みのデザインの機体を回収できたからいっか。まともに動かせるといいなあ」  首筋にケーブルを繋げ直し、車両を走らせて廃棄場から去っていく優佳。やや危ない行動ではあったが、快楽の共有相手を得るという目的を達成する為の足掛かりは成功した。  あとは、どれだけ彼女達の中に使えるパーツが残っているか。もしかしたらある程度そのまま使えるかもしれないし、殆ど使えずパーツの欠けが無数にある機体が出来上がるかもしれない。  優佳は、棄てられた機体の中からまだ状態が良さそうでかつ、特に容姿の好みを重視して廃棄機体を選んだ。その為、まだ内部や実際の部品の状態がどうなっているかはまだわからない。  とにかく、快楽信号を共有する相手を得たいという擬似人格の挙動が優先されており、早くそういうことをシたくて仕方がなかったのだった。  こうして、人間社会でまっとうに稼働するアンドロイドの、倒錯した欲望を探求する日々が、密かに始まったのであった。

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