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「何度観てもそうだけど、やっぱりどう見ても人間にしか見えないなあ。あたし達が街の中にいる時も、こういうのが紛れ込んでたりするんでしょう?」 「はい。アルゴビット製のアンドロイドは、様々な形で人間社会に紛れ込み、私達のような存在を排除、またはそれとは違う目的の為に稼働しています」  アルカイックスマイルのまま硬直し、マネキンのように倒れている偽装したアンドロイドの香織を見て美緒がつぶやく。  彼女自身もまた、宇宙から飛来した寄生生物が擬態した存在ではあるが、それはそれとして大量の同族の中に異物を紛れ込ませているというのは、人類をコントロール従っているのではと思ってしまうような状態でもあった。  だが、今の自分達には関係ない。この機体は美緒達にとっては危害を加えてくる存在であると同時に、同居人のスペアパーツや玩具となる存在でもある。今はそれ以上でもそれ以下でもない。 「……今はこれどうなってるの?」 「現在、阿部 香織は電源が起動されている状態にはなっていますが、私が意図的に機能をフリーズさせています。私の操作ですぐに通常動作の状態に復帰できますが、そうすると一度状況把握の為に擬似人格で一般人らしく振る舞いつつ動き出すでしょう。データを消去したわけではありませんので、私を視認した瞬間、確実に攻撃を仕掛けてきます」 「何回かそういうことあったもんね。なんで美緒も美咲も狙われてるんだっけ」 「私達が本来秘匿された存在だからです。私はまだ実験段階の存在で、美咲はスレイブドールという元は人間である人物を強制的に全身機械化させられた存在だからです。では、フリーズ状態を解除します」  それぞれの事情の原因を聞き、美緒はそういえばそうだったという顔をした横で、キリエは香織の電子頭脳内に忍ばせている自分の一部を操作し、一旦距離を取りつつ彼女のフリーズ状態を解除した。  すると、香織の表情が動き出し、一度冷淡な無表情を経てから、人間社会で動作する際の柔らかく自然な表情へと変化し戸惑いの顔を作った。 (──────────…………意図せぬ停止状態の解除を確認。視覚情報より、当機が認識していた最後の地点とは別の場所と判断。姿勢変更と同時に周辺確認…………外部端末及び、ネットワークとの無線接続機能が引き続き無効になっています)  今自分がどこにいるのかわからない以上、香織は自分が本来どのような存在なのかを他者に知られるわけにはいかない。  自身の擬似人格らしい振る舞いで、ゆっくりと眼球を動かして周囲を確認すると、まず最初に美緒の姿が入り込んだ。 (一般人の存在を確認。サーチの結果、アルゴビット製アンドロイドではなく人間と判断。擬似人格を用いた対応を開始)  香織は電子頭脳内での機械らしい冷静な演算結果とは裏腹に、戸惑いの表情を作りながら自然な動作で起き上がり、美緒の方を向く。 「(当機体のデータにはない室内構造です。一般人の邸宅と判断)あの……すみません、ここはどこでしょうか……? あなたが、私をここに運んでくれたんですか……?」 「…………あっ、そっか。そうなんです。道端に倒れてて、大変だと思って一回あたしの家の中に運んだんですよ」 「ありがとうございます…………(停止状態の目撃発言。停止理由の人間的理由を作成中……)ちょっと今日フラついちゃってて……視界がぐるってなっちゃってから、気がついたらここに……」 「いえいえ、気にしないでください」  だがここで、香織は疑問を抱く。  自分達のようなアンドロイドは、人間社会に紛れ込めるように多少は軽量化されているとはいえ、普通の人間よりも重く、目の前にいる女性の体型ではとても一人で運ぶことは考えられない。  であれば、協力者が存在するのではないかと思考を繋げ、香織はぐるっと部屋の中全体を見渡すように身体を動かした。  その時、彼女は目撃した。何の擬態も行わずに目の前に立っている排除対象の姿を。            (排除対象の存在を確認。タスク更新。対象の排除後、一般人の確保及びアルゴビットへ改造素体として移送へと変更。直ちに対象の排除を実行)  香織は立ち上がりながら前進し、右腕に仕込まれたブレードを展開しながら近づいていく。  そして、一切の迷いなく、先程までの明るい雰囲気が失われた冷たい表情で、キリエの顔を貫いた。  背後の壁まで刃の先端が突き刺さり、キリエの顔に細長い穴が空き、美しい顔が歪んだ。 「……指定した擬似人格が起動します…………やっぱり、私の対処方法自体はプログラムされてないんですね。おそらく、私よりもスレイブドールの確保または排除を優先した機体だからだと思いますけど」 (発音、発言の特徴から、当機体に登録されている擬似人格のコピーと判断。右腕部破損。信号が途絶しました。当機体のファイルが既に読み込まれている可能性大。機密保持の為、当機体の全ファイル削除を実こここここここ…………削除が停止されました)  鉄板がネジ曲がるような鈍い音が鳴り、キリエの顔が渦巻きのように円を描き始める。  それは、香織の腕をもろに巻き込み、腕が本来曲がってはいけない方向へと曲がりながら、べき、みし、と人間の骨ではならない様な音を立てて潰れ始めた。  香織は、電子頭脳内で自身に発生している状況を分析しており、本来なら悲鳴を上げて泣き叫んでもおかしくないような状況なのに、じっと無表情のまま瞬きもせずキリエから視線を反らさずにいる。  さらには、自身の擬似人格の振る舞いがそのまま目の前で行われたことを確認したことで、内部データにアクセスされた危険性を考慮。  これ以上排除対象にデータを提供するわけにはいかないと、既に手遅れた演算結果を導き出した香織は、これまでの人間社会で振る舞ってきた自分が消失する恐怖も無しに、自ら稼働から現在までの全データを消去しようとした。  しかし、それを先回りしたキリエは、捩じり潰した右腕から内部機構に侵入し、人工皮膚の下から電子頭脳に直接侵入。削除操作を強制的に停止させた。 (ファイルの削除不能。情報の破棄方法を演算中………………物理破壊が最適と判断。左腕部の武装を…………残弾がありません。後頭部カバーを開放し、直接電子頭脳を破kkkkkk)  香織はずっと、キリエから視線を反らさず能面のように冷徹な顔を保ち続けているが、電子頭脳内では機械的に非常に強い焦りを起こしていた。  完膚無きまでに、自身の全てが掌握され、自壊することすらもできない。  人間のような死にたくない、殺されたくないという思考は存在せず、現在の彼女の中にあるのは、自身の管理者であるアルゴビットにとって最もリスクの低い選択をすること。  データ削除が不可能ならば物理的破壊をと、香織は左腕に仕込まれている銃火器を展開し、頭を撃ち貫こうとする。  だが、とっくの昔に彼女の内部にある弾丸は取り出されており、キリエの体内に埋め込まれていた。  ならば直接殴って破壊しようとするが、そうなる前にキリエは制御システムを掌握。  潰れた右腕も、渦を巻いた顔から開放されるも、磔になったようにT字のポーズを取らされた。  ひしゃげた内部機構によってズタズタに裂けた右腕の人工皮膚の隙間から、キリエの液体金属の一部が繋がっており、体内へと糸のように伸びている。  「では、自身のパーソナリティ情報を自らの音声で開示してみてください。出来ますよね?」 「拒否します。当機体にそれを行う理由が、理由が、理由がががががが」  ここからは、一方的に香織が玩具にされるターン。それまでも実質的にそうだったが、本格的な遊び道具になる段階となる。  キリエは、借り物の擬似人格を用いて、普段ならば絶対にしないような、可愛らしさを含みながらも美しさがより際立つ笑顔と、どこか奥に冷徹さと圧を感じさせるような声色で、自己紹介をするように詰めた。  香織は当然拒絶するが、彼女の判断は関係ない。電子頭脳内に浸潤した液体金属からシステムを強制的に動かし、強引に喋らせる。 「と、当機体の、の機体めめ、名称、名称は阿部 香織。設定上のせ、生年月日は、はは、○○年 12月、がつ。がつ、3日、にににち。製造年月は、せいぞ、せいぞううう、月は○○○○年、○月○日。3ヶ月と14日前。現在は一人暮らしを、ををしていま、していま、ままます」  両目がそれぞれバラバラな方向をぐりんと剥き、落ち着く様子もなく監視カメラのように直線的に視線が動いている。  口は音声に合わせて動いてはいるが、ただ上下にぱくぱくと開いたり閉じたりを繰り返しているだけで、何十年も前の古びたアンドロイドのような稚拙な動作へと退行していた。  強引に情報を引き出され、それを喋らされているからか、それとも香織側がどうにか抵抗しているからか、ただ自分に施された設定と製造情報を喋るだけなのに酷く音声が支え、ギリギリ聞き取れるかどうかの音を出している。    「現在当機体は、当機体は、株式会社○○に、ssssょぞくしており、アルゴビット社ととと、繋がりをも、もつ、内部のの、のの構成員の、手によって採用が採用が採用が、ました」 「香織が人間社会で稼働する目的は何?」 「発言を拒否しま拒否しま拒否しししししししし………と当機体、の、の、のの稼働もも目的は、目的はは、は? 私は、アルゴビット社から、から、から流出しsssシta実験機体の確保ま、または、または、または破壊をもも目的としています。しているんです、していまぁぁぁぁぁぁァァァァ???」  香織が情報の開示を拒否する度、キリエは電子頭脳に負荷をかけながら強制的に彼女のシステムを操作する。  拒絶しているにも関わらず強引にデータをこじ開けられ、それを無理やり自分の口から発言させられる。  電子頭脳に多大な影響が生じるそれは、加速度的にデータを破損させ、挙動や音声を狂わせていった。  香織の首がかくん、と項垂れ、スーツの股間部分には、誤作動によって漏れ出した人工膣液がシミとなって生まれている。  カメレオンのような動きで両目が動き、もはや一般的な女性会社員の面影が見えない香織に、キリエはさらなる追い打ちをかけていく。 「もっと色々追い込んでみようかな。ねえ香織、香織は今まで確保した機体や、破壊した機体はあるの? それと、今からこの場で自慰行為をしてみて」 「わ、わかりマ、かしこまりり、りまし、情報のかか、開示を、開示をををを、当機体は当機体は、ゲげ、現在まままで、確保に成功したせ、イこウした、た、た、たた機体はありマ、ありません」  まだ稼働して間もないからか、たいした収穫もない分、彼女からしても開示は問題ないと判断したのか、相変わらず音飛びしたような音声ながら正直に開示する香織。  一方で、もはや自身の機体情報や内部情報以外であるならば問題ないと判断しているのか、香織は普通の人間ならば声を荒げて明確な拒否を示すであろう自慰行為の指示をおとなしく受け入れ、自らスーツを脱ごうとしていた。  彼女が身につけているスーツの腕部分は、先程の武器展開時に裂けてしまい、ボロボロになっているが、濡れた股間部分以外はまだ形を保っている。  命令に従って全裸姿になろうとするが、右腕から何度も空回りするような動作音を鳴らしてカタカタと震わせながら、元の綺麗でほっそりとした形に戻った左手でボタンを外そうとするも、電子頭脳にダメージが蓄積している上にシステムデータの一部がキリエの手で壊された為、簡単な指の動作ですら行えなくなってしまっていた。  もはやはつらつとして元気な人間女性の会社員を演じるようなことはできない。  このまま、人間的な挙動すらまともにできない様を眺めるのも面白いが、傍からじっと見ていた美緒が、まだ先のことを見たいと思い、ボタン外しを手伝ってあげた。 「あ────ありがと、とう、とうありがとうございま、ます。ありがとうございます」  キリエと平然と一緒にいて、協力関係であるかのような振る舞いをしているにも関わらず、復帰直後の一般人としての認識の時点から更新できていないのか、外向きの動作で震えながらお礼を口にし、丁寧に頭を下げる香織。  本来ならば礼儀正しいちゃんとした人間としての行動なのだろうが、状況に似つかわしくない行動をそのまま行っている姿は、むしろ非人間的で稚拙に思えた。  そうして、潰れて折れ曲がった金属骨格が、シワだらけで裂けた人工皮膚下から突き出している右腕以外は未だ正常な状態に見える裸体を曝け出す香織。  ゼロから製造されたアンドロイドなだけあって、見た目そのものは容姿端麗かつ魅力的な身体付きをしており、人間社会に混ざり込めば絶大な指示を得るであろう形をしている。  誤作動により溢れる愛液は、雫となって床にぽたぽたと落下していく。  そして、彼女はそんな液漏れをさらにエスカレートさせるように、命令通りに自ら左手を股間に持っていき、陰核を指で転がしつつ膣内を掻き回し始めた。  自慰を行う左手の動作は、一応自然の範疇には入っているが、指の挙動がややぎこちない。 「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」  香織の喘ぎ声は、かわいらしさがあり、その中に今自分は性的快感を覚えているというような雰囲気を宿している。  だが、電子頭脳の負荷によってバリエーションが作れなくなっているのか、それともそもそも喘ぎ声の種類が多く組まれていないのか、そのひとつのパターンをひたすらリピート再生しているようにしか聞こえない単調なものになっていた。  女性器ユニットを弄るごとに愛液の分泌が促進され、乳首も固くなっていくが、ぽかんと開いた口と、どこか遠くを眺める空っぽな視線は全く変わらない。  まるで、事務的にオナニーを行っているような、機械的な空虚さが、色気とは裏腹に存在していた。  それもそのはず。香織はあくまで外に漏れた危険分子を排除することが主目的の機体であり、性行為機能は一応実装こそされているがそこまで重要視はされていない。  その為、セックス関連の機能はひたすら単調で、大した能力は有していなかった。 「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」  なおも受信した命令を実行し続け、ずっと同じ動作で女性器ユニットを刺激し続ける香織。  アンドロイドや機械化した女性は、設定された性感帯から発生した快楽信号を処理して気持ちよくなるため、人間とは勝手が違う。故にこれも間違ってはいない。  だが、それだけでは物足りない。普段は無表情で感情のないキリエだが、美咲やミレイを通して快楽信号の心地よさやそれを受信する為の方法やバリエーションは知っている。  より彼女が淫らに乱れて壊れていく姿がみたい。擬似人格をコピーしたことにより、普段よりも人間的な思考に近づいたキリエは、普段の彼女なら絶対に作らないであろう企みを抱いた表情を見せ、正面から香織に抱きつき始めた。 「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」 「擬態と戦闘に赴きを置いてる機体って、こういうところあるもんね。セックス機能はあくまで最低限で、私達を排除することが目的だからさ。けど、そういう機体って意外と面白い挙動を起こしたりするんだよね」  平常時は擬似人格を搭載していないキリエが、無機質な言動の奥に秘めている本性を曝け出すような言葉をこぼしていく。  普段は発言の雰囲気や声のトーンは、同じく擬似人格の無いミレイと同じようにも見えるが、アンドロイドとしてはキリエの方が圧倒的に上。擬似人格で発露されない中身が、学習の蓄積によって形成されてもおかしくないのである。  やや加虐心の見えるキリエの発言に、美緒はまーた始まったというような、まるでいつも付き添う彼女のような慣れた態度を見せた。  そして、抱きついたキリエは、女性としての姿を一気に解き、右腕や口、耳やアナルなど、無数の穴から香織の内部へと侵入した。 「あっ、あっ、あっ、ぁぁあああアアアア■ああaaaああ???」  香織は、全身を液体金属に犯されながらもそれそのものには全くのノーリアクション。抵抗する気配もない。  しかしその一部が電子頭脳へと滑り込むと、電気信号に異常が発生し、単調な喘ぎ声がエフェクトをかけられたような音声へとネジ曲がった。 「美咲にも適用されてたプログラムだし、こっちにも適用できるよね。同じアルゴビット製なんだから」  キリエが彼女の電子頭脳に直接流し込んだプログラム。それは、スレイブドールである美咲に元々組み込まれていた、破損やプログラムの挙動によって生じるエラーを快楽信号に変換するというもの。  それを用いて、美咲は自らを壊して快感を得て、時折スレイブドールとして仕込まれた性欲の衝動を発散している。  そういう用途ではない香織には、当然そのようなものはインストールされていないし、対応もしていない。  そこでキリエは、強引にそれを彼女の電子頭脳に適用させ、どんな行動からでも性感を得られる状態にした。    適用自体は成功したが、正しく機能はしておらず、パフォーマンスの程度は美咲よりも著しく低い。  だがそれは逆に、快楽信号を生み出し負荷をかける要因となる。 「あああぁぁぁあァア? あっ、あッ、あっ、キもち、いい? いい。あっ、アっ、あ、■っ、アっ」  両目を見開きながら、直線的で折れそうな勢いで首を左右に振りつつ、喘ぎ声なのか電子音なのかわからないような、単調な嬌声を上げる香織。  本来存在していなかった気持ちいいというセリフは、電子頭脳に侵食したキリエが無理やり一文字ずつの発音を切り取り、快楽信号の処理に合わせて強引に言わせている。  彼女にとって圧倒的下位のユニットに対して、存在そのものを陵辱するようなプレイはエスカレートし始める。 「そろそろ気持ちよくなってきたかな。じゃあ、いっぱい気持ちよくしてあげますね。私達の遊び道具になってくれたお礼だよ」  大人の女性らしい容姿からは似合わない、適用したプログラム通りの喋りと声色で、煽りを加えながら香織という人形をさらに愛で始める。  両手人差し指を立てて、それを耳の中へと突き入れて奥まで深々と挿入する。  直後、人間的な形状だった人差し指は一気に一本細長い鉄の槍と化し、左右から電子頭脳を物理的に貫いた。  香織は両目を見開き、口を大きく開いて背中を仰け反らせ、激しい痙攣を起こし始めた。 「あ、あ、あ、ア、アアア、ご、ご一考くくくだサいいいい?? みなサんきょウもハやいですね! 私もがががんバらながんばラないトととととありがとありがトうございござイまわタsiっテまだマだででてでででddddすねェェェェェエェェェ???」  香織が一般的な人間女性として稼働していた時の発言が、意味をなさない誤作動による音声としてぐちゃぐちゃに再生される。  声が乱れ、ピッチも再生速度もめちゃくちゃ。電子頭脳や内部機構を侵され、無理やり操作されているにも関わらず、場違いな言葉を吐き出しながら、彼女は人間としてもアンドロイドとしても初めて得る度を超えた快楽信号に振り回された。  両脚をバタつかせながら人工愛液を噴き出し、力無く垂れ下がった両腕が、子供に遊ばれた振り子のように揺れ、指が暴れだす。  眼球は相変わらず左右バラバラに乱雑に動き、白目を剥いては正面を向き直したり、左目のみから人工涙液がだだ漏れになったりと、人間としての表情は明らかに壊れ始めていた。         「……なんか、出会った時よりもこういう加虐的なこと楽しむようになってないかな? キリエって。いつもは擬似人格入ってないからわかりにくかったけど」   「そうかな? もしかしたら、美咲を中心にみんなと暮らす中で、私の中にも変化が起きてるのかもしれないですね。ここからもっと、いっぱい弄ってあげますよ」  同居人の中では、同じく擬似人格が基本的に搭載されていないミレイと同じく淡々としているキリエだが、スペックが圧倒的に高い分、彼女の方が成長の余地がある。  それを示すような、液体金属としての性質を利用したサディスト的な面が、快楽信号の発生と処理を学習するにつれて学ぶようになっていたらしい。  まるで人形遊びをしているような、キリエの破壊行為は、お楽しみとしてさらにエスカレートしていく。  

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