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 現代からそう離れていない、少しだけ未来の時代。  未だ人間のように振る舞い動けるアンドロイドや、人間の身体を機械に置き換える技術が完全に確立されているわけではないからか、それらの存在はまだ一般社会に進出していなかった。  しかし、得てしてそういうものは水面下で少しずつ進められ、確固たる結果が得られた時、ようやく世間へと公表されるもの。  アンドロイドの存在もまた同様で、少しずつ人間のように動き、話し、表情を作ることができる機体の研究が進められており、傍から見れば非常にクオリティが高いという領域まで到達してはいたが、まだそれは世間一般に披露する段階まで至っていなかった。  様々なトラブルについてデータを蓄積しつつ、本物の人間と共同生活を行い、さらなる研究を進める必要があった。  これは、一人の男性のもとに提供された一軒家にて始められた、二体の試作タイプの女性型アンドロイドとの生活の記録、その一部である。 * * *  ある日の金曜日。とある島国の中にある地方都市の一つから離れるように、夜の道路を走るワンボックスカー。  その中では、一人の男性が、運転手を含めたスーツ姿の人物四名と共に、じっと精神的に肩身が狭そうな雰囲気で椅子に背中を預けていた。 「…………一体どこに連れて行かれるんですか」 「到着すればわかりますよ。ご心配なく。これから向かう先は、それ程悪い環境ではありませんから」  スーツ姿の人物とは違い、明らかに私服な軽装姿をしている男性の名前は加藤和人。地方都市のマンションに住んでいるなんでもない会社員である。       「いきなり連れてこられて、心配するなと言われても……」 「早々に移動する必要があったので説明が不足してしまい申し訳ありません。和人さんは今回、アンドロイドとの共同生活キャンペーンに当選しました」 「………………えっ、本当か!? それでなんですかこれって!?」  和人は、女性型アンドロイドという存在にとても興味があるタイプの人物で、マンガやアニメ、映画や各種SNS上のイラストや動画から多種多様な女性型アンドロイドの作品を嗜んでいた。  そんな彼は、現実のアンドロイドの情報を集めている時、人間のような疑似人格を搭載したアンドロイドとの共同生活を行うという、夢のような募集企画が開かれているのを発見。  それも、大規模なテック会社が公式サイトの一ページ内で行っているというのもあって、ジョークの類ではないことを確認しつつ、どうせ当たらないだろうと思いながらも欲望のままにそれを受けた。  そんな心持ちなのもあって彼自身もすっかり忘れていたが、会社から帰宅して部屋着に着替えた直後、現在彼の周囲にいるスーツ姿の人物達に、有無を言わさず連れて行かれた。  最初は得体のしれない恐怖から従うしかないと考えていたが、内容を聞いた瞬間にすべてがプラスに変わったのだった。 「なので、一旦その実験を行う住宅まで移動します。移動中にこれからの説明をいくつか行いますので、よく聞いてください」  黒服の一人が言っていた通り、早速この先の予定と内容が伝えられた。  まず、実験の為に用意された一軒家へと移動し、そこで一旦、家内の構造や家電設備などの扱いになれてもらう為に次の日まで一人で過ごしてもらう。   それから、実験に使用する二体の女性型アンドロイドが送られ、それを組み立てて起動し簡単な初期設定を行い。ようやく共同生活による実験がスタートする。  その間、彼が住む本来の住居の家賃は自動的に支払われ、希望があれば荷物も運んでくれる。  実験期間は現時点では無期限で、望めばずっとそのまま継続される。というものだった。   「あの……何か注意事項とかは……」 「こちらからの注意事項は、きちんと共同生活をしていただければ何も問題はありません。普通の生活を主軸にしていただければ、あとは何をしても構いませんが、画像や動画をSNS上にアップロードすることだけはやめてください。実験の内容を外部発信せず、アンドロイドとの日常生活をする。これだけです」 「……何か壊してしまったり、誤作動起こしちゃったりしたときは……」 「その場合は、こちらで回収し修理を行います。それらも参考資料となりますので、言ってしまえば内部データの改竄や設定変更を行っても構いませんし、意図的に壊しても構いません。あくまで、きちんと日常生活を送ってくだされば、という前提の上ですが」  彼はキャンペーンに申し込む際、テンションが上がり、かつ元々当たるわけがないという前提もあって、自身の性癖や趣味趣向をアピール欄に文字いっぱいに書き込んでいた。    まさかそれすらも許可されたのかとも考えたら、どうやらこの口ぶりでは、わかった上で受容されたらしい。  まさかそんなことが、と内心戸惑いもあるが、一通りの説明を聞き、彼はこれからのことに思いを馳せつつ、夜の道を移動していった。  しばらく車両に揺られるうちに、その一軒家にたどり着く。  周囲には確かに他の家は何もないが、かなり良いモデルの車両や庭、外から見てもわかる程に広く、その上二階建てという、今の自分では到底手の届かないような家がそこにはあった。 「では、明日の午前中には二体のアンドロイドが送られますので、そこから共同生活実験は開始されます。それまではこちらの、新しい自宅内の環境を確認しておいてください。失礼します。実験、頑張ってください」  黒服達は一斉に一礼をして、その場から去っていった。  改めて見てみると、遠くの方に建物の明かりがいくつか見える程度で、ご近所さんと言えそうな他の家屋は見当たらない。  自然豊かで高層の建物は無く、見る人が見れば後の人生をここで過ごしたいと言いそうな立地をしている。  だが、突然連れてこられて誰もいない状況では、どこか寂しさとちょっとした怖さが湧き出そうになっていた。 「………………とりあえず入ろう。というか、誰か一人くらい残ってくれてもいいんじゃ……」       元々一人暮らしではあっても、場所の保証はされていても、突然知らぬ地へ連れてこられたことへの寂しさは拭えない。  とりあえず言われた通りに、渡されたオートロックの鍵を使ってドアを開けて入ると、全体に漂う新築の香りと、今の自室からは想像もできない清潔さが一気に溢れ出した。 「うわ…………夢の家じゃんこれ……」  電気を点けて入っていくと、既に冷蔵庫やTVモニター、洗濯機などの家電もしっかり設置されており、それもどの家電も良いものばかり。  シャンプーやリンス、軽食類や飲料もある程度用意され、まるで他人の家に勝手に入ってきたような感覚が湧き上がってきた。  寝室のベッドも横に大きくふかふかで、一人で眠るにはもったいない程。  和人の自室として用意された部屋には、現在彼が使っているものよりも遥かにスペックの良いデスクトップPCやタブレット端末が置かれていた。  その中で、無数の工業用品や電子部品、ガジェットや電子機器に使用する周辺機器が整頓され置かれている部屋だけは、異質な雰囲気を醸し出していた。 「…………ずっと住みたいなここ。それでこの後アンドロイドも来るんだろ………………夢の国か?」  先程までのちょっとした不安は全て吹っ飛び、今や期待しか無くなった。  後は自宅から使っている機材やスーツ、本などの私物を送ってもらえれば全てが揃う。もはやもうここから動く理由もない。  和人は、テーマパークのような新居の中を歩き回り、これからの生活に備えて色んな家電や機材を操作し、言われた通りに慣れていった。  こうして、何の前触れも無く突然やってきた新生活の、突貫ながらも全ての準備が整ったのだった。 * * *  次の日の朝方。予想だにしていなかった新天地での生活一日目。  いつもよりグレードが高く丁寧さすら感じる、冷蔵庫内に保管されているサンドイッチと100%オレンジジュースによる朝食を終え、いつアンドロイドが来るのだろうかと期待して待機していた。 「そういえば、どんなのが来るのか聞いてなかったなぁ……抽選ページにも見た目は無かったし、女性型とは言ってたから間違いなく女だよな……あっちの機能もあるよなきっと」  理想と現実は違うことはわかっているが、セオリーで言うならばここで美女や美少女な機体がやってくるはず。  むしろそういう期待しかないし、それ目当てであるところがかなり大きい。  果たしてどうなるだろうかと、ソワソワしながら待っていたその時、新居で初めてのチャイムが鳴った。 「加藤さーん、お待たせしましたー」 「来た来た!」             テック会社側のスタッフであろう配達員の男性の声がリビングに伝わる。  まるでお年玉をくれる親戚がやってきたことを察した子どものようなテンションの上がりようで、和人は早速走り出した。 「おはようございます、加藤さん。こちらが、事前に伝えていた二体のアンドロイドが入った箱になります。この中に、それぞれ二体分のパーツが入っているので、加藤さんの手で接続して組み立ててください」  玄関の先に現れたのは、複数人のスタッフらしき男性と、その人達が抱えている巨大な箱だった。  玄関にギリギリ入れるサイズで、直方体の形状をしているそれは、仰向けになっている人間が入っているにしては明らかに縦の長さが足りていない。  和人も協力してそれを搬入させると、スタッフ達は一斉に頭を下げてからその場を去っていった。 「ついに来たか……ガチで重かったな」  運搬を少し手伝った時に感じた中身の重さ。期待が強く高まる。  和人は、それをリビングまで持っていくことを諦め、玄関の鍵を閉めつつここで中身を開けることにした。 「うわっ……! これが本物のアンドロイド……えっろ……!」        そこに入っていたのは、電子頭脳、頭部、上半身、腹部、下半身、両腕、両脚、女性器ユニットがそれぞれ、全身バラバラな状態で詰められた、二体分の女性型アンドロイドと、その二体分のスペースの間に納められた、一機の携帯端末だった。  その両機体の容姿はそれぞれ特徴が分かれていながらも、彼が想定していたものを大きく上回る美貌と女体を抱いていた。  片方は、ふわふわとした印象のある明るめなクリーム色のロングヘアーに、二十代中頃の雰囲気が漂う、大人びていて落ち着きのあるお姉さん的顔立ち。  分割されている上半身についている、程よくハリがあり下から支えたくなるほどに豊かな乳房は、箱の中でぺたんと潰れ、卑猥なピンク色をしている乳首と共に官能的な雰囲気を漂わせている。  色白な人工皮膚に包まれた身体は、腹部にはっきりとしたくびれがありつつも肉感的な下半身を持っており、ピンと張ったような形で納められている両腕と、スラッとしていて高身長であることが察せられる今にも動き出しそうな両脚も、艶めきすべすべとした人工皮膚が映える美しい形状をしていた。  もう片方の機体は、ボーイッシュな雰囲気が漂う、ほんのりと青を感じさせる黒のショートヘアーに、二十代前半の、可愛らしさと非常に整ったところを強く感じさせる顔立ち。  胸は一体目よりは少し控えめだがそれでも巨乳と言えるほどのボリュームがありつつ、正面に突き出ている程にハリがあり大きい。  人工皮膚の質感は、肉感的な一体目よりも健康的かつ鍛えられているように感じられる引き締まりを感じさせ、それは人間的な筋肉の線が見える腹部や腕、脚にも表れていた。  身長は、脚の長さから一体目よりも少し小さい程度だが、それでも女性としては高めの身長で、モデルとして申し分ないスタイルを抱いていた。  箱に詰められている二体の表情は、共通して目蓋が開いて虚ろな目を晒しており、ほんのわずかに唇が隙間を作っている脱力した無表情となっている。  そんなバラバラ死体のように見えても各パーツから漂う官能的な有様は、彼の情欲を強く刺激した。 「これを俺が組み立てて動かすんだよな……いざ目の前にしても実感が湧かないな」  画面や創作の向こうにしか存在していなかった女性型アンドロイドが目の前にいる。しかもそれを自分で接続するというあり得ない体験。  いてもたってもいられない気持ちが暴れだしそうになるが、まだなんとか自分を抑えて、一旦一緒に収まっていた携帯端末を取り出し起動させる。  その中には、二体のアンドロイドを操作する為の管理アプリや説明書、緊急連絡先や開発元へのメッセージ送信ツールなど、彼女達を動かす上で必要となる道具がしっかりと収録されていた。  不足なく細かいところまで用意してくれていることに感謝しながら、和人は早速、この場で彼女達の組み立てを開始した。  いてもたってもいられない。早くこの機械仕掛けの美女二人が目の前で動く姿が見たい。  携帯端末に入っている、今回の実験に際してのメモも無視して、どのように組み立てるかの説明を凝視しながら手を動かしていく。 「柔らか……これが人工皮膚なのか……エロいどころじゃないわこれは……」        その過程で、どうしても人工皮膚に直接触れることになる。  見た目はどう見ても血色の良い人肌であり、部分だけ見れば騙せそうな程だが、触れてみると冷たく、人間の温かさはない。  なのに、柔らかさはほんのりとゴムっぽさは感じながらも人肌と同等かそれ以上の心地よさがあり、いつまでも触っていたくなるような魅力すらあった。  一つ一つパーツを取り出す度に、揉みしだくように人工皮膚を握りつつ床に置き、仰向けになるようにパーツを並べていく。  特に、軽く動かすだけでも波打って揺れたり、握ればジェルでも扱っているかのように形を変える両乳房は、二体とも感触がとても良く、ずっと乳首を摘みながら揉みしだきたくなるほどだった。  少しだけ開いた唇や頬に触れ、眼球に触れても、どうみても人間なのに反射的に目を閉じたり避ける仕草もない。  精巧に人間らしく造られているのに、今はマネキンも同然の状態というのは、彼にとっても大きな興奮材料のひとつとなっていた。 「これって、ようはオナホ……というか女性器ユニットでいいんだよな……? オナホって言うにしてはすごくしっかり出来てるし……もしかして、この先他のアンドロイドにも実装すんのかな」  両機体の女性器ユニットをそれぞれ手に取ると、どちらも形状は同じで、外性器部分に貼られている人工皮膚の色のみが違うようだった。  見た目はまるで、とても精巧かつ特殊な機能のある電動オナホのようだが、市販品やそこらの高級オナホとは明らかに違う、人間の膣肉や子宮をきちんと再現した上で道具にしようという意志が伝わってくる、肉筒と形容できるような膣ユニットと、その奥の精液タンクである子宮ユニット。  乾いた割れ目を二本指で拡げて膣内を見ると。いやらしい凸凹がデザインされた肉欲だらけの空間がその奥に広がっていた。  これが、彼女達の股間に接続すればひとりでに動く。そう考えるだけでもロマンが止まらない。  そうして、死体を並べるように、床に彼女達のパーツを並べ終えると、早速説明書に従って二体の女性型アンドロイドを組み立て始めた。  胸部を中心に両腕を接続し、腹部、下半身を接続してから両脚を接続。  股間の穴に女性器ユニットを押し込んだ後、背中向きに頭部を接続し、正面を向いてカチッ、と音が鳴るまで回転させると、まずはお姉さんタイプの機体の身体が完成した。  同様に、活発タイプの機体も組み立て終えると、二体はまさしく人間女性の身体として組み上がった。  遠目に見ればどこにも機械らしい雰囲気は見当たらないが、間近で確認すると、それぞれの接続部に薄い継ぎ目が人工皮膚間に確認できる。  最後に、人工頭皮と頭髪によって隠された後頭部カバーを開き、空っぽの頭部内に電子頭脳を接続し、カバーを閉じた。 「よっし…………これで完成……だよな……? よし! これで完成!!」  そして、ついに二体の女性型アンドロイドが完成した。  分割された姿を見てから、今の五体満足の状態を見ると、とても先程までの箱にコンパクトに詰められていたとは思えない。  光の宿っていない意思なきモノの瞳で天井を見つめ、仰向けになっている女体の様は、見た目はどうみてもラブドールなのに、その造形の人間らしさから、認識がおかしくなりそうだった。  和人は早く彼女達が動いている姿が見たいと、まず、お姉さんタイプの首筋にあるカバーを開き、電源ボタンを長押しした。  すると、全身が一度大きく震えた後、ゆっくりと力が抜けるように腕や脚、頭部が床とくっついた。 「………………電源の入力が行われました。製造番号CT0000021 起動します…………」  お姉さんタイプの機体は、ネット上でよく聞くような電子音声とも違う、きちんと人間としての個性が感じられる、どこか色気がありゆったりとしていながらも大人びている芯の印象を受ける声でシステムメッセージを口にした。  だがそこに感情は無く、彼女に搭載された電子音声ファイルが、そういう風に感じさせるというだけである。  冷たい床の上で、天井に向かって喋るのを見て、和人は念願の光景を見られたような気がして心が噴き上がった。 「マジかマジかマジか…………! 本当にアンドロイドが動いた……!」 「現在、筐体名が登録されていません。起動するためには個別の筐体名が必要です。筐体名をアプリ、または口頭で決定してください」  そんな彼の気持ちなど意に介さず、お姉さんタイプは起動の為に、自身の名前の登録を求めた。  和人は、そういえば本物のアンドロイドが来るということばかりに頭が行って名前を考えていなかったと思い直した。  目を見開いたまま動かないお姉さんタイプを横に少しの間考え、これが良いという名前を考え、口頭で伝えた。 「じゃあ、お前の名前は理沙だ。苗字が加藤で、名前が理沙」 「かしこまりました。当機体の登録名は加藤 理沙でよろしいですか」 「それでいいよ」 「筐体名が登録されました」  お姉さんタイプは新たに、家族であることを示す苗字と共に理沙の名前が与えられた。  名前をつけることそのものはとても大切なことだが、理沙の内部システムは、ただの稼働の為に必要な処理として淡々と受け入れた。  すると、理沙は自らの足でゆっくりと立ち上がり、そのまま玄関の壁の方を向いた。 「続けて、所有者の登録を実行してください。登録の際には、当機体の瞳を5秒間見つめてください」    次に、誰からの命令に従うか、誰からの操作を受け付けるかを決定する為の登録のため、網膜情報や顔情報を読み取る為の行動を要求した。  待ってましたとばかりに、和人は自分も立ち上がり、じっと彼女の美しく整った人工の美貌を見つめた。  眼球ユニットの奥では、人間には存在しない構造の絞りが、繰り返し拡縮を行っている。 「…………登録が完了しました。続けて管理アプリから、所有者情報の登録を行ってください」  その後も、理沙側からの指示に従っていくつも操作を行い、彼女と共同生活を行う為の準備を整えていった。  一通りの登録が済んだところで、理沙は最後のメッセージを口にする。 「共同で稼働する機体の登録を行うため、視界範囲内に、稼働中の共同機体を立たせてください。これは、稼働テスト専用の登録手順となります」  本来は噛ませる予定ではなく、稼働後に必要な登録手順として組み込まれる予定となっている他機体の登録。  しかし今回は、二体と共同生活をするという長期テストになるため、必ず必要な手順として事前に組み込まれていた。  それを口にしたあと、次の処理を実行するまで理沙はじっとその場で動かなくなった。  豊かで柔らかそうな乳房を突き出しながら、呆然と無感情に立ち尽くす。 「てことは、こっちの登録作業もしとかなきゃいけないのか」  口ぶりからして必要なのは、もう一体の活発タイプの起動。  早く二体を動かしたいという性欲と興味二つの欲望に突き動かされ、すぐに電源を入れた。    「………………電源の入力が行われました。製造番号CT0000020 起動します…………」       容姿こそ違っても、彼女達の内部構造やシステムは同じもの。  理沙よりも少し明るくちょっと高めな声質の印象を覚える、活発タイプの音声で同じシステムメッセージが発されるのを聞くと、同じように登録作業を進めていった。  こちらの名前は加藤彩葉と名付け、これで両機体の呼び方も決められた。        「共同で稼働する機体の登録を行うため、視界範囲内に、稼働中の共同機体を立たせてください。これは、稼働テスト専用の登録手順となります」  立ち上がり、同じメッセージを喋ったところで、彩葉の身体を少しだけ引っ張り、理沙の前に来るように位置を整える。  お互いの視線がぶつかる位置に来ると、二体は同時に首を動かし、それぞれの眼球ユニットにピントを合わせた。 「稼働機体を確認しました。共同機体としての登録を行います」     「稼働機体を確認しました。共同機体としての登録を行います」  じっと見つめあい、まるで時が止まったように数秒間動かなくなる。  彼女達の見た目や声は人間と全く遜色が無いが、今の所行動に人間らしさは大きく欠けていた。 「…………登録が完了しました。各種ハードウェア接続確認、ファイルチェック実行中………………起動シークエンスが完了しました。擬似人格を起動します…………」   「…………登録が完了しました。各種ハードウェア接続確認、ファイルチェック実行中………………起動シークエンスが完了しました。擬似人格を起動します…………」    まるで両者だけの言語のやりとりをしているかのような雰囲気の中で、ようやく必要な手順が完了すると、一気に進んでいく。  現時点での内部データの状態や、各パーツの状態確認など、必要な自己診断を電子頭脳が行う。  そして、最後に擬似人格の起動を宣言してから数秒後、彼女達の表情が初めて、感情を持ったように柔らかくなり、同時に和人の方を向いた。 「初めまして、和人様。名付けていただいてありがとうございます。加藤 理沙です。今日からどうか、よろしくお願いしますね」 「初めまして和人様。あたしが加藤 彩葉だ。名前を向けてくれてありがとね。今日からよろしく!」  お淑やかで落ち着いた柔らかな微笑みと、積極的な印象を覚える距離の近い笑顔での自己紹介が向けられた。  先程までと同一人物とは思えないほどの変わりよう。まさしく、これがアンドロイドだと、人間的な性格や振る舞いを機械的に処理する姿だと。それが目の前で本当に実行されたことに、和人は感動すら覚えた。 「生きててよかった……こんな日が来るとは……! こちらこそよろしく! 理沙! 彩葉!」  和人は立ち尽くす二体の手に、ぎゅっ、と強く握手をしてから抱きしめた。  服越しながらも、彼女達の豊満な両胸の感触と人工皮膚の心地よい感触が伝わってくる。  しかし、彼女達の頭上にはまるでハテナが浮かび上がっているかのような、表情を見せた。越し 「和人様、これはどういう意味なの?」  「和人様、この行動はどういう意味なのかな?」 「…………え?」  予想外の返答に、和人から思わず間抜けな声が漏れ出た。  感謝の意味も込めて、彼は握手をして、愛情表現として抱きしめたはずだったが、彼女達はその意味を一切理解しておらず、なんでそんなことをしたのかもわからなかったのだった。           「えっと…………握手はなんというか、感謝とか親愛とか、喜びを示すための合図で、抱きしめるのはその……相手に愛情と好意を示すための行動というか」  衝動的にやった行動の説明を求められるという全く予想もしていなかった展開に、なんだかこっ恥ずかしさが喋っている間にも湧き上がってきた和人。  一通りの説明をすると、二体は同時にそれぞれの手を握り、左右から抱きついてきた。 「わかったわ、和人様。私も、同じように愛情を示しますね」 「和人様のこと大好きだからさ、あたしも同じようにさせてもらうよ」  心臓が飛び跳ねそうな行為に、彼の脳内のテンションは最高潮に達した。  しばらくその天国のようなハーレム展開に、じっとされるがままに身を任せ、彼女達が自ら離れるまで何もせずにいた。  一旦二体が離れた後、彼はひとつの大きな疑問を抱いた。  もしかして、彼女達は何も知らないし完全にまっさらな状態なのではないか。  握手や抱擁の意味を理解できておらず、何を示しているのかすらも一切思いつかないというのは、些か無知が過ぎる。  そう思って仮説を立て、彼は携帯端末から彼女達に関する情報が無いかと漁っていく。  すると、今回の実験に関するreadmeを発見した。 『この実験で使用されるアンドロイドには、稼働する上で最低限の基幹部分と擬似人格のみ組まれています。人格だけは人間のように振る舞えますが、機体そのものはほぼ人間の赤子と変わりありません。そこで、和人様自身の手で自由に扱い、教え、思うがままに使用してください。それらが全て、我々にとって必要なサンプルデータとなります』 「…………そんな気はしたけど、ガチだったのか」  マスターとして登録されている和人に向けて、ずっと微笑みを浮かべて見つめている二体。  見た目はきちんと人生経験を積んで生きてきた女性二人のようだが、その中身はまっさらで一切の記憶もデータも何もない、造られたばかりの存在。  まだ人格部分の振る舞いでしか人間らしさが見えていないが、本当に人間らしく稼働できるような存在なのか。彼の前提が大きく後退した。  そういう部分まで含めて、共同生活を行う実験。そう彼は理解した。と同時に、想定以上に苦労することになるかもしれないと考えた。 「じゃあ、こっちの反応はどうなんだろ」  そうなると、全裸姿の彼女達の状態で一番気になるのは、性器を弄った際にどのような反応をするのかどうか。  握手や抱擁の意味すらわからないのならば、乳首や乳房、女性器ユニットに触れた時の反応が想像できない。  少なくとも、個別に取り外せるくらいなら「そういう機能」は間違いなく実装されているはず。  和人は試しに、ずっと微笑みを絶やさず立ち尽くしている理沙と彩葉の女性器ユニットに指を置き、親指で陰核を弄りながら中指で膣内を刺激し始めた。  まだ冷たく、乾燥している分やや引っ掛かりを感じる膣肉の感触が、彼の指に伝わってきた。 「………………!」 「………………!」  その時、二体の身体がほぼ同時にびくんっ、と跳ねた。  陰核がぴくぴくと揺れ動き、明確に膣肉がうねり始めたが、彼女達の表情は、先程までと全く変わっていなかった。 「…………あれ?」  女性器ユニット単体の挙動は、間違いなく性感を覚えているような雰囲気なのに、理沙と彩葉も喘ぎ声ひとつ上げる様子がない。  ピンク色の乳首が徐々に勃ち上がり、じわじわと最初から補充されていた人工愛液が分泌されているところから、確実に感じてはいる。  だが、擬似人格側がそれに対する反応を持ち合わせていなかった。 「理沙、彩葉、二人とも気持ちよくないのか?」 「いいえ、気持ちいいですよ和人様?」 「ううん、気持ちいいよ和人様」  二体とも、確かに快楽信号は発信されており、電子頭脳内はそれの処理に追われている。  だが、彼女達の擬似人格は人間らしい反応やリアクションこそ可能ではあるが、快楽信号が発信、処理されたことに対してどのような振る舞いや反応をするのか、という内容が学習されていなかった。  その為、人間ならばその場でよがってあられもない嬌声をあげてしまうような快感でも「気持ちいい」という事象だけを認識して言葉にするだけしかできなかった。  一方で、システム側は、快楽信号が発生、処理された際にどんな挙動を起こすのか、というプログラムが組まれていることで、正しく性感に乱されるようなリアクションが実行できている。  人格と身体のちぐはぐな有様が、こうして矛盾した姿となって表れたのだった。 「…………本当に感じてるのか怪しくなってくるなぁ」 「大丈夫よ和人様、気持ちいいわ」 「大丈夫だよ和人様。今、とっても気持ちいいから」  女性器ユニットへの刺激を続けるうちに、人工愛液の分泌量が徐々に増え、太ももを液が伝っていく。  ひくひくと気持ちよさそうに膣壁や陰核が動いているが、二体の表情は相変わらずの微笑みを継続しており、嬌声一つ上げていないが、電子頭脳への負荷による意図せぬ動作なのか、理沙の唇と彩葉の目蓋が、小さく震えていた。  玄関で鳴るいやらしい水音。そういう系統のアダルト作品のような雰囲気が醸し出されるが、実際の光景はどこか異様さが宿っている。  身体の反応が残っている分実感は出るが、まるでボタンを押す作業でもしているかのよう。  二体が排出する人工愛液に手を濡らし、しばらく弄り続けていたその時、二体はほぼ同時に、背中がやや仰け反るような痙攣を起こした。  顔もそれに合わせて後方に動くが、彼女達の眼球ユニットは常に和人を捉えるように視線を動かし、白目を剥きそうな程に下へ動かした。  それに連動して、女性器ユニットから溢れる人工愛液の量が一気に増加し、一度スプレーのごとく愛液の霧が噴き出した。  非常にわかりにくく、情感も無いような光景だが、理沙も彩葉も、快楽信号の処理が性欲値の基準に達し、絶頂の反応を起こしたのだった。  首から下は震え、固くなった乳首の先からは、何かを放出しようとしているように空気がほんの少しだけ漏れている。  イったはずなのに、二体の表情は起動当初と変わらない微笑みを不気味なくらいに継続していた。 「二人共、今のはイったのか?」 「そうですよ。私は絶頂に達したんです」 「そうだよ和人様。あたしは今、イったんだよ」  それぞれの返答の言葉遣いに個性は見られるが、それ以外はまるで量産型。  平然とした表情で潮を噴き、愛液を垂らしている様は、普通の人間からは得られない扇情的な色気があるが、非現実的な状況が続いている今の彼には、それを落ち着いて受け止める余裕は無かった。  彼は頭の中で「もしかして、そういうところまで学習させないといけないのか」と、この先に待ち受ける苦労を自然と嫌でも予測していた。  彼女達の挙動は本当に最低限。一応セクサロイドとして使えなくはないが、今の状態では、ただの喋れるオナホ付きラブドールでしかない。  果たして本当にこの先やっていけるのだろうか。彼女達の淫靡な挙動に勃起はしつつも、脳が別の方向に働いている和人は、一旦二体にアルコールのしみ込んだウェットティッシュを渡した。 「まあ、これで股間でも拭いて」 「わかったわ、和人様」 「うん、和人様」  二体は言われた通りに拭き始めるが、愛液で濡れた箇所以外にも、股の間や恥丘など「股間」という概念に該当する箇所全体を無駄に拭いていた。  正確な指示と概念の学習もきっちりと行わなければならない。この先の気苦労が今からでも予測できるが、むしろそんな女性型アンドロイドこそ燃えるし興奮するというもの。  あまりにもまっさら過ぎたのは予想外だったが、自分がそう望んだのだから、徹底的にこの二体で楽しもう。そう思いつつ、股間に該当する箇所を拭き終え、その時の刺激でも快楽信号が発生している二体の方を向いた。 「まあとりあえず……理沙、彩葉、これからこの家でよろしくな」 「ええ、こちらこそよろしくお願いしますね、和人様」 「これからよろしくね和人様! あたしもお願いするよ!」  これからこの二体と共同生活を行う。彼女達のプログラムで制御された笑みが、彼の劣情を刺激する。  前提に狂わされながらも、あくまでこれは実験による同居。そういうこともあると言い聞かせながら、和人は二体の美女の形をした機械との華々しくも欲望にまみれた生活をスタートさせるのだった。 「……リビング行く前にちょっと待っててくれ。濡れた床拭いとくから……なんか転びそうで怖いし」  無知、無垢どころではない純粋な二体への扱いと挙動に気をつけながら。

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