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昼下がりのリビングは、窓からやわらかい光が差し込んでいた。 これでもかというほど磨き上げた床に、光がきらきらと反射して、部屋全体がやさしく輝いている。 テーブルの上には、豆まき用の炒り豆が入った、折り紙で手作りした入れ物が置かれている。 今日は節分。朝から夢ちゃんは準備で忙しく、キッチンとリビングを行ったり来たりしている。 叶ちゃんは、豆の入った入れ物を熱心に見つめていた。 「まま、これ、かわいい!おりがみにおまめさんはいってる!」 夢ちゃんは笑って答える。 「うふふ、折り紙で作ってみたよ。気に入ってくれた?」 「うん!かわいい〜!」 嬉しそうにはしゃぐ叶ちゃんに、『作ってよかった』と、笑みが深まる。 「叶ちゃん、今日は鬼退治、頑張っちゃおうか!えい、えい、おー!」 「えい、えい、おー!」 その瞬間、奥の部屋から人間さんの声がした。 「よーし、準備できたぞー!」 バタバタという足音と一緒に現れたのは、赤鬼のお面をかぶった人間さん。 「がおー!鬼だぞー!」 叶ちゃんは一瞬ぽかんとして固まり、次の瞬間、ぎゅっと夢ちゃんの後ろにしがみついた。 「……ままぁ……」 夢ちゃんはすぐに叶ちゃんを抱き寄せて、優しく背中をなでる。 「大丈夫だよ、叶ちゃん。あれ、パパだからね」 「鬼のお面つけてるだけだぞ〜」 鬼の面をめくった先に見知った、大好きなパパの顔を見つけた瞬間、叶ちゃんの強張っていた表情が一気にほどけた。 「ぱぱだー!」 人間さんは少しおどけて言う。 「そうだよ、パパ鬼だぞー!豆を投げないとくすぐっちゃうぞ〜!」 「きゃあ〜!みゃははは!みゃはっ!」 こちょこちょの刑に処されてしまった叶ちゃんの可愛い笑い声がリビング中に広がる。 ちいさくてふわふわの、愛しい叶ちゃんが笑う姿に鬼のはずの人間さんの顔は、お面の下でだらしないほどに緩んでしまう。 「叶ちゃん、がんばってー!豆をぶつけて鬼さんをやっつけちゃおう!」 夢ちゃんの応援に、叶ちゃんの目がきらりと光る。 「おにはーそとー!ふくはーうちー!」 ぺちぺちっ、と豆が人間さんの腕や顔に当たる。 「うわー!やーらーれーたー!」 人間さんは大げさに倒れ込む。 叶ちゃんはびっくりしたあと、ぱっと笑顔になった。 「やっつけた……?かなうちゃん、おにさんやっつけちゃった?」 夢ちゃんも笑いながら言う。 「すごーい!叶ちゃん!鬼さんやっつけちゃったね!」 「ままー!かなう、かっこよかったー?!」 「かっこよかったよー!プニキュアみたいだった!」 それからはもう大盛り上がりだった。 人間さんは部屋中を走り回って「がおー!」と鬼役を演じ、叶ちゃんは豆を持って追いかける。夢ちゃんは転ばないように見守りながら、踏んでしまわないように散らばる豆を綺麗に回収していく。 豆まきが終わる頃には、三人とも少し息が上がっていた。 「つ、つかれた……」 人間さんが床に座り込むと、叶ちゃんも隣にぺたんと座る。 「かなうも……つかれた……」 ハァハァと息を乱し、やり切った感満載な二人を見て、夢ちゃんは微笑む。 「いっぱい遊んだもんね〜。じゃあ、お昼ごはんにしよっか」 「お!待ってました」 「やったー!」 キッチンに並ぶ恵方巻き。 具材がぎゅっと詰まった太巻きと、叶ちゃん用の小さな恵方巻き。 人間さんが方角を確認して言う。 「今年はこっち向きだね」 夢ちゃんは叶ちゃんに恵方巻きを渡す。 「叶ちゃん、こぼさないようにゆっくり食べようね」 「いいかい、叶ちゃん。食べ終わるまではしゃべらないように頑張るんだぞ」 「うん、かなう、がんばる」 三人で並んで座り、同じ方向を向いて食べ始める。 叶ちゃんは途中で我慢できずに言う。 「まま、おいしい!」 あ!しゃべっちゃった!と、慌てて口を塞ぎながらしゅん、としてしまった叶ちゃんに、夢ちゃんは笑って答える。 「大丈夫、パパとママしか聞いてないからセーフ!」 「いっぱい遊んだあとに夢ちゃんの美味しいごはん食べたら、そりゃ声も出ちゃうもんな」 人間さんも優しく言う。 「今日は楽しかったな〜。こういう行事を一緒にできるの、嬉しいよ」 夢ちゃんは少し照れたように微笑む。 「ぼくもです。家族で過ごす時間が、一番大切で、とっても幸せですから」 食後、満腹になった叶ちゃんは夢ちゃんの膝にもたれて、うとうとし始める。 「まま……ねむい……」 夢ちゃんはそっと抱き寄せる。 「いっぱい遊んだもんね。少し休もっか」 人間さんはその様子を見て、穏やかに笑う。 昼の光に包まれた部屋の中で、鬼も豆も、恵方巻きも、すべてが“楽しい思い出”として重なっていく。 それは、叶ちゃんにとっても、夢ちゃんにとっても、人間さんにとっても、やさしくてあたたかい、心に残る一日だった。

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